「うわぁ…。電話鳴ってるよ…。」
夜の静かなフロントデスクに電話が鳴り響く。
ここは、オーストラリアのハミルトン島。私は、リーフビューホテルのフロントでジャパニーズゲストサービスの仕事をしていた。
名前の通り、普段は主に日本人のお客様のお世話が担当。しかし、フロントスタッフでもあるので、フロントが忙しい時にはやはり手伝わなくてはいけない。
この島には、私の働くホテル以外にもいくつか違うタイプのホテルや宿泊施設がある。そこは、夜の時間帯になるとスタッフがいなくなるため、他のホテルからの電話もこのホテルに転送される。
電話の表示を見ると、別のバンガロータイプの宿泊施設からだった。
「わ~、バンガローの事はよく分かんないし取りたくないなぁ…。誰か出てくれないかなぁ…。」
夜の9時を過ぎると、このホテルでもフロントはナイトスタッフ1人のみになる。ジャパニーズゲストサービス課だけ10時までのシフトだがそれも私一人。
そして、そのナイトスタッフは別の電話に出ている。横目で彼が電話を終えないか見てみたが、終わる様子もない。鳴り続ける電話に彼の方も「取ってよ!」という顔でこっちを見ている。
「仕方ない…。でるか…。」
ホテルで働く者として全く良い心構えではないが、英語での電話、ましてや予想のつかない事を言われる部屋からの電話は苦手だった。
不安と恐怖とイヤな気持ちが入り混じった中で受話器を取る。
“Good evening. Reef View reception. Maki speaking. How can I help you?”
<やっちまった!>
“Hi”と明るい女性の声。
「遅くにごめんなさいね。バンガローの〇〇号室に泊っている者だけど。」とここまでは良かった。
が、肝心の要件が聞き取れなかった。
「え?何の事?」部屋の中での問題らしかったが、想像力を駆使しても何を言っているか分からなかった。
そして一度聞き返してみたが、まだ分からない。
「何の事言ってるかはっきり分かんないけど…。何度も聞き返すのも失礼だし…。」
とりあえず、お客様には「スタッフをそちらへ行かせます」と伝えて電話をきった。
再度、お客様の言っていた事を思い出し「電球がきれてる?て言ったのかなぁ?」と解釈。「違うかもしれないなぁ…。」と不安ながら、係のスタッフに連絡して行ってもらった。
「大丈夫だったかなぁ…。あってたのかなぁ…。」フロントに立っていても不安と心配でソワソワする。
不安は的中!
先ほどお願いしたスタッフが帰ってきた。そして、
「さっきのお客様、ほんとに電球がきれてるって言ってた?全然違う事言ってたよ」
あ~!やっちまった!
やっぱり違ったのだ(;^ω^) 思わず顔が赤面。
頼んだスタッフは、部署は違うがよく話をしていた人だった。
私:「ごめん。実はよく聞き取れなかったんだよね。大丈夫だった?」
スタッフ:「あ~、そうだったんだ。最終的には問題なかったから大丈夫だよ」
私:「ごめんね。ありがとう」
頼んだ相手が彼で本当に助かった。知らない人だったら険悪な雰囲気になっていたかもしれない…。
<英語はRPG>
前々回のロンドンのバーガーキングで初めてオーダーした時の事、前回のイギリスでの美容室失敗談、そして今回のオーストラリアでの聞き間違いミス…。
英語にまつわるこのような失敗談や苦い思い出は数知れず。
恥ずかしい思い、悔しい思い、落ち込んだり、緊張で声が震えるような事や冷や汗をかく事。
色んな事があって今の自分があるんだなと思う。
どの体験が欠けても今の自分はなかっただろうし、そしてこれからも、英語を使っていれば体験する事だろう。
第二言語として英語を学んだ人達はみんな、きっと私と同じような思いをたくさんしてきていると思う。最初からスラスラ話せた訳じゃない。
英語を話すようになりたい、英語で会話を楽しみたい。でも、通じなかったら恥ずかしい。だから話せるようになったら海外に行く、外国人に英語で話しかけてみる。という人がいる。
でもきっとその人の「その時」は、いつまでたってもやって来ないんじゃないかと思う。
だって、自分で「私の英語完璧!ペラペラ!」って思える時はなかなかやって来ない。少なくとも私はいまだ感じた事がない。
だけど、海外旅行もできたし、海外でも働けたし、世界各国の色んな人とも英語で話ができた。だから、自分の英語でもO.K.だと思っている。
「自分の英語でもO.K.♪」と思えるのはやっぱり、一つ一つの経験の積み重ね。
冷や汗かいたけど「英語でハンバーガー注文できた!」、髪形失敗したけど「海外の美容室で髪切ってもらえた!」、聞き間違いする時もあったけど「海外で働けた!」…。
色んな思いや失敗をしながら英語を使った事で、経験値が増えていく。そしてまた次の新たな事にチャレンジができるようになる。
そうやって積み重なった経験が、いつしか「私の英語でもO.K.♪」と思えるようになるんだと思う。
そう思うと、英語を使っていく事はロールプレイングゲームみたいなものかもしれない。
モンスターや敵を倒すように、「海外で英語を使ってハンバーガーを注文する!」というミッションを達成すると、経験値を手に入れる事ができる。
そうやって、時には失敗しながらもどんどんミッション(敵)をクリアしていくと、経験値がたまってレベルアップできる。
レベルアップすると、自分の能力値=話す力やスピードもアップしていく。そうしたら、また少し難しいレベルのミッションへと挑戦できるようになる…。
そう!英語はRPG!英語はゲーム!
ゲームも自分で動き出さないとゲームは始まらない。英語も自分で使っていかないと何も始まらない。
だから、やってみよう!まずは、敵となる英語ミッションを自分で設定。ちょっと勇気をだしたらできそうな事ややってみたかった事にする。
あとは、勇者になったつもりで、勇気を出して英語ミッションに挑んでみよう!
ゲームだから失敗しても大丈夫。何回でもリセットして挑戦できる!
ゲームと思えば、英語攻略も面白い!!
中学生時代から英語を話せるようになる事に憧れ、外国語短大へ進学。その後イギリスへ留学するも英語が話せず落ちこぼれの生徒に。英会話のトレーニング(カランメソッド)を受け英会話が上達。帰国後、夢だったツアーコンダクターになる。渡航国約35カ国 年間200日以上を海外で過ごす。その後オーストラリアにワーキングホリデーで渡り、オーストラリアにあるハミルトン島のリゾート会社に就職。その後日本に帰国し、京都のホテルやゲストハウスなどでの経験を経て、地元宮崎にUターン。現在は地元宮崎で、英会話教室及び、単位制、通信制の高校で英会話を教えている。
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