以前お送りした「Stand up!は失礼な表現?」、読んで頂けましたか?
日本人が無意識のうちに使っている表現が,時には失礼な表現になる。ということでしたが、その中でpleaseについて,詳しく説明する予告をしました。
そこで今回は,pleaseの正しい使い方を整理しようと思います。
なぜ今回Pleaseの話をするのかというと、pleaseをつけると,すべてが丁寧になると思っている方が多いから。
実は,英語的には,pleaseをつければ丁寧な表現になるというのは間違いなんです。
<Sit down, pleaseは非常に失礼な表現>
中学校の英語の授業を思い出してみてください。英語の教諭からあいさつの後,
”Sit down, please!”
「着席してください」
と言われたことはありませんか?
実はこの”Sit down, please!”ですが、日常生活で使ったら,外国人には「え?」となる表現です。
”Sit down, please!”は、「座れ! どうぞ」という感じ。上から目線で,命令調で言われています。教諭が生徒に向かって命令する、まさに教室だけで通じる英語です。
そのため、日常生活で使うと、外国人には「え?」となる表現ということなんです。
”Sit down, please!”の表現でもう一つ、気を付けておきたいことがあります。それは、sit down! の後に続くpleaseは、果たして本当に「どうぞ」って意味なのかということ。
please は,もともと‟If it please you“の略なのです。意味は,「もしあなたが私の言うことを受け入れてくれるならば」,「私の言うことをあなたが喜んでしてくれるならば」という意味。
「座れ!」という命令の後に,私の命令したことを「快く」受け入れなさいと付け加えているのです。そう考えると随分と失礼で傲慢な言い方だと思いませんか?
「pleaseをつけたら,丁寧な表現になる!」ではなく,逆に,「喜んで命令に従え!」と要求している超高飛車な言い方です。
こういったpleaseの表現を日常会話で使っていたら,大変です。Pleaseを文の最後につけることによって,意味合いが違ってくるのです。これが一つのポイントです。
<お願いするときのplease表現!>
Pleaseの表現で非常によく使う「相手にお願いする」表現をまとめておきましょう。
Pleaseは,前述したように,「私の言うことを聞いてくれると嬉しいです」という意味でした。
そこで使う表現の公式は,「please+命令文」でpleaseの位置に注目。先ほどの表現と違い,文の前についています。
これがポイントです。つまり,「私の言うことを聞いていただけますか」と最初にお願いする形です。アメリカ人は,言葉の順番を問題にします。大事なことは最初に言う!が原則。
これならば,「優しいお願いモード」の表現になります。
(1) Please, help me!「助けてください」
(2) Please, open the window! 「窓を開けてください」
(3) Please ,listen to me! 「私の言うことを聞いてください」
(4) Please, text me! 「あとで連絡ください」
(5) Please, go home!「帰宅してください」
相手に何かをしてもらいたいときに,命令文を使うだけでは,「助けろ!窓を開けろ!聞け!連絡せよ!帰宅しろ!」と非常に強い命令口調になりますが,文頭にPleaseをつけることによって,お願いモードにすることができます。
非常に便利なPleaseのお願い公式です。整理して頭に入れておきましょう。ただ,これもけっして丁寧な表現とは言えないことも記憶してください。
<丁寧な表現でお願いをする公式:「依頼文+please」>
お願いをするときの公式は,「Please +命令文」でした。
丁寧な表現でお願いをするときの公式は,「依頼文+please」です。
依頼文とは,Could you~?「~して,くださいますか」の文の形を言います。例をあげると,
Could you open the window,please?
「窓を開けてくださいませんか」
という形です。
ここで一度,依頼する英文を丁寧さの順で紹介します。
比較するために,命令形を原型とします。
“Open the window!”
「窓を開けろ!」
丁寧な表現は次のようになります。(一例です)
(1) Please, open the window! 「窓を開けてください」公式「Please+命令文」
(2) Can you open the window,please? 「窓を開けてくれますか」
(3) Could you please open the window? 「窓をあけてくださいませんか」
(4) Do you mind opening the window? 「窓を開けても差し支えないでしょうか」
このように、丁寧さを表す英語の表現を知っておくことで、「ただPleaseをつければ丁寧になる!」という勘違いをしなくて済みます。
<Yes, please!「ハイ,お願いします」>
日本人があまり使わないpleaseの表現を紹介します。相手からオファーがあった場合に,快くかつ丁寧に受け入れる返事をするときに使う表現です。
レストランでウエイターから,次のように言われた時に使うことが出来ます。
ウエイター:Would you like to another beer? 「ビールのお変わりはいかがでしょうか」
あなた: Yes, please!「ハイ!お願いします」
このように使うことで、マナーを心得ている客だと思われること間違いなしです。このように、細かい表現を使いこなすことが,英語ペラペラの第一歩です。
<Oh!pleaseで「やめてくださいよ」という表現>
Pleaseで最後の表現方法は,「いい加減にしてくれ!勘弁してくれ!」という表現です。今までのpleaseとは,全く反対の意味で使います。
pleaseにOh!をつけて,”Oh,please”「いい加減にしてくれよ!」とあきれた表現になります。これ以上煩わせないでくれという感じです。
相手のしたことが,あまりにふざけたこととか,信じられないような発言をした人に対して,「馬鹿なことは言わないで」,「やめてくださいよ」と相手をいさめるような感じで使う表現です。あきれた表情やジェスチャーを伴い,「プリ~~~ズ!」と長く発音すると良いですね。
さて,pleaseをつければ,丁寧な表現にならないことを,pleaseには色々な表現があることを,公式と例文を挙げて説明しました。
pleaseを使い分けていくことで,表現が豊かになるだけでなく,自分の気持ちをしっかりと伝えることが出来るようになります。
そこから新しいコミュニケーションが生まれ,英語の面白さも実感できます。是非,お試しください。
執筆家・英語教育・生涯教育実践者
大学から防衛庁・自衛隊に入隊。10年間のサバイバル訓練から人間の生について考え、平和的な生き方を模索し離職を決断する。時を同じくして米国国費留学候補者に選考され、留学を決意。米国陸軍大学機関留学後、平和を構築するのは、戦いを挑むことではなく、平和を希求することから始まると考えなおす。多くの人との交流から、「学習することによって人は成長し、新たなことにチャレンジする機会を与えられること」を実感する。
「人生に失敗はなく、すべてのことには意味があり導かれていく」を信念として、執筆活動を継続している。防衛省関連紙の英会話連載は、1994年1月から掲載を開始し、タモリのトリビアの泉に取り上げられ話題となる。月刊誌には英会話及び米軍情報を掲載し、今年で35年になる。学びによる成長を信念として、生涯学習を実践し、在隊中に放送大学大学院入学し、「防衛省・自衛隊の援護支援態勢についてー米・英・独・仏・韓国陸軍との比較―」で修士号を取得、優秀論文として認められ、それが縁で定年退官後、大規模大学本部キャリアセンターに再就職する。
修士論文で提案した教育の多様化と個人の尊重との考えから、選抜された学生に対してのキャリア教育、アカデミック・アドバイジングを通じて、キャリアセンターに新機軸の支援態勢を作り上げ、国家公務員総合職・地方上級職、公立学校教員合格率を引き上げ高く評価される。特に学生の個性を尊重した親身のアドバイスには、学部からの要求が高く、就職セミナーの講師、英語指導力を活かした公務員志望者TOEIC セミナーなどの講師を務めるなど、大学職員の域にとどまらぬ行動力と企画力で学生支援と教員と職員の協働に新たな方向性をしめした。
生涯教育の実践者として、2020年3月まで東京大学大学院教育研究科大学経営・政策コース博士課程後期に通学し、最年長学生として就学した。博士論文「米軍大学における高等教育制度について」(仮題)を鋭意執筆中である。
ワインをこよなく愛し、コレクターでもある。無農薬・有機栽培・天日干し玄米を中心に、アワ、ヒエ、キビ、黒米、ハト麦、そばを配合した玄米食を中心にした健康管理により、痛風及び高脂質血症を克服し、さらに米軍式のフィットネストレーニング(米陸軍のフィットネストレーナの有資格者)で筋力と体形を維持している。趣味はクラッシック音楽及びバレエ鑑賞。
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