2006年7月、日米首脳会談を終えた小泉首相(当時)とブッシュ米大統領は、エルビス・プレスリーの話で盛り上がっていた。
米国のテネシー州メンフィスにある人気歌手、エルビス・プレスリーの邸宅を小泉首相とブッシュ大統領が訪れ、小泉首相は「夢が実現した!」と発言したのだ。
その直後、小泉首相が王レスリーの遺品であるサングラスをかけ、プレスリーの曲を数曲歌った。
米国のNew York Times紙は、次のように伝えている。
“Loooovve mee tenderrrr”, Mr.Koizumi crooned , as Priscilla Presley, Elvis’s former wife, and Lisa Marie, his daughter, looked on.
(小泉首相は、エルビスの先妻のプリシラ・プレスリーと彼の娘であるリサ・マリーを見つめながら、「らああぶみいてんだ~」と口ずさんだ。)
Swatchが、当時NHKのニュースで見たときは、「ブッ!」と噴出したものだ。
<度肝抜く首相のパフォーマス>
アメリカ人にとって、エルビスは過去最高のスーパースター。アメリカの誇りだ。
未だに全世界にエルビスのファンはいる。
その中の一人が小泉首相であった。なんと「私の好きなエルヴィス」 小泉純一郎選曲。エルヴィス チャリティアルバムが発売されている。
ニューヨークタイムズの記事は、「プレスリーの真似をして、派手なジェスチャー、エアーでギターを弾きながら歌う」首相を、“impersonator”と表現している。
“impersonator?”って何?わかりやすく言えば、「物まね芸人」です。
これには2つの意味があるかもしれません。一つは、プレスリーの物まねが非常にうまかったこと。
もう一つは、プレスリーの遺品のサングラスをかけ、大ファンとしてプレスリーになり切ったこと。
いずれにせよ、アメリカの記者には、「メディアの期待に応える素晴らしいパフォーマー」と映ったことは間違いありません。瞬く間に全世界にに発信され話題となりました。
さて、今回はアメリカの文化の話をする予定です。いきなり小泉首相の度肝を抜くパフォーマンスの話をして、それがアメリカ文化ですか、という疑問がわきそうです。
まず、物まね芸人という感覚ですが、日本人は割と器用で、芸人の真似をして周りの笑いを取ることもありますが、アメリカ人はそういった真似はしません。
歌を歌うときも、自分なりにアレンジして歌います。それが上手であっても、下手であっても、個性と評価されます。
それがアメリカ文化の一つの基準になっています。あくまでも、個性の発露が大切です。さらに、下手であっても、個性と基準で評価するので、それはプラス思考で好評価となるのです。
「今から、私は最高のパフォーマンスをします。皆、聞いてください」といった自己アピールをします。周りのひとは、「すごいな。最高のパフォーマンスを期待してるぜ!」と答えます。
こうやって、他人の個性を認め、さらに、応援をして場を盛り上げるのです。本人もやるとなれば、テンションが上がる、思い切りパフォーマンスすることができるということです。
それをアメリカ大統領の見ている前で、プレスリーになり切った小泉首相のパフォーマンス、素晴らしいですね。そしてその前には多数のカメラがあったのです。
<誰もやったことのないことへのRESPECT>
アメリカ人は、とにかく個性を大切にします。「大切にする」をアメリカ人の使う英語にすると、それは“RESPECT”「尊敬する」ことです。
具体的に説明すると、他人と違う方法である。やり方が違う。その人なりの工夫がある。(それが正しいか、効率的であるかは問題ではありません)目の付け所が違うなどです。
基準となるのは、その人が独自に考えて実行していることは、リスペクトの対象になります。皆と一緒でないからダメ!だという考えは全くありません。
規則には盲目的に従う、皆と同じにする、変わったことをしない、リーダには従順で口答えをしないなど、国の定めた決まりに従うのが日本人の特性です。
アメリカ人は、特に、誰もやったことのないことにはリスペクトします。個人を大切にし、個性を尊重する文化、それがアメリカ人の守るべき文化となっています。
誰もやったことのないことを達成した人をほめたたえ、記憶に残します。前述した、小泉首相のパフォーマンスは、全米に放送され、それを見たアメリカ人はびっくりしたことでしょう。
プレスリーの邸宅に、自分たちの大統領と一緒に行き、遺品のサングラスをかけ、プレスリーの曲をギターのエアー演奏で、腰をくねらせながら歌うというパフォーマンス。前代未聞です。
誰もやったことのないパフォーマンスを、多数のカメラの前でやってのけた日本の首相。多くのアメリカ人が「KOIZUMI」の名前を記憶にとどめ、また彼の日本人なら度肝を抜くパフォーマンスを、彼一流の政治パフォーマンスとして記憶に長くとどめるのだと思います。
<アメリカ文化の特色で友達作り>
Swatchが、そんなアメリカの文化の特色を利用して友達つくりをした経験をお話しましょう。
Swatchは、沖縄にある米国海兵隊司令部(キャンプ・フォートニー)に4年間勤務しました。初代の連絡chiefとして、自衛隊と海兵隊の交流行事を活発化させること任務としていました。
初代であったので、前任者の実績もありませんでした。また、沖縄に所在する多数のキャンプへ訪問しなくてはならず、知名度がなく任務を説明しても理解してもらえませんでした。
着任して、3か月がたったころ、海兵隊創立記念祝賀晩さん会に招待を受けました。良く調べてみると、沖縄に所在する部隊の多くが日にちを異にし、晩さん会を主催することが分かりました。
早速、所属する海兵隊司令部のネットワークを利用し、各部隊に晩さん会の招待をお願いしました。6つの部隊の司令官から招待をいただき出席することになりました。
自衛隊からの出席は私一人、事前に行事の概要を学習し、最後にあるダンシングタイムも念入りに準備をしました。言ってみれば、デスコのステップダンスで、ステップを練習しました。
晩さん会は、記念行事に続き、食事、そのあとにダンシングタイムがあり、ディスコミュージックに乗って、海兵隊員とパートナーや恋人が一緒にステップを踏み踊るのです。
舞台の中央で、自衛隊の制服で海兵隊員と一緒に踊ります。目立つこと目立つこと。
それが6回続いたのです。「誰もやったことのないことをリスペクトする」を意識しました。
今まで、海兵隊の晩さん会に自衛隊員は参加していません。ダンシングタイムになるといつも中央に自衛官が出て踊っている。それが噂になりました。
その後、各キャンプで海兵隊員の司令官はじめ隊員から“Party Animal!”(パーティ・アニマル)
と、声をかけられるようになりました。海兵隊員に受け入れたのです。ちなみに、パーティ・アニマルとは、「パーティ大好き人間」のことです。
そういった文化の特色を理解し、自分の存在を知らしめること。少しの勇気と認めてもらう努力で、良い関係を得ることができたと思います。
あなた次第で、友達は世界に作ることができます。
執筆家・英語教育・生涯教育実践者
大学から防衛庁・自衛隊に入隊。10年間のサバイバル訓練から人間の生について考え、平和的な生き方を模索し離職を決断する。時を同じくして米国国費留学候補者に選考され、留学を決意。米国陸軍大学機関留学後、平和を構築するのは、戦いを挑むことではなく、平和を希求することから始まると考えなおす。多くの人との交流から、「学習することによって人は成長し、新たなことにチャレンジする機会を与えられること」を実感する。
「人生に失敗はなく、すべてのことには意味があり導かれていく」を信念として、執筆活動を継続している。防衛省関連紙の英会話連載は、1994年1月から掲載を開始し、タモリのトリビアの泉に取り上げられ話題となる。月刊誌には英会話及び米軍情報を掲載し、今年で35年になる。学びによる成長を信念として、生涯学習を実践し、在隊中に放送大学大学院入学し、「防衛省・自衛隊の援護支援態勢についてー米・英・独・仏・韓国陸軍との比較―」で修士号を取得、優秀論文として認められ、それが縁で定年退官後、大規模大学本部キャリアセンターに再就職する。
修士論文で提案した教育の多様化と個人の尊重との考えから、選抜された学生に対してのキャリア教育、アカデミック・アドバイジングを通じて、キャリアセンターに新機軸の支援態勢を作り上げ、国家公務員総合職・地方上級職、公立学校教員合格率を引き上げ高く評価される。特に学生の個性を尊重した親身のアドバイスには、学部からの要求が高く、就職セミナーの講師、英語指導力を活かした公務員志望者TOEIC セミナーなどの講師を務めるなど、大学職員の域にとどまらぬ行動力と企画力で学生支援と教員と職員の協働に新たな方向性をしめした。
生涯教育の実践者として、2020年3月まで東京大学大学院教育研究科大学経営・政策コース博士課程後期に通学し、最年長学生として就学した。博士論文「米軍大学における高等教育制度について」(仮題)を鋭意執筆中である。
ワインをこよなく愛し、コレクターでもある。無農薬・有機栽培・天日干し玄米を中心に、アワ、ヒエ、キビ、黒米、ハト麦、そばを配合した玄米食を中心にした健康管理により、痛風及び高脂質血症を克服し、さらに米軍式のフィットネストレーニング(米陸軍のフィットネストレーナの有資格者)で筋力と体形を維持している。趣味はクラッシック音楽及びバレエ鑑賞。
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