英語の通訳の仕事を振り返ってみて、「楽しい思い出も苦しい思い出もありました」と言えればよいのですが、実際は、苦しい思い出が99%です。
非常にストレスフルで、神経をすり減らすような業務だったと言えます。通訳の数時間を充実させるために、日々の努力が必要でした。
その努力の一つに、社会の新しい出来事をチェックするということが非常に大切でした。英語でどう表現するのか、海外ではどう表現するのかをチェックするのです。
現在のように、スマホで即、調べられるようなIT環境ではありませんでした。外国人の友人に問い合わせたり、六本木のバーで情報収集したりしたものです。
新語のチェックは、今でも習慣になっています。通訳の仕事は、年に数回になりましたが、新しい話題を知らずに、通訳が頓挫してしまうという悪夢は今でも時々見ます。恐怖!
今回は、Z世代と呼ばれる若者が経験している「蛙化現象」についてお話しします。
<蛙化現象ってなんだ!?>
2023年上半期で、Z世代が選ぶ流行語ランキングで、第一位となったのが蛙化現象です。
You Tubeや TikTokで流行っています。
2004年に発表された心理学の論文で、女子が恋愛過程で通過する感情の動きを「蛙化現象」として説明されたのが最初です。
もともとの意味は、女性がある男性に好意を持っていて、その男性が自分に好意を持っていることが分かると、その男性に生理的な嫌悪感を抱いてしまうという現象。
現代では、少し違った意味で使われています。つまり、女性が好きになった男性に対して、あることをきっかけに嫌いになってしまうことを意味します。
TikTokなどで、流行っているのは後者の意味で、恋愛感情を抱いていても、その相手の言動や癖、服装などが原因で、「一気に冷めてしまう、嫌いになってしまう」感情の動きを言います。
Swatchのような年代は、若い人に好きになってもらう可能性はないので、蛙化現象とは無縁ですが、若い男性にとっては、女性の感じ方、考え方が非常に気になることになりますね。
嫌いになるきっかけとなる言動や癖、服装などは、千差万別ですが、理解するために例をあげると、
1、私服の服装がダサい
2、食事の時にくちゃくちゃと音を立てる
3、箸の持ち方がおかしい
4、店員などへの態度が横柄
5、汗を拭くハンカチがくしゃくしゃだった
6、カラオケが下手だった
7、道を歩いていて躓いた
8、母親のことをママと呼んでいる
9、割り勘するときに1円単位で要求された
10、髪の毛を人前で直した
あなたは今、微笑みを浮かべているかもしれません。「え~、そうなんだ」と一言出たかもしれません。若者は、そんなことで、好きだった人が一瞬で嫌いになってしまうのですね。
今回はその内容を、吟味することではありませんので、これ以上内容については言及しませんが、蛙化現象については、理解していただけたと思います。
<海外ではこう言います!?>
海外でも、同じようなことが起きているのか。これがポイントです。海外でも、その表現はあります。それでは、英語でどう表現するかをお話ししましょう。
英語で、蛙化現象を“Frog Phenomenon”とは、言いません。日本語のネットでfrog(蛙)、phenomenon(フェノミノン:現象)と直訳しているものがありますが、それでは通じません。
どういうかというと、“ICK”(イック)と言います。略語ではなく、一語でイックです。
SNSに興味のある人であれば通じる流行り語です。
ただ、ネイティヴでもあっても、イックで話が通じない場合があることは、頭に入れておくと良いでしょう。最新の情報を手に入れる楽しみとは、そういうものです。
さて、イックの使い方ですが。
“What’s your ick?”
(好きな人が、これをしたら一気に冷めることは何)
と聞けば良いでしょう。
答え方は、“I got the ick when”(という時に冷めるわね)が基本形になります。
例えば、
“when the guy is fixing his hair in a mirror”
(彼が鏡みて髪型を直しているとき)
男性が、身だしなみに気を付けることは大事なことですが、基本、人の見ていないところで直すのが正解のようです。
それって、女性が電車の中で化粧するということと同じだと思いますが、女性は、好きな男性の前では、化粧を直さないと思います。男性の方がナルシストっぽいのかもしれません。
そういったことで、男性が意識せずにやってしまうことの例をあげれば、「鼻毛を抜く」なんてどうでしょうか。“when I saw my crush pulled his nose hair”です。
my crushは、(片思いしている人)のことです。意味は、私の好きな人が目の前で鼻毛を抜いているところを見た時となります。納得です。(笑)
<百年の恋も一瞬で冷めるも、チェックしておきましょう!>
蛙化現象(ICK)について、十分理解していただけたと思います。Swatchは、通訳官のトラウマから、世の中の現象を常にチェックしてボキャブラリーを増やしています。
ただ、実生活においては、自分のイックについてはあまり具体例がありません。もちろん若者の間で流行している生活文化なので、実感がないのだと思います。
よく考えてみると、生活の中で「百年の恋も一瞬で冷めた」という表現は耳にしたし、言ったこともあります。その表現もチェックしておきましょう。
百年の恋は、“a century-old love” と直接的に表現してもいいですし、 ”the greatest love“と言っても良いですね。
その恋が、ダメになるのですから、“can turn cold”(冷める)、“can fade”(色あせてします)が分かりやすいですね。can~で、(起きてしまうんだなあ)という気持ちが表現できます。
“The greatest love can turn cold”
(百年の恋も冷めてしまいます)
と気持ちを表現し、原因をつけて、
“even I went out to eat with her (or hm)”
(一度食事に行っただけで)とすれば完成です。
それぞれの年代で、ICKだったり、love can fadeだったりします。十人十色、特に最近は多様性(diversity:ダイヴァーシティ)がみとめられる社会になってきました。
様々な趣味、嗜好、考え方、感じ方があって、それを尊重していく時代です。アンテナは高く上げ、情報をとり、時代に取り残されないように、文化を吸収していきましょう。
執筆家・英語教育・生涯教育実践者
大学から防衛庁・自衛隊に入隊。10年間のサバイバル訓練から人間の生について考え、平和的な生き方を模索し離職を決断する。時を同じくして米国国費留学候補者に選考され、留学を決意。米国陸軍大学機関留学後、平和を構築するのは、戦いを挑むことではなく、平和を希求することから始まると考えなおす。多くの人との交流から、「学習することによって人は成長し、新たなことにチャレンジする機会を与えられること」を実感する。
「人生に失敗はなく、すべてのことには意味があり導かれていく」を信念として、執筆活動を継続している。防衛省関連紙の英会話連載は、1994年1月から掲載を開始し、タモリのトリビアの泉に取り上げられ話題となる。月刊誌には英会話及び米軍情報を掲載し、今年で35年になる。学びによる成長を信念として、生涯学習を実践し、在隊中に放送大学大学院入学し、「防衛省・自衛隊の援護支援態勢についてー米・英・独・仏・韓国陸軍との比較―」で修士号を取得、優秀論文として認められ、それが縁で定年退官後、大規模大学本部キャリアセンターに再就職する。
修士論文で提案した教育の多様化と個人の尊重との考えから、選抜された学生に対してのキャリア教育、アカデミック・アドバイジングを通じて、キャリアセンターに新機軸の支援態勢を作り上げ、国家公務員総合職・地方上級職、公立学校教員合格率を引き上げ高く評価される。特に学生の個性を尊重した親身のアドバイスには、学部からの要求が高く、就職セミナーの講師、英語指導力を活かした公務員志望者TOEIC セミナーなどの講師を務めるなど、大学職員の域にとどまらぬ行動力と企画力で学生支援と教員と職員の協働に新たな方向性をしめした。
生涯教育の実践者として、2020年3月まで東京大学大学院教育研究科大学経営・政策コース博士課程後期に通学し、最年長学生として就学した。博士論文「米軍大学における高等教育制度について」(仮題)を鋭意執筆中である。
ワインをこよなく愛し、コレクターでもある。無農薬・有機栽培・天日干し玄米を中心に、アワ、ヒエ、キビ、黒米、ハト麦、そばを配合した玄米食を中心にした健康管理により、痛風及び高脂質血症を克服し、さらに米軍式のフィットネストレーニング(米陸軍のフィットネストレーナの有資格者)で筋力と体形を維持している。趣味はクラッシック音楽及びバレエ鑑賞。
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