月に一度の散髪は,最近のペース。特別職国家公務員の時は,2週間に一回散髪していました。
行きつけのBarber Sは,ちょっとコジャレタ感じでお気に入り。
話好きのマスターは,髭をたくわえ,茶髪でオサレ。若い人のトレンドに敏感で,散髪の度にいろいろなトピックスを提供してくれます。
「最近,アメリカンバーバースタイルが流行ってるんですよね!」とふってくる。“American barber style?”と英語で返す。周りの客がこちらをチラ見する。
マスターは,みなとみらいにも店を持っていて,外国人が来店するという。外国人客の対応で困ったときの英語表現を質問され,無料で英会話の講義をすることもあり,なかなかそつがない。
で,そのアメリカンバーバースタイルの特徴を良く聞いてみる。
「サイドをですね,フェードするんですよ」
「ん?フェードって何?」と私。
「ボカシっていうんですかね」
「ああ,fadeね。しぼむとか,消えていくって意味だね」と英語の知識をひけらかす私。
「ツーブロックにして,そこの分かれ目をフェードラインにして,その線から下は,テーパーっていうか,徐々に刈り上げていく,刈り上げをぼかしていく感じです」
「なんじゃそりゃ!」と思いながらも情報収取する元情報部員!
「地肌が見える感じで始まるフェードを,スキンフェードカットって言うんですよ!」
「エッ!!!それって,米軍人の髪型じゃない!?」と思い当たった。
ここでも軍の機密情報が,民間に流れていたのだ。笑
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私は,米陸軍のアカデミーに留学していた2000年にタイムスリップしていた。
「TAK, 日本の自衛隊には,身だしなみの規則はないのか?」クラスメートから質問された。
“Yeah, we have the regulations of that!”「あるよ!」
でも,これで会話は成り立っていなかったのです(涙)
<床屋いけよ!>
つまり,クラスメートが言いたかったのは,「髪が長いぜ。床屋いけよ!」“You should get a haircut now”ということだったのです。
留学すると,約1~2か月は,プリコース(履修前教育)でオリエンテーション(学生生活の説明)を受けた後,模擬授業を受講し,学習方法などを確立するためいろいろとアドバイスをもらいます。
これを真剣にやっておかないと,学生生活もうまくいかないし,授業についていけません。残念ながら,日本の大学のサービスで抜け落ちているところです。
さらに,メンター制度がある大学等は,留学生のメンターを公募してくれます。メンターは,日常的なことから大学等の授業まで,親身にアドバイスしてくれるボランティア学生です。
メンター候補者は複数の応募がある場合もあり,留学生自身が面接をして決めます。「日本が好きだ」とか,「日本語を勉強している」という学生が多いですね。
そんな感じで,その期間はかなり忙しいですね。いつの間にか髪の毛が伸びている。もともと短髪のスポーツ刈りですから,2週間もすれば,伸びた感じになります。
そこで,「床屋ってどこにある?」ってことになり,「じゃあ,これから連れて行ってやるよ!」という感じで,基地内のバーバーに連れていかれます。
え!こんなところ?
米軍基地内の床屋
バーバーは,基地内のショッピングモールのような感じの施設に隣接することもありますが,そこはいつも込み合っています。その店を通り過ごし,倉庫の立ち並ぶ建物の中に入っていきます。
ショッピングモールの店は,若い兵士に人気があるので,繁盛しています。宿舎から歩いていける距離であることも重要です。つまり繁盛店は,「安い,早い,便利な店」なんです。
米軍基地で,建物に入るときには,建物番号を覚えておくことが必須。建物のデザインで区別しようとしても無理。同じデザインの建物が立ち並んでいるからです。地図にも建物番号は表記されています。
例えば「No1005」であれば,テンノウファイヴと発音します。建物は番号順に並んでいるので,いわゆる住所と同じです。日本で言えば,団地等の棟番号にあたりますね。
日本でおなじみの,三色のレジメンタルストライプのサインポールがくるくる回っていることはありません。店によっては,看板もなく,部屋番号だけの場合もあります。
バキューム付き電動バリカン?!
中に入ると,戦闘服にブーツの軍人が椅子に座って待っています。入ってリアクションしないと,「よそ者(stranger)」になるのがアメリカ文化ですので,適当に「Hi!」とか言って,アイコンタクトするのが仁義。
古いタイプの理容椅子が2つ置いてあり,女性2人が働いています。一人はブロンド(金髪),一人はブルーネット(茶髪)。従業員同士話をしますが,客とはあまり話をしません。
米国では,人種差別に敏感ですので,店に白人がいた黒人がいたとは,表現しません。また,スリムな体形とかふくよかなとかの外観も問題になります。髪の色は染めている場合もあり,個性として利用できます。
バーバーの手元を見ると,バリカンが音を立てています。すごいスピードで髪を刈っていきます。
芝生を刈っているような感じ。皆さんは,見たことありますか?
バキューム付きのバリカンなんです。
※下記動画参照
床屋は,規則通りに!
軍人は真剣に鏡を見つめている。さらに,バーバーの使っている電気バリカンを見ている。まじで真剣です。なぜ?日本じゃ,おまかせで,リラックスしておけば終わっているのに。
実は,米軍では,髪の長さも規則で決められているのです!
ここは,少し階級の上の兵士が来るバーバーらしく,服装や身だしなみを点検する責任のある上官が散髪していたのです。点検する者が,中途半端な散髪ではダメなんです。
軍隊では,「活模範(かつもはん)」という業界用語がありますが(笑),「活きた見本を示すこと」“set the example”が,基本コンセプトです。プロフェッショナルです。
ちなみに,自衛隊に髪の毛の長さを規定した規則はありません。
アッという間に,私の番です。愛想笑いをして,椅子に腰かけます。
とにかく相手に自分のことを理解させることが大切ですから,簡単な自己紹介をしたりします。
さて,いよいよ散髪開始ですが,,,,。英語が通じない!
英語が通じない!
米軍においては,留学生は,自国の規則通りに散髪をすれば,それでOKです。散髪に要する時間も10分かかりません。すでに,3分間も説明しているのですが,なかなかスタートできません。
日本語で言えば全体的に短くして,角刈りのように角度をつけずに,上部は丸くしてくださいという感じ。日本では,「スポーツ刈りでお願いします」といえばOKです。
指で頭の部分を示しながら,ここはこんな感じという風に説明をしていきます。バーバーもようやく納得したようです。しかし,英語の学習は,ここでもうひと粘りです。
バーバーが理解した時に,実際に,米軍人はどう表現するかを確認することが非常に重要です。
そこで学んだ英語は,” Trim up and top flat ” でした。両サイドと襟足は刈り上げて,トップの部分は平らにする。これが基本です。
英語は,自分の言いたいことを伝えて終わりではありません。ネイティブがそれをどのように簡潔に表現するか,あるいは慣用表現があるかをチェックし,それを覚えて使うことが必要です。
最近,アメリカのバーバースタイルが流行ってますよ!
さて,現実に戻りましょう。
先ほどの床屋のマスターの話に出てきた,アメリカンバーバースタイルです。
アメリカでは,海兵隊員の海兵隊カットが人気です。最近はいろいろなアレンジがでていますので次のサイトUS Army Barber Shop at Joint Base Lewis-McChord が,参考になります。
マスターとの会話で出てきた和製英語が,動画を見ることによって,しっかりと意味が分かってきます。trim up 「刈り上げ」なのか,taper するのか,それをfadeするってどういうことなのか
が分かってきます。
trim upは,髪に角度をつけながら刈り上げていくことです。日本でも普通にあるテクですね。taperは,頭皮から出ている髪をバリカンなどで皮膚が見えるように刈ってしまうこと。
そして,fadeが,髪のある部分とtaperした部分を,自然に見えるように「ぼかす」ことです。そのテクをスキン・フェードということもあるようです。
生活の中で英会話を学ぶ楽しさ
英会話を学ぶということは,自分の言いたいことがまず言えるということ。換言すれば,必要なことが表現できることですね。
外国人との会話で,片言で通じた時でも,コミュニケーションできた楽しさや嬉しさは思い出に残ります。しかし,ネイティブが使う表現は,身についていないかもしれません。
その状況で,もう少し粘って,実際にネイティブがどうやって表現するのかというところまで踏み込めば,思い出とともに,役に立つ実践的な英語表現をゲットできます。
執筆家・英語教育・生涯教育実践者
大学から防衛庁・自衛隊に入隊。10年間のサバイバル訓練から人間の生について考え、平和的な生き方を模索し離職を決断する。時を同じくして米国国費留学候補者に選考され、留学を決意。米国陸軍大学機関留学後、平和を構築するのは、戦いを挑むことではなく、平和を希求することから始まると考えなおす。多くの人との交流から、「学習することによって人は成長し、新たなことにチャレンジする機会を与えられること」を実感する。
「人生に失敗はなく、すべてのことには意味があり導かれていく」を信念として、執筆活動を継続している。防衛省関連紙の英会話連載は、1994年1月から掲載を開始し、タモリのトリビアの泉に取り上げられ話題となる。月刊誌には英会話及び米軍情報を掲載し、今年で35年になる。学びによる成長を信念として、生涯学習を実践し、在隊中に放送大学大学院入学し、「防衛省・自衛隊の援護支援態勢についてー米・英・独・仏・韓国陸軍との比較―」で修士号を取得、優秀論文として認められ、それが縁で定年退官後、大規模大学本部キャリアセンターに再就職する。
修士論文で提案した教育の多様化と個人の尊重との考えから、選抜された学生に対してのキャリア教育、アカデミック・アドバイジングを通じて、キャリアセンターに新機軸の支援態勢を作り上げ、国家公務員総合職・地方上級職、公立学校教員合格率を引き上げ高く評価される。特に学生の個性を尊重した親身のアドバイスには、学部からの要求が高く、就職セミナーの講師、英語指導力を活かした公務員志望者TOEIC セミナーなどの講師を務めるなど、大学職員の域にとどまらぬ行動力と企画力で学生支援と教員と職員の協働に新たな方向性をしめした。
生涯教育の実践者として、2020年3月まで東京大学大学院教育研究科大学経営・政策コース博士課程後期に通学し、最年長学生として就学した。博士論文「米軍大学における高等教育制度について」(仮題)を鋭意執筆中である。
ワインをこよなく愛し、コレクターでもある。無農薬・有機栽培・天日干し玄米を中心に、アワ、ヒエ、キビ、黒米、ハト麦、そばを配合した玄米食を中心にした健康管理により、痛風及び高脂質血症を克服し、さらに米軍式のフィットネストレーニング(米陸軍のフィットネストレーナの有資格者)で筋力と体形を維持している。趣味はクラッシック音楽及びバレエ鑑賞。
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