突然ですが、あなたは学生時代に一番退屈だった授業は何でしたか?
私は日本史と世界史。先生から何か伝えられて、試験用に暗記・暗記…ってホントに退屈でした。
でも最近、とても興味深い本を見つけました。ある日本人研究者が4か国(米・仏・イラン・日)での学校の歴史の授業を調査・研究したんだそうです。
『「論理的思考」の文化的基盤 4つの思考表現スタイル』渡邉 雅子 (著)
彼女は、各国が歴史の授業を通して、歴史というものをどうとらえているかを調べたかったようです。
私(ええっ?歴史の授業って、私が知ってる以外のもっと面白い教え方があるの?)と思い、読み出したところ、最初に出てきたのが米国での歴史の授業でした。
米国流の「歴史の授業」は、出来事が起きた原因や目的の討論。
例えば仏革命が起きた理由を話し合う。あるいは「自分が今リンカーンなら、戦争をする/しない、あなたならどちらにする!」みたいに意見を言い合う。
私「へぇー!」と思わず声がw。こんなことに面白がるのは私だけかも?
ただ疑り深いのかw、私としては自分でも実際の教科書を確かめたくなりました。でも米国の学校教科書となると、簡単には手に入らなさそう・・・。厚くて重くて値段が高い!
そこで、一計を案じました。米国の入試問題が見つからないかって。入試問題って、受験生が勉強した内容を質問するのが普通ですよね。だから、例えば高校の入試問題から、中学生が何を勉強しているのかが想像できるはず、と。
すると見つかりました。無料で!
米国のある高校入試の世界史の問題が数年分ネット上にありました。この質問をざっと眺め、受験生たちが受けている中学での授業の様子を、逆探知しようというわけです。何だかドキドキですよね。
◯アメリカの入試問題
https://www.nysedregents.org/globalhistorygeography/
そこでみると、やっぱり!原因・理由・結果・影響などを、選択・記述で尋ねる問題が山盛り。例えば…..
<問題>
The government of Spain sponsored overseas exploration and expansion
(スペイン政府は海外の探検や進出に資金を出した)
in the late 1400s and into the 1500s
(1400年終わりから1500年代に)
because they(その理由は?)
<回答(選択)>
(1) desired spices from the Indies
(インド諸国の香辛料が欲しかった
(2) owed allegiance to Islamic caliphates
(イスラム支配者達に従った
(3) militarily defeated the Ottoman Empire
(オスマン帝国に勝ったから)…
日本のように「~したのは誰か」とか「建てた寺の名前は」といった純粋な知識問題はほぼゼロのよう。
なるほど、米国の高校入試として、こういう問題が出るのは受験生が中学時代に「なぜなぜ」討論に授業で慣れているからに違いありません。その証拠に、討論ほぼゼロ授業の日本でこんな入試問題はまずナシでしょう。
(やっぱりアメリカの授業は原因・結果の討論型みたい。若い頃から自分の意見を持ち言える習慣がつくなら、確かに素晴らしいかな)と思いました。
でもまてよ、という気持ちも同時に起こりました。米国の歴史の授業に現れる米国流の分析ですが、いくつかの原因・理由で、いつも歴史を単純に割り切れるか?
という、言わばそもそも論です。
例えば、第2次大戦で「原爆投下は戦争の早い終結のために必要だった」と考える米国人が多いと聞きます。でもそんなに簡単に片付けられる?と私は思います。
繰り返しますが、歴史上起きるコトって、そう単純でしょうか?もっと複雑で色々な原因が絡み合っているのではという気がするのです。
と言うのも昔、別の洋書に、一つの歴史的事件の原因は探そうと思えば100以上ある、と書いてあるのを読んだことがあるからです。単純な原因・理由を信じ込むな、とも。
少なくとも、出来事の一つの原因だけでストップ、後は考えない…
ではイケないと思いませんか。
さて今回のお話は、アメリカの歴史授業についてでしたが、この本の続き(イランやフランス、日本)について、また別記事で。
<英語版>
日本語で内容を分かった上で今度は英語で理解してみる。
↓ ↓ ↓
英語版はこちらから☆
<今週のJiro’s quiz>
適語はどれ?
The governments(1. response 2.sponsored 3.spooned ) overseas exploration.
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正解は 2. 資金を出した
1.は名詞で「返事」
See you next time,
Jiro
私立学校に英語教師として勤務中、40代半ばに差し掛かったころ、荒れたクラスを立て直す策として、生徒に公言して英検1級に挑戦することを思い立つ。同様の挑戦を繰り返し、退職までに英検一級(検定連合会長賞)、TOEIC満点、国連英検SA級、フランス語一級、スペイン語一級(文科大臣賞)、ドイツ語一級、放送大学大学院修士号などの成果を得る。
アメリカで生徒への対応法を学ぶ為に研修(地銀の助成金)。最新の心理学に触れた。4都県での全発表、勤務校での教員への研修を英語で行う。現在も特別選抜クラスの授業を全て英語で行っている。「どうやって単語を覚えればいいですか?」という良くある質問に答える為、印欧祖語からの派生に基づく「生徒には見せたくない語源英単語集」を執筆中。完成間近。常日頃洋書の読破で様々な思考にふれているが、そうして得た発想の一つを生かして書いた論文がコロナ対策論文として最近入賞。賞品の牛肉に舌鼓をうっている。元英検面接委員