アメリカで今ヘロインの50倍も強い、しかも安い薬物が広がり問題になっているそうです。死者10万人は10年前の2倍。たとえ撲滅しても別の薬物がすぐ現れる、と嘆く人も。
(NHK Catch世界のトップニュース2024/10/10より)
私この薬物のニュースを見て、高校教員時代のことを思い出しました。強い薬物とは言えませんが喫煙です。子供達が煙草に手を染めないようにできず、悩みました。
高校では大抵、タバコの危険を訴える「禁煙指導」があります。あなたも似た話を高校時代に聞いたかも。でもいくら喫煙の害を訴え脅かしても、煙草を吸う生徒はゼロにはならなかったんです。
(これでいいのかなあ…)と疑問に思いながらも、タバコの危険性を伝えて、脅かす従来のやり方を繰り返していた頃のこと、意外なヒントが見つかりました。
それはLorenz / ローレンツ、というオーストリアの行動動物学者の名著
『King Solomon’s Ring(ソロモン王の指輪)』
を読んでいた時のことです。
シマウマなど哺乳類には、凶暴な動物にわざと近寄り、間一髪で逃げる行動を遊びのように繰り返す者がいるという記述があったのです。
この危険を楽しむ、スリルへの衝動のことを読み、私はピンと来ました。
(同じような危険やスリルへの衝動みたいなものが、生徒達のタバコに触れたい気持ちの底にも、あるかもしれない…)と気づいたのです。言わば「怖いもの見たさ」かも。
そこで、次の禁煙指導時に、こんな言葉で生徒達に話してみました。
「危ない、止めろ!」と言われると『止めよう』と思う人はきっと多いよね。でも逆にそう脅かされると試したくなる人もいるみたい。それはへそ曲がりじゃなくて、古い本能・衝動みたいだよ。危険を冒したい本能、スリル衝動が人にあるかもしれないんだね。だから喫煙が危険だと知るだけでなく、危険を冒したいスリル衝動が自分にもあるかも、と知るのも必要だね…」
気のせいかもしれませんが、ハッとする表情を見せた生徒が結構いた気がします。幸い退職間際に関わった生徒には、喫煙した(喫煙がばれたw)生徒はいませんでした。
このような「危険」+「危険に触れたい衝動」…その両方を伝えるのは薬物対策にも有効かもしれないと想像してしまうのは、私だけでしょうか?
最近偶然、今回のお話しにぴったりの動画を見つけました。動物研究者の方?のモノ。
スリルを楽しむ動物の行動の色々な例の中で、28分あたりに、ライオンの群れにわざと近づいては逃げるantelope( アフリカ・アジア南西部の、単純な角を持つウシ科の動物、ガゼルはその一種。画像参照) が出てきます。
英語では“ flirt with death (死と戯れるような行動)”とありましたが、もしかしたら、これがオリジナルな映像!と思うほど、前述の洋書(『King Solomon’s Ring』)の記述にぴったりの映像でした。
洋書は(また英語の動画も)新しい見方や世界を開いてくれます。引き続き楽しく英語を学べると良いですね。
See you next time,
Jiro
<今週のJiro’s Quiz>
次の選択肢のうち適切な単語はどれ。
Do you like (1. scary 2. afraid 3. fear ) movies?
あなたは怖い映画が好きですか?
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正解
1. scary
形容詞「恐ろしい、怖い」
2.の afraid は形容詞だが名詞を原則修飾しない
3.のfear は名詞。fear moviesは「恐怖映画」で良さそうだが、英語では、名詞は名詞を原則修飾しない。
私立学校に英語教師として勤務中、40代半ばに差し掛かったころ、荒れたクラスを立て直す策として、生徒に公言して英検1級に挑戦することを思い立つ。同様の挑戦を繰り返し、退職までに英検一級(検定連合会長賞)、TOEIC満点、国連英検SA級、フランス語一級、スペイン語一級(文科大臣賞)、ドイツ語一級、放送大学大学院修士号などの成果を得る。
アメリカで生徒への対応法を学ぶ為に研修(地銀の助成金)。最新の心理学に触れた。4都県での全発表、勤務校での教員への研修を英語で行う。現在も特別選抜クラスの授業を全て英語で行っている。「どうやって単語を覚えればいいですか?」という良くある質問に答える為、印欧祖語からの派生に基づく「生徒には見せたくない語源英単語集」を執筆中。完成間近。常日頃洋書の読破で様々な思考にふれているが、そうして得た発想の一つを生かして書いた論文がコロナ対策論文として最近入賞。賞品の牛肉に舌鼓をうっている。元英検面接委員