子供のころに,「英語が話せるといいなあ。」そんな夢を抱いていたら,英語には縁があると思っていいですね。人生にとってラッキーなことです。英語に「選ばれた人」だと思います。
大人になって,「英語を話せるようになりたい」と思うのは,「夢」ではありませんよね。
もっと切実な,切羽詰まった状況で,ちょっと暗い感じでひとり呟いているかもしれません。
英語を話したい理由はいろいろあります。大人になって英語学習をするのは,仕事上のニーズ,趣味を深めるため,外国人と付き合い始めたなど様々な理由があります。
理由はともかく,英語学習には,目的の設定が大切です。
英語がペラペラになりたいというのは,目的ではありません。だから,英語がペラペラになりたいという願望は,残念ながら成就しないと思います。
英語は,道具です。英語学習を始めた時点で,英語という道具を,皆さんは,手にするわけです。ただ,役に立つ道具にするには,グレードアップが必要です。どこまでグレードアップするかが,目的になります。
換言すると,どのくらい役に立つ道具を持つかが,英語学習の目的になります。道具の使い勝手が悪くなったり,切れがわるくなったりしたときに,さらに,上級の目的を設定する。それが英語学習の自然な方法です。
英語ペラペラで思い出したのですが,英語を話すことで重要なことは何だと思いますか?
私が国の行政機関で通訳をしていた時のエピソードを紹介します。
英語が話せても,通じないじゃない!
1 英語の日米会議って?
私が,国の行政機関で通訳をしていた時に,エピソードを紹介します。
皆さんは,東京の天現寺に,米軍の厚生宿泊施設,つまり,米軍専用のホテルがあるのをご存じでしょうか。基本的に日本人は入ることができません。
米軍軍人及び軍属とその家族が宿泊できます。レストランも宴会場もあります。そこで,日米の会議のあと,レセプションが開かれた時のことです。
参加者は,会議に出席した日米の関係者。米軍人と軍属,防衛省・自衛隊関係者です。
レセプションは,カクテルタイムから始まります。
カクテルタイム?日本の宴会のように,乾杯の後,フリードリンクというような感じではなく,集合時間の1時間ぐらい前から,自由にアルコール類やソフトドリンクが飲めるシステムです。
お酒を飲みながら,リラックスして会話を交わす。あこがれる雰囲気ですね。
政府機関の国際会議では,会議全般を調整する担当者が,司会を担当し,議事進行をします。長期間,相手国と英語で調整し,もちろん流暢(ペラペラ)に話せます。
司会者が日本語から始めるか,英語から始めるかも,あるいはすべて英語で通すかは,印象が違いますので,組織内の意見の調整も必要です。(調整には時間がかかります)
さて,会場には,米国の陸軍,海軍,空軍,海兵隊の軍人が集まって,和気あいあいとビールなどを飲みながら話しています。オープニングの時間となり,司会者が挨拶を始めます。
“Ladies and Gentlemen, Soldiers! It is my honor to be the MC tonight ,,,,,,,”
「ご来場の皆様,ソルジャーの皆様。今宵司会を務めさせていただきますことは,光栄とするところです..」という感じではじまります。
Ladies and Gentlemenは,最近使わないようにするトレンドがあります。これも機会を改めてトピックスにしたいと思います。
ここで使われているソルジャー(soldier)ですが,実は,「陸軍兵士」のことです。
米軍は,現在6軍あります。現在と書くのは,2019年12月20日に,宇宙軍が創設されたからです。
「え!米軍って,陸軍,海軍,空軍だけじゃないの?」と思われる人も多いと思います。
軍隊は6軍種あります。(陸・海・空の区別を軍種と呼びます。英語では,branch of Service)
2 米軍は6軍種ある
ちょっと,読みにくいかもしれませんが,合衆国法典第10編「定義」には,次のように書かれています。「米国軍隊とは,陸軍,海軍,空軍,海兵隊,宇宙軍,沿岸警備隊とする」
そのうち,沿岸警備隊は,国防総省の管轄ではないので,国防総省の軍という意味では,沿岸警備隊を除いた5軍種を指します。
司会者の話に戻りましょう。司会者が,紳士・淑女と陸軍兵士に挨拶をしたというところでしたね。ここで,質問です。陸軍兵士がソルジャーなら,他軍種の軍人の呼び名もあるのでしょうか?
ハイ!あります。
それぞれの軍種の軍人は公式な呼び名があり,
陸軍 soldier(ソルジャー)
海軍 sailor(セイラー)
空軍 airman(エアマン)
海兵隊 marine(マリーン)
宇宙軍 guardian(ガーディアン)
と呼びます。
なるほど!だったら,司会者の呼びかけは,陸軍関係者に限定されたわけですか?
鋭いですね。その通りです!
ソルジャーズと呼びかけた場合,陸軍の皆さんと言っているわけです。
挨拶としては,失礼ですよね。他軍種の軍人は,そっぽを向いてしまいます。
実際,他軍種の軍人は,陸軍軍人への業務連絡のように取るわけです。司会者が,自己紹介と司会進行の協力を述べると,通常,拍手がわきますが,その時は,,,,,,,
会場が静まり返りました。
3 英語が話せても通じない?!
「あれ?英語話せても,通じないじゃない?!」英語が話せない人々の,鋭い批判が飛んできます。笑 米軍人出席者の反応は,”Take it easy!”「まあ,いいか」という感じ。
米軍人は,軍種で呼ばれることを,誇りに思っています。この場合には,それぞれの軍種の呼び名をすべて言うことが必要です。
軍種ごと間を取り,” Soldiers, Sailors, Airmen, Marines !”と呼び上げていきます。
そうすると,面白い反応があります。
それぞれの軍種の掛け声,例えば,陸軍は「フゥアー!(Hooah!)」,海兵隊は「ウラー!(Woora!)」と大声で反応してくれるのです。それで一気に会場が盛り上がります。
私は,その時に主賓の挨拶の通訳官でしたので,挨拶文も翻訳して,必要な部分だけ主賓に英語で話してもらうことにしていました。
その必要な部分とは? そうです。軍種を呼び上げることです。主賓には,リハーサルをしていただき,特に呼びかけた後の「間」の取り方について,念入りに説明をしました。
4 英語が話せなくても,通じる!!
果たして,主賓は挨拶に立ち,マイクに向かって,第一声を発しました。
”Good evening, ladies and gentlemen! (ドキドキ!)
(主賓,大きく息を吸って)
“Soldiers!” 陸軍兵士の反応!
“ Sailors!” 海軍水兵の反応!
“Airmen!” 空軍兵士の反応!
“Marines!” 海兵隊員の反応!
(主賓,満面の笑み)
主賓が笑顔になった途端,大歓声と拍手が上がりました。
大成功です!「英語が話せなくても,通じる!!」
司会者と主賓の挨拶は,何が違ったのでしょうか。司会者は英語が話せる。主賓は通訳が必要。それは道具の違いかもしれません。司会者は,業務連絡はできるレベルの道具。
主賓は,英語は話せないけれども,出席者を労おうとする気持ち,感謝を表現できる道具,つまり通訳官をもっていたということ。
外国語の学習は,奥が深いですね。
5 まとめ
英語を話すというのは,いろいろなレベルで英語の文化の中で生きていくということです。
英語の学習には,それぞれの目的があり,学習の仕方も範囲も違ってきます。
どこまで学習するのかの達成目標を立てることで,自分の目的が明確になり,ぶれない,効果的な学習ができると思います。
英語がペラペラになりたいという願望だけでは,英語は修得できません。また,言語の背景や文化を理解しなければ,思わぬ落とし穴にはまってしまうこともあります。
社会人は,英語の文化や会社,企業の慣習などを理解することによって,英語学習はとても興味のある実践的なものになります。
語学の学習は,奥が深く,非常に面白いものです。楽しく,陽気に,無理のない学習のヒントや経験談を提供できればと思います。
Swatch
執筆家・英語教育・生涯教育実践者
大学から防衛庁・自衛隊に入隊。10年間のサバイバル訓練から人間の生について考え、平和的な生き方を模索し離職を決断する。時を同じくして米国国費留学候補者に選考され、留学を決意。米国陸軍大学機関留学後、平和を構築するのは、戦いを挑むことではなく、平和を希求することから始まると考えなおす。多くの人との交流から、「学習することによって人は成長し、新たなことにチャレンジする機会を与えられること」を実感する。
「人生に失敗はなく、すべてのことには意味があり導かれていく」を信念として、執筆活動を継続している。防衛省関連紙の英会話連載は、1994年1月から掲載を開始し、タモリのトリビアの泉に取り上げられ話題となる。月刊誌には英会話及び米軍情報を掲載し、今年で35年になる。学びによる成長を信念として、生涯学習を実践し、在隊中に放送大学大学院入学し、「防衛省・自衛隊の援護支援態勢についてー米・英・独・仏・韓国陸軍との比較―」で修士号を取得、優秀論文として認められ、それが縁で定年退官後、大規模大学本部キャリアセンターに再就職する。
修士論文で提案した教育の多様化と個人の尊重との考えから、選抜された学生に対してのキャリア教育、アカデミック・アドバイジングを通じて、キャリアセンターに新機軸の支援態勢を作り上げ、国家公務員総合職・地方上級職、公立学校教員合格率を引き上げ高く評価される。特に学生の個性を尊重した親身のアドバイスには、学部からの要求が高く、就職セミナーの講師、英語指導力を活かした公務員志望者TOEIC セミナーなどの講師を務めるなど、大学職員の域にとどまらぬ行動力と企画力で学生支援と教員と職員の協働に新たな方向性をしめした。
生涯教育の実践者として、2020年3月まで東京大学大学院教育研究科大学経営・政策コース博士課程後期に通学し、最年長学生として就学した。博士論文「米軍大学における高等教育制度について」(仮題)を鋭意執筆中である。
ワインをこよなく愛し、コレクターでもある。無農薬・有機栽培・天日干し玄米を中心に、アワ、ヒエ、キビ、黒米、ハト麦、そばを配合した玄米食を中心にした健康管理により、痛風及び高脂質血症を克服し、さらに米軍式のフィットネストレーニング(米陸軍のフィットネストレーナの有資格者)で筋力と体形を維持している。趣味はクラッシック音楽及びバレエ鑑賞。
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