先日終了したばかりの五輪、ご覧になりましたか?
私が特に覚えているのは、日本人女性で初めての金メダルを取ったボクシング。趣味が蛙というメダリストの人柄に惹かれたのは、私だけではないかもしれません。
さてこのボクシングというスポーツ、大昔は「ボクシング」とは呼ばなかったそうなんです。古代のボクシングでは、相手が死んでしまうほどの打ち合いもあったらしい古代競技の名前、今でも英語に残っています。
どれか分かりますか?
1. pugilism(プージリズム)
2. knuckle (ナックル)
3. fist(フィスト)
少し考えてみてください。
、、、
、、
、
どうでしょう。
答えは1. pugilism(プージリズム)です。
意味は、(古代競技)の拳闘という意味で、
2. knuckle (ナックル)は、指の関節
3. fist(フィスト)は、握った拳
という意味。
さて、今回のテーマはこの【pugilism】(古代競技)の拳闘で、単語DNAを見ていきたいと思います。
pugilism(プージリズム)最初の3文字pugにあるのが単語DNAです。昔々このDNAの意味は「叩く・突く」で、「ペウク」のように発音されていたそうです。
単語DNA「ペウク」、現在の英語では、ボクシング以外の所でもごく普通に表れます。
<pointと拳闘の接点>
まずpoint (ポイント/点・得点)のpoiの所に、このDNA「ペウク」が実は隠れています。「一点を突く、刺す」ような感じです。例えば
We were on the point of leaving.
(我々は出発寸前だった)
この文では、「出発という一点上にいる」として、出発寸前の状態が表されています。
また
Don’t point at people like that.
(そんな風に人を指すな)
この文ではpointが指で一点を指している感じです。
pointの先頭にap-がつくとappoint(アポイント/面会の予約を取る、役に任命する)になります。
ちょっと細かくなりますが、このap-は「~に向かって」と言う意味の単語DNA。予定表やリストに、予定や候補者の目印としてピンを刺すような感じです。
ap「~に向かって」+point 「一点を突き刺す」=予約、任命する
pointの先頭にdis-がつくとdisappoint(ディサポイント/失望させる)になります。dis-は「~から離れて」という意味です。決まったappointから離れる、と言う風に失望が表されています。例えば
I was disappointed at the news.
(私はその知らせにがっかりした)
などです。
<どうしてDNAの現れ方が変わるの?>
pointはpoi…にDNAが出てきましたが、今度はpunc-…にでてきます。これちょっと不思議ですよね。
まずpunctual(パンクチュアル/時間を守る)に、このDNAが出てきます。DNAはpunc-にあると考えられます。一点が決まる感じで「時間に正確」の意味が表されます。例えば
She is very punctual.
(彼女は時間にとても正確だ。)
日本語のタイヤの「パンク」は、英語でpuncture(パンクチャ/刺されて開いた穴、パンク)。やはり同じようにこのDNAを持つ単語です。例えば
I had a puncture.
((私の車が)パンクした。)
ボクシングの古い呼び名が、色々な英単語と意外な所で結びついていますね。
<学ぶ楽しさはなくならない>
さて今大変な時で、飲み会、旅行の機会など激減してしまいました。でも無くならないものもありますよね。水道・ガス・電気、また交通網もあることはある。
それに人間の心にある物、心で感じるような物はなくなりませんよね。今回お話したこともそうです。例えば単語DNAについて浮かぶイメージ、それを誰かがあなたの頭から奪えっこありません。
第二次大戦中、フランクル博士はユダヤ人収容所に共にいれられた人達をこう励ましたそうです。
「彼ら(ナチス)は、我々の家族・友人を奪えるかもしれない。財産も奪えよう。しかし我々の心の中にある美しい思い出だけは、決して奪えない」
大変な時代ですが、何かを学ぶ時に感じる楽しみは決してなくならないですよね。英語に楽しみを見つけながら学んで、世界が広がっていくと本当にいいですね。
See you later!
<追伸>
ちなみに、Boxing(ボクスィング/ボクシング) はオノマトペ。オノマトペとは音の感じで単語の意味を直接表すような言葉。例えば爆弾bomb (ボム/爆弾)は爆発の感じの「ボン!」が、そのまま単語に。ボクスィングも殴る時に「ボックス!」と聞こえそうかな?
他にも
spit(スピット)・・・唾を吐く音「プッ!」
cough(コフ/咳)・・・咳の「コンコン!」
laugh(ラーフ/笑う)・・・笑い声「はっはっは!」
giggle(ギグル)・・・「クスクス」笑い
tada(タダ―!)・・・「ジャジャーン!」と登場
などなど
私立学校に英語教師として勤務中、40代半ばに差し掛かったころ、荒れたクラスを立て直す策として、生徒に公言して英検1級に挑戦することを思い立つ。同様の挑戦を繰り返し、退職までに英検一級(検定連合会長賞)、TOEIC満点、国連英検SA級、フランス語一級、スペイン語一級(文科大臣賞)、ドイツ語一級、放送大学大学院修士号などの成果を得る。
アメリカで生徒への対応法を学ぶ為に研修(地銀の助成金)。最新の心理学に触れた。4都県での全発表、勤務校での教員への研修を英語で行う。現在も特別選抜クラスの授業を全て英語で行っている。「どうやって単語を覚えればいいですか?」という良くある質問に答える為、印欧祖語からの派生に基づく「生徒には見せたくない語源英単語集」を執筆中。完成間近。常日頃洋書の読破で様々な思考にふれているが、そうして得た発想の一つを生かして書いた論文がコロナ対策論文として最近入賞。賞品の牛肉に舌鼓をうっている。元英検面接委員