Swatchが英語に関わるようになり、もう40年以上。
そのうちの半分は学校での英語の勉強でした。中学校から大学院博士課程まで、英語は常に「しなければならない」科目。「しなければならない」というと、強制されているような感覚がありますよね。私自身も、英語は好きだけど、英語の授業は面倒だなという感じ。
さらに、英語は好きだけど、実は
中学校の時の英語は、毎日課される英単語テストで挫折!
高校の時は、大学受験の英語模擬テストが期待どおりに伸びず悩む。
大学の英語は、英語講師と相性が悪く、授業が苦痛だった。
と、Swatchの英語の学習人生は、コンプレックスとの戦い!防衛省に入職し、英語の道を歩むようになっても,コンプレックスがありました。
実は、私、アメリカ人コンプレックスだったのです!
アメリカ人へのコンプレックス
コンプレックスというのは,過去の自分のいやな経験の思い出などが複雑に絡み合ったマイナスな感情です。良く聞くのが,劣等感(意識)と言われるものです。
突然,頭の中にいやな感情が蘇ったり,不安な気持ちがこみ上げてきたりします。自分自身ではどうにもならない心の動きです。
私が,アメリカ人コンプレックスだと強く感じたのは,防衛省語学学校に入った頃。英語もわかり,会話もこなせるのだけれども,アメリカ人と会うといつも不安な気持ちになる。
なぜこんなにべらべらと話しかけてくるのだろう?挨拶の後は,立て板に水のように,ペラペラと話しかけてくる。数秒立つと,次第に耳から音声が消こえなくなっていく。
いわゆるパニック状態である。今考えてみると,耳が聞こえなくなったのではなく,自分から音を遮断していたのだと思う。
アメリカ人がペラペラと話しかけて,「ニコッ」っと,笑みを作るのも気に障る。自分が馬鹿にされているように思う。完全に被害妄想。
文章を書いていると,当時の感情が蘇ってくる。何十年も忘れていた感情。英語はとんとん拍子に話せるようになったというのではなく,苦悩とコンプレックスの連続。
当時はとにかくアメリカ人が嫌いだった。自分よりすべてのことが優れているような感覚。意味のない思い込み。そんな気持ちで悶々していたのを思い出した。
私の場合,幸運なことに,そのコンプレックスが,英語学習のモチベーションアップにつながった。不安を払拭するためには,勉強するしか方法がないと単純に考えたからだ。
そんなコンプレックスが,払拭される日が来た。きっかけは、米軍人との飲み会への参加。
少し酒に酔った私は,宴も終わりかけた頃,隣にいたアフリカ系アメリカ人に,こう口走ったのだった。
“Black is beautiful!” 本心だった。人種差別の意味は全くなかった。だが,座は白けた。
しばしの沈黙の後で,彼は言った。”One more Beer?”「ビールはどうだ!」
私は,彼についてバーのカウンターへ行き,彼の買ってくれたビールを受け取った。嬉しかった。ビール瓶を置き彼の手を両手でつかみ,なぜか握手ではなく手を揉んでいた。(笑)
その後,アメリカ人へのコンプレックスは,影を潜めた。私が恐れていたものは,英語でもアメリカ人でもなく,好きな相手に「コミュニケーションできない自分」だったのである。
今から思えば,悩むことでもない。アメリカ人だって,同じ人間じゃないかということだ。それが言葉にも,行動にもできなかった自己嫌悪だったのだと思う。
<英語コンプレックス>
やってもやっても、わからない。英語のことなのですが,この「やっても」は,文法とか英文解釈とかの問題ではありません。
英語の発音のことです。英語の辞書には,発音記号が記されています。英語が好きで,成績も良かったSwatchは,その暗号解読のような発音記号を読むのが大好き。
中学校の頃,教室で英語のテキストの音読をあてられた時のこと。ベートーベンがピアノ曲の「月光」を作曲した時の甘いエピソードを,音読した。
ベートーベンは,暗い細い道を歩いていた(今も英文を覚えています)というくだりで,私はベートーベンを「ベイトホウヴン」と自慢げに音読した。クラスに笑いが起こった。
先生からは,優しく「ベートーブン」と発音を矯正された。
納得がいかなかった。NHKのドイツ語講座では,それらしい発音を聞いたことがある。
betterは,アメリカ人は「べらー」だし,イギリス人は「ベタッ」と発音する。Autumnは,「オータム」だし,awesomeは,「オーサム」。綴りと発音,発音記号を実際の発音は違う。
英会話学校の授業で,アメリカ人のように発音していたら,「不正確な英語」と言われた。さらに,下品な英語と批判されたこともある。なぜだ!
好きなことをマイナス評価されると,落ち込みます。興味を持って勉強したことを,強く否定されると,自己嫌悪からコンプレックスを抱くことになります。
そのコンプレックスを克服したのは,やはりアメリカ軍人。彼は,Sの発音を「シュ」と発音する癖があった。Smileを「シュマイル」と発音する。
「シュマイル」と「スマイル」,どちらが正しい発音かを聞くと,「スマイル」と答えるが,会話では,いつも「シュマイル」だった。
言葉はその人の個性が出るもの。正しい発音=伝わりやすい,という単純な公式ではなく,要はどうやって道具として使うかが大事なことに,彼の発音から気が付きます。
アメリカ人との会話は,英語表現の自由さとともに,個性でもあるという考え方を教えてくれました。さらに,英語コンプレックを克服することができたのです。
<英語でコミュニケーションできない?>
英語コンプレックスで最大だったものは,通訳になり,定期的に会議通訳をこなしていた頃の英語のコミュニケーションの問題です。
日米会議の調整で打ち合わせをしているときのこと。自分の発言に怪訝な顔をする米軍通訳からある時,「馬鹿にするな」と言われたことがある。
詳しくは「英語ペラペラの落とし穴」
今から思えば,随分とひどい英語表現をしていて恥ずかしい。米軍人の通訳仲間は,友人でもあった。彼の親身のアドバイスによって、英語の本当の意味を知ることになった。
自分の失礼な,相手のことを考えない英語表現を,一つひとつ指摘し,丁寧な表現に直してくれたのである。感謝である。
英語にも相手を思いやる表現はたくさんある。
「分かるか?」
“Do you understand?”
と聞けば,失礼になる。要は日本語でも同じ。相手に対してどのくらい気を遣うことができるかが,良い表現となる。
アメリカ人は,直接的な表現を好むというのは,嘘である。教養の差によって,相手への配慮は強くなる。コミュニケーションの心は日本語も英語も同じ。
コンプレックスは生活でいろいろな面にでてきます。
英語のコンプレックス、アメリカ人へのコンプレックス、うまくいかないことへのコンプレックス。英語の学習は、言ってみればコンプレックスのデパート。
そんな中で劣等感にさいなまれる必要はありません!
また、それを改善しようと「チャレンジ精神」で必死に頑張る必要もありません。
そのままを受け入れていくことがコンプレックスと付き合うコツです。
受け入れて,自分が変わることで、仲間もできます。人生が楽しく豊かになりますよ。
執筆家・英語教育・生涯教育実践者
大学から防衛庁・自衛隊に入隊。10年間のサバイバル訓練から人間の生について考え、平和的な生き方を模索し離職を決断する。時を同じくして米国国費留学候補者に選考され、留学を決意。米国陸軍大学機関留学後、平和を構築するのは、戦いを挑むことではなく、平和を希求することから始まると考えなおす。多くの人との交流から、「学習することによって人は成長し、新たなことにチャレンジする機会を与えられること」を実感する。
「人生に失敗はなく、すべてのことには意味があり導かれていく」を信念として、執筆活動を継続している。防衛省関連紙の英会話連載は、1994年1月から掲載を開始し、タモリのトリビアの泉に取り上げられ話題となる。月刊誌には英会話及び米軍情報を掲載し、今年で35年になる。学びによる成長を信念として、生涯学習を実践し、在隊中に放送大学大学院入学し、「防衛省・自衛隊の援護支援態勢についてー米・英・独・仏・韓国陸軍との比較―」で修士号を取得、優秀論文として認められ、それが縁で定年退官後、大規模大学本部キャリアセンターに再就職する。
修士論文で提案した教育の多様化と個人の尊重との考えから、選抜された学生に対してのキャリア教育、アカデミック・アドバイジングを通じて、キャリアセンターに新機軸の支援態勢を作り上げ、国家公務員総合職・地方上級職、公立学校教員合格率を引き上げ高く評価される。特に学生の個性を尊重した親身のアドバイスには、学部からの要求が高く、就職セミナーの講師、英語指導力を活かした公務員志望者TOEIC セミナーなどの講師を務めるなど、大学職員の域にとどまらぬ行動力と企画力で学生支援と教員と職員の協働に新たな方向性をしめした。
生涯教育の実践者として、2020年3月まで東京大学大学院教育研究科大学経営・政策コース博士課程後期に通学し、最年長学生として就学した。博士論文「米軍大学における高等教育制度について」(仮題)を鋭意執筆中である。
ワインをこよなく愛し、コレクターでもある。無農薬・有機栽培・天日干し玄米を中心に、アワ、ヒエ、キビ、黒米、ハト麦、そばを配合した玄米食を中心にした健康管理により、痛風及び高脂質血症を克服し、さらに米軍式のフィットネストレーニング(米陸軍のフィットネストレーナの有資格者)で筋力と体形を維持している。趣味はクラッシック音楽及びバレエ鑑賞。
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