「お水の方はセルフでお願いします。」
先日入ったラーメン店の壁にあった貼り紙。
これ,あなたはどのような意味に受け取りましたか?
「そりゃ,水は自分で取れってことだよ!」
と叱られそうですが,
私は,(え,水商売をしている方は自分で配膳とかするってこと?)
と思っちゃったのです。
もちろん後ですぐに,
「あ,『お水(お冷)は,セルフサービスとなっています。』ということか!」とは気づきましたよ(笑)
「お水の方[ほう]は,・・・」という変な表現はともかくとして,
「セルフサービス」って言葉,もう日本語になっているなぁ,と思いませんか?
たぶん,その意味を知らない人はほとんどいないのではないでしょうか。
当然,その意味は「自分でやってね!」ということ。
もう説明する必要もないくらい浸透している言葉です。
そして,子どもから大人まで,誰もが経験したことのある「セルフ」といえば,
ファミレスなどの「ドリンクバー」ではないでしょうか。
感の良い人は,「ここでCozyは,ドリンクバーは和製英語だと言うんだろうな。」と思ったかもしれません。
ふふふ…正解です。
「お水はあちらのドリンクバーでセルフサービスとなっています。」
とか言われることもありますよね。
この「ドリンクバー」という言葉。
ただ単に
「『ドリンク(飲み物)があるバー(カウンター)』
という2つの意味を合わせた造語なんですよ。」というつもりはありません。
ドリンクバーと言う言葉はないのですが,実はみなさんもよく知っている○○バーとい言葉は英語にもあったのです。
―ドリンクバーはないのに,サラダバーはある?―
この「ドリンクバー」という言葉。
中古品を再利用のために販売するリサイクル・ショップという言葉や,赤ちゃん用のクルマをベビーカーと言ったりする「完全な和製英語」とはちょっと違うのです。
※(ちなみに英語でリサイクル・ショップは,「二番目の手に渡る」という意味でセカンドハンド・ストア[Secondhand store]と言ったり,「倹約」という意味の言葉を使って,スリフト・ショップ[thrift shop]と言ったりします。
また,ベビーカーは,ストローラー[stroller]と言います。)
それはどういうことか。
実は,ステーキレストランなどによくある「サラダバー」。
私も大好きなサラダバー。
これ,実際に海外のレストランで元々存在している言葉で,そのイメージもみなさんが思うようなサラダバーなのです。
でも,「ドリンクバー」という言葉は残念ながらありません。
それは,“drink” という言葉と,お酒を飲む “bar” ということが重なってしまうため,日本のようなソフトドリンクおかわり自由の意味での言葉としては誕生しなかったのです。
しかし,日本のとある有名ファミリーレストランチェーンが1992年に「ドリンクバー」を初導入する際,
「アメリカで『サラダおかわり自由』が「サラダバー」なら,ドリンク飲み放題は「ドリンクバー」でいいでしょ。」
と,この名前がついたの「かも」知れませんね。
―「ドリンクバー」って英語ではどう言うの?―
では,日本のような「ドリンクバー」を英語で言うなら,どういう言い方がいいのでしょうか。
“all-you-can-drink”(飲み放題)のように,「すべて飲むことができますよ」という意味で説明することもできます。
でもこれだと,「ドリンクを店員さんに注文して,持ってきてもらうスタイル」にも当てはまります。
そう,居酒屋さんの飲み放題などは,この表現がピッタリですね。
でも,ドリンクバーのように,自分で取りに行くスタイルという意味を込めるのであれば,
“Soda fountain”(Soda = 炭酸飲料,fountain = 噴水)
“Self-serve soda” (セルフサービスのソーダ)
という言い方があります。
ソーダの噴水って,すごい噴水を想像してしまいそうですが,これもう100年以上前からある古い言葉なんです。
「“soda”って炭酸飲料だけじゃん!」と突っ込まれそうですが,これにはソフトドリンク全般が含まれていると考えてくださいね。
また, “Drink Station”(ドリンク・ステーション)や, “Beverage Station” (ビバレッジ・ステーション),または “Drink Area” (ドリンク・エリア)などの言い方もあります。
個人的には,これらの言い方のほうが「ドリンクバー」よりもいいんじゃないかな?って思うのですが・・・みなさんはどうでしょう?
あ,おかわり「自由」だからと言って,くれぐれも, “free drinks”とは言わないでくださいね。
だって,「無料のドリンク」という意味になっちゃうから。
おかわり自由のドリンクバーも,お金は払う必要がありますので,
もしもfree(無料の)という単語を使う場合は,
“free refills”(おかわり無料)
と言うといいですよ。
たいてい,アメリカのハンバーガーチェーン店は,ドリンクは “Free refills”。
カップのサイズを言ってドリンクを注文すると,「空の」カップをくれますので,自分で好きなドリンクを入れて飲みます。
何杯飲んでも「おかわり無料」なので,帰るときも,またドリンクを入れてから店を後にすることが多いんです。
だったら,カップのサイズは1つに統一すればいいのに…とよく思ったものです(笑)
さて,冒頭の
「お水の方はセルフでお願いします。(意訳:お水はご自分でどうぞ)」ですが,
英語ではどのように言うのでしょうか。
“Please help yourself to some water.”
こんな感じでいかがでしょう。
ほとんどの飲食店で「お水が無料」の日本って,すごいですよね。
この記事書いていて,「当たり前」のような気になっていましたが,今度からはもう少し感謝の気持ちを持って飲もうと思います。
だって,本当に “Free water” なのに,テーブルに水を注ぎに来てくれるんですもの。
ほんと,すごいことだと思いません?
英語教材開発・制作者
米国留学から帰国後、幼児・児童英語教師を経て、中学・高校英語、受験英語、時事英語等多岐にわたる指導を行い英語教師経験を積む。また、ホテル勤務での実践英語経験を積んだり、カナダにて現地の子どもたちの英語教育にも携わりながら、CertTEYL(世界での児童英語講師認定コース)の認定を受ける。さらに、青山学院大学でTutoringの研究員としても活動。英語講師養成のeラーニングコースの日本での立ち上げメンバーとなる。「現場での経験を教材に活かしたい!」と、現在は英語教材開発会社にて日々教材開発に勤しむ。高校入試用のリスニングトレーニング教材(塾・学校向け)は累計10万部以上のベストセラーとなる。英語教材開発の傍ら、全国の英語教師への研修なども行う。また、土堂小学校(広島県尾道市)での英語指導や、初の民間校長として一躍時の人となった藤原校長(当時:杉並区立和田中学校)が手掛けた英語コースの指導に2年間携わるなど、英語教育に関する多様な分野で活躍。大の犬好きから、ホリスティックケア・カウンセラーなどペット関連の様々な資格を取得し、ペットライターとしても活動中。