ここは、オーストラリア大陸の真ん中、エアーズロック。
観光に来ていた私は、ここから当時住んでいた東海岸にあるケアンズまで、バスで帰ろうと思ったのだ。
ドライバー:「日本人はめったにいないね。みんな飛行機を使うよね。時間がかかるから。」
エアーズロックからケアンズまで、距離にすると約2700Km。これは、北海道から鹿児島までの距離とほぼ一緒。
普通は飛行機を使う。私もケアンズからここに来る時には飛行機を使った。飛行機でも約3時間弱かかった。
それを陸路で帰ろうというのだから、3日かかるのだ。
どうやら日本人でこのバスツアーを利用する人はほとんどいないらしい。特に見どころもなく、ただひたすら猛スピードで毎日900㎞も走るバスツアーは乗ってる方も過酷。
そして「時間の無駄」とも思える。
だけど、このバスツアー。めちゃくちゃ良かったんです!知られざるオーストラリア アウトバックの旅へ!
<アウトバックをひた走る>
オーストラリアのへそと呼ばれ、オーストラリア大陸の真ん中にある「エアーズロック」。先住民アボリジニの言葉では「ウルル」。「偉大な石」を意味します。
大きな山に見えますが、実は一つの大きな岩なんです。アボリジニの人たちの聖地とされ、現在は登る事も禁止されています。
私が行った時にはまだ登ることができたのですが、登るといっても、登山道のような物はなく登れそうな所に足をかけて登っていく感じ。
岩は丸みもあって滑りやすい。急な所は鎖が付けられていてそれを捕まえながら登るというなかなかハードな物でした。
エアーズロックは、世界的に有名な観光地。世界中からの観光客に、日本人のツアーや、バックパッカーなど日本人も溢れていた。
ところが、そこを離れた途端、日本人はいなくなった。というより、「人」がいなくなった。
バスの窓の外は、ただただ広い赤土の乾燥した大地が続く。これが、オーストラリアのアウトバックと呼ばれる所。
1日900㎞位走っているのに、すれ違う車はほんの数える程度。大きな町はなく、小さな集落らしき物がたまにある感じ。人間を見るのも、ガソリンスタンドの人や宿屋の人くらいのもの。
そんな事、日本ではもちろんだけど、海外でも他に経験した事はなかった。人工の物が極力少ない自然のままの場所。
途中、死んだまま放置され骨になっている牛か馬のような物もあった。放牧されていた物が迷ってそのまま死んでしまったのかもしれない。
朽ちて自然にかえっているのだ。本当の自然というものを見た気がした。
特別な観光名所があるわけでもない。ただ、2か所ほど、アボリジニの人たちが岩山に描いた壁画がかすかに残っている所があり、それを見学したりはした。
後は、ひたすらに走るだけ。
ただ走るだけなのだが、それがいいのだ。
もともと添乗員だった事もあり、長時間の乗り物移動も私は全く気にならない。窓の外の移り行く景色をぼーっと見ながら、色々と考えを巡らす時間が大好きなんです。
「過酷な環境でどうやって生活しているんだろう。」「ここに住む人たちは何を思ってここを選んだんだろう。」など、普段は考えない事を考えたり、思いついたり、色んな気づきがあるのです。
<昼はB・B・Q、夜はキャンプファイヤー>
さて、このバスツアーにはほぼ満席の40人位の人たちが乗っていました。最初、それぞれ名前とどこから来たかなどの自己紹介タイム。
やはり、オーストラリア国内よりも、ドイツやフランス、アメリカなど世界各国からの旅行者が多い。年代も学生のような若い人から50代くらいの人たちまで、幅広い参加メンバー。
そして、3日間、見る「人間」といえば、ほぼこのツアーメンバーに限られる。という訳で、自然に話もするようになる。
そんな人もいない、町もないような所で食事やトイレ、宿はどうするの?と思うでしょう。
トイレは、ところどころにあるガソリンスタンドを利用。それもない場所では、原っぱのような所に仮設のトイレが用意されていました。
次に、お昼。「ランチタイムです。」と言って降ろされた所は、小高い丘。
レストランどころか建物も何もない。(ここでランチ?)と思っていると、おもむろにドライバーさんがトランクから色々出し、組み立て始める。
ドライバーさん一人で40人近くのランチの準備は大変すぎる。みんなで手分けして準備をする。自分たちのランチを自分で準備するなんて、普通のツアーではない事だ。
連絡をしていたのだろう。ガスボンベを積んだ車もやってきて、大きなバーベキューセットができた。
何にもない丘の上にバーベキュー場が出来上がり。
バーベキューと言ってもソーセージやパテ、野菜を焼いて、パンに挟んで食べるというシンプルな物。でも、周りに何もないという圧倒的な開放感が最高のごちそうとなる。
宿は、1泊目は小さな集落にあるホテル。2泊目は、牧場農家さんで民泊。ドライバーさんによると、この辺りは町もないので、お願いして泊まらせてもらっているらしい。
部屋は4人~6人の相部屋。部屋割りもなく、「適当に分かれて」と言われ、(1人だしどうしよう…)と心配したが、ドイツ人の3人組の女の子に「一緒に泊まる?」と誘ってもらえ4人部屋で泊まる事に。
ツアーでは、誰とでもちょっと話しておくと、こういう時、声もかけてもらいやすい。
そこでの夕食も、自分たちで。外に釜戸のような所があり、そこで料理をする。手分けして野菜を切ったり、肉を煮込んだり。まるでキャンプをしているよう!
更に、食後はキャンプファイヤーを囲んでゲームタイム♪ キャンプファイヤーなんて、小学校の臨海学校以来!
というより、相部屋といい、食事といい、小学校の臨海学校そのもの!子供に戻った気分だ♪
ゲームのルールは、ドライバーさんがする通りに、真似ができればOKというシンプルなもの。ルール説明の後、ドライバーさんは右側の人からスプーンを受け取り、左側の人に渡す。
ただ隣の人にスプーンを渡す。というのを真似すればいいのだけれど、ドライバーさんが見て「OK」という人もいれば、「NO」と言われる人もいて、その違いが分からない。
「OK」と言われた人はそこで勝ち抜け。「NO」と言われた人は、「OK」がでるまで延々と順番が回ってくる。
スプーンを持ち直してみたり、姿勢を変えてみたり、みんな色々工夫をする。近くの人と相談したり、自然と一体感も出てくる。
どんどん減っていって、居残りみたいになってくるので、勝ちぬけた人達がヒントを教え始める。
“Be plite!(礼儀正しく!)”
そのヒントで私も分かった。スプーンの渡し方ではなくて、もらい方だったのだ!
受け取る時に“Thank you”を言えば良かったのだ!英語があまり分からない人でも、見よう見まねで楽しめるし、周りの参加者とも仲良くなれたゲーム。
旅が終盤に入ってくると、バスの車窓の景色も変化していった。
出発したエアーズロックは、砂漠。乾燥した赤土と岩山。たまに背の低い木がある程度。
そこから、徐々に緑が増え始め、木々も背が高くなってくる。そして、最終地ケアンズは、熱帯性気候。水と緑がこれでもかという位溢れる場所なのだ。
同じ国の中で、しかも3日間の間でこんなにも気候が変化するなんて。
映り行く景色を見ながら、昔、地理で習った、砂漠気候、ステップ気候や熱帯性気候の絵が浮かんだ。それを正に3日間で体感した感じだ。
ケアンズ到着前に立ち寄ったのは、亜熱帯植物が生い茂る森。
鳥や虫の声が響く中、遊歩道を歩いていくと見えたのは…水がとめどなく溢れる大きな滝!
しかもそこで泳ぐことができるのです♪
砂漠のカラッカラの乾いた所から、水と緑が豊かな場所へ。
水につかった瞬間「生き返った!帰ってきた~!水があるって、緑があるってこんなに幸せな事なんだ!」と心からそう思った。
3日間のオーストラリア アウトバックのバス旅は、何もないけどそれがいい、心に深く残る旅でした。
中学生時代から英語を話せるようになる事に憧れ、外国語短大へ進学。その後イギリスへ留学するも英語が話せず落ちこぼれの生徒に。英会話のトレーニング(カランメソッド)を受け英会話が上達。帰国後、夢だったツアーコンダクターになる。渡航国約35カ国 年間200日以上を海外で過ごす。その後オーストラリアにワーキングホリデーで渡り、オーストラリアにあるハミルトン島のリゾート会社に就職。その後日本に帰国し、京都のホテルやゲストハウスなどでの経験を経て、地元宮崎にUターン。現在は地元宮崎で、英会話教室及び、単位制、通信制の高校で英会話を教えている。
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