英語で “season” と聞くと
「春・夏・秋・冬」の「季節」…
そう思いますよね?
昔,ホストマザーの持っていたレシピ集を何気なく読んでいたことがあったんです。
その中で “season the chicken” というフレーズがありました。
私は,
「チキンを…季節にする??」
“season the chicken…”?
「ポピーザぱフォーマー」みたいな感じ?
と,変なことを思いながら調べてみたんですね。
実はこの単語,英語ではちょっと意外な意味でも使われているのです。
“season” に隠されたもう一つの意味,あなたはわかりますか?
―料理と “season”の関係!?―
英語の “season” といえば,「春・夏・秋・冬」の「季節」ですよね。
実際,中学の教科書でも “season” は「季節」という意味で掲載されていますし,使い方も
“My favorite season is spring.”
(私の好きな季節は春です)
のように,「季節」として使われています。
ところがこの “season”,英語ではもうひとつ,まったく違う意味を持っているのをご存じでしょうか?
昔,家のリビングで あるレシピ本を読んでいたときのこと。
鶏肉料理の手順にこう書かれていました。
“Season the chicken with salt and pepper.”
私は,「季節…チキンを季節に…?」とちょっと混乱。
そこでお母さんに聞いてみたんです。
“What does this ‘season’ mean?”
(この “season” の意味って何?)
と。
“You know, ‘season’ can also mean to add flavor when cooking.”
( あのね,“season”には料理するときに「味をつける」という意味もあるんだよ)
と教えてくれたのです。
つまり,
“Season the chicken with salt and pepper.”は,
「チキンに塩とコショウで味をつけなさい」
ということだったんですね。
“season” に「味をつける」という意味があるなんて,学校ではあまり教わらないですよね。
それなのにネイティブスピーカーにとっては,極めて普通の使い方。
でも考えてみたら,私たちもよく調味料のことを
「シーズニング」
って言うじゃないですか。
“season”に “ing”をつけた名詞の“seasoning”。
カタカナで無意識に使っていましたね(笑)
そう考えると, “season”=「味をつける」と覚えやすい気がしませんか。
―なぜ “season”にそんな意味が?―
でも,なんで “season” が「味をつける」って意味になるのでしょうか。
語源を調べてみると,“season” はラテン語の satio(種をまくこと)から来ているそう。
もともとは,「種をまくのにちょうどいい時期」という意味だったんですね。
作物って,タイミングを間違えるとうまく育ちません。
つまり,“season” には
「そのものにとってちょうどいい時期」
というニュアンスがあるのです。
たとえば,土の状態を整えたり,水や肥料を加えたり。
そのように整えながら,
「今,このタイミングが一番いい」
という状態に仕上げていきますよね。
そうやって“整える”という考え方が,
いつしか料理の世界にも広がっていったのだと考えられるそうなのです。
食材に塩やスパイスをふりかけて,ちょうどいい感じに仕上げる——
それが “season” のもう一つの意味,
「味をつける」
なんですね。
“season the soup with herbs”
(ハーブでスープに味をつける)
“season the fish lightly”
(魚に軽く味をつける)
という感じで使うことができます。
“season” って「季節」というイメージばかりが先行してしまいますが,
「味をつける」
という意味もあったなんて,面白いですよね。
―ベテランの “season”?―
“season”からさらに広がって,“seasoned” という形容詞になると,なんと
「経験を積んだ」
「ベテランの」
という意味になるんです。
“He is a seasoned traveler.“
(彼は旅慣れた旅行者だ)
“My mother is a seasoned teacher.“
(私の母や経験豊かな教師である)
のように使います。
でも,なんで “season”が「経験を積んだ」「ベテランの」になるのでしょうか。
これは “season”に「味をつける」という意味があることがわかれば,結構覚えやすいんです。
“season”は,「味をつける」でしたよね。
そして “seasoned”の形容詞になると「味付けされた」という意味になります。
人に対して使う場合,
「味付けされた人」,「味がついた人」となり,
いろんな経験を積んで,人間として「味をつけた」,
つまり「一人前になった」「仕上がった」というニュアンスなんです。
料理だけでなく人の能力にも“味”があると考えるところが,なんとも英語らしい発想です。
ちなみに,日本語でよく耳にする
「ドラマのシーズン1」や「ホリデーシーズン」の “season” も,同じ語です。
この場合は
「まとまりある一定の期間」
という意味で使われています。
こうして見ていくと,英語の “season” という言葉は,「季節」だけでなく
「タイミング」
「味付け」
「仕上げ」
「経験を積んだ」
など,さまざまな意味を持っていることがわかります。
日本語では別々の言葉で表現されるこれらの言葉が,英語ではひとつの単語 “season” にギュッと詰め込んでいる。
ここに言葉の面白さ,そして言語文化の違いがあるように感じます。
英語の “season”——,
単なる「季節」ではなく,
「ちょうどよく仕上がった状態」
を表す奥深い言葉。
料理にちょっとスパイスを加えるとグッとおいしくなるように,
私たちの人生や学びにも,
「何かを “season”するちょうどよい時期」
があるのかもしれません。
私の場合,その時期っていつなんだろう。
もうそろそろ来て欲しいなぁ。
じゃないと動けなくなっちゃう(笑)
ということで,あなたの“season”についても考えてみてくださいね。
それではまた来週〜,
See you next week 〜♬
英語教材開発・制作者
米国留学から帰国後、幼児・児童英語教師を経て、中学・高校英語、受験英語、時事英語等多岐にわたる指導を行い英語教師経験を積む。また、ホテル勤務での実践英語経験を積んだり、カナダにて現地の子どもたちの英語教育にも携わりながら、CertTEYL(世界での児童英語講師認定コース)の認定を受ける。さらに、青山学院大学でTutoringの研究員としても活動。英語講師養成のeラーニングコースの日本での立ち上げメンバーとなる。「現場での経験を教材に活かしたい!」と、現在は英語教材開発会社にて日々教材開発に勤しむ。高校入試用のリスニングトレーニング教材(塾・学校向け)は累計10万部以上のベストセラーとなる。英語教材開発の傍ら、全国の英語教師への研修なども行う。また、土堂小学校(広島県尾道市)での英語指導や、初の民間校長として一躍時の人となった藤原校長(当時:杉並区立和田中学校)が手掛けた英語コースの指導に2年間携わるなど、英語教育に関する多様な分野で活躍。大の犬好きから、ホリスティックケア・カウンセラーなどペット関連の様々な資格を取得し、ペットライターとしても活動中。