Swatchが、英語のコラムに作家としてデビューしたのが、1994年1月、今から30年以上前のことです。
その記念すべき初稿で取り上げたのが、“Let’s start!”「さあ、始めましょう」でした。編集担当者は、誰でも覚えられて使うことができる簡単な英会話の記事を書いて欲しいでした。
初回にふさわしく始めるというテーマで誰でも知っている英語のフレーズ“Let’s go!”を思い出し、“Let’s start!”「さあ、始めよう」にしました。
その頃の英語の学習事情は、インターネットもなく、教材も抱負ではありませんでした。英語教材と言えば、文法書や大学受験英語のテキストがメインでした。英会話の本は高価で、少なかったように思います。
インターネットの時代になって、英語の学習方法も多様化しました。同時に、英語会話教材に書かれている英会話の内容に誤解された部分が多いことをネイティヴから指摘されるようになりました。
Swatchの初稿である“Let’s start!”にも、色々な意味がふくまれているのです。
<Let’s start!って、相手を急かす表現?>
Swatchは、アメリカ人に何かを促すときに“Let’s~”の表現を良く使います。
“Let’s go!”(いきましょう)“Let’s start!”(始めましょう),“Let’s try it ”(やってみましょう)といった感じ。
米軍人との会議で通訳では、そういった“Let’s ~”の表現は非常に役に立ちました。それは「一緒にやりましょう」と相手に呼びかける表現だからです。
何かをしてもらうときに、“Would you ~”と相手に頼むより、「一緒にやろう」といえば、確実に行動に結びつけることがでました。
その感覚は、今でも役に立つと思っています。アメリカ人と協同して働くときには、「チームワークでやりましょう」という感覚で伝わります。
ただ、少し注意しなければならないことが二つあります。
まず、“start”の持つ本来の意味です。
startは、停止している状態から、人や物、機会を動かすことを意味します。パソコンの起動ボタンを押したときの反応に似ています。
起動ボタン(スタートボタン)を押すと、今まで停止していたパソコンの電源が入り、プログラムが動き出します。起動したパソコンは、電源を切る(stop)まで動き続けます。
startは、停止している状態から、動いている状態を継続するという意味になります。
Swatchの英会話の“Let’s start!”は、中学・高校以来、勉強していなかった英語、つまり、英語の勉強が停止していた状態から、スイッチを入れて再会しましょうという意味だったのです。
さらに、スイッチが入ったならば、英語学習を継続させましょうということになります。そのお手伝いを、Swatchの英会話コラムでお手伝いするという趣旨でした。
もう一つ、注意することは、“Let’s~”の持っている本来の意味です。アメリカ人がそれを聞いたときにどのように感じるのかという語感のことです。
“Let’s start!”とアメリカ人に言った時に、彼らはどのように感じるのか。それは、「すぐにやりましょう」という感じになるのです。
すぐに物事にとりかかり、それを継続してやりましょうということになります。言ってみれば、相手をせかせることになり、また、継続する努力を強要することを意味します。
高飛車な言い方です。
Swatchが、英語の通訳で良く使うフレーズであるといったのは、そんな効果を期待していたからです。
仕事の面では、少々、きつい表現であっても、その意図がつたわり、一緒に働いてくれれば目的は達成します。
ただ、私生活の面で、“Let’s~”を「~しましょうね」という本来の意味とはずれる感覚で使っていると、アメリカ人には、「せっかちで、高慢なやつ」と感じられたかもしれません。
恐らく、私生活の面でも多用していたので、アメリカ人の友人からは、Swatchはかなり自己中の人間だと思われていたのだと反省しています。
<Let’get started!でぼちぼち行きましょう>
そんな傲慢で高飛車な感じがする表現ではなく、アメリカ人が良く使う表現があります。
“Let’s get started!”です。
start がget startedに変化しただけじゃないかと思われるかもしれません。
ところがこの表現は、非常に深い表現なのです。ちょっとした文法の違いなのですが、フレーズの相手に与えるニュアンスが大きく変わってきます。
“Let’s start!”の「今すぐやろう」という少し時間的にせかした感覚から、「すぐにやる」という切迫感がなくなる感じです。
“Let’s get started!”は、「ぼちぼちやりましょう」という感覚に代わるのです。なんとなく、場が和みそうですね。強制的にやらされる感がなくなります。
こなれた日本語で言うならば、「じゃあ、始めましょうか」となります。その「じゃあ」という「ひと呼吸おいた感覚」が伝わります。日本語の「じゃあ」にあたる英語はありませんので、非常に便利です。
そういったリラックスした感じに、一緒に始めて、チームワークで継続していくという感覚が伝わりますので、会議や計画を仕切っていく立場の時には非常に役に立つ表現になります。
ちょっとした表現の違いですが、アメリカ人が持っている語感を共用することで、コミュニケーションが非常に楽しなります。是非、使ってみてください。
<Let’s begin!は計画的にはじめる>
同じく始めるという英単語で“begin”があります。startと beginは、中学校英語で出てくる単語ですので、非常に重要ですが、その違いを知っている人は少ないかもしれません。
簡単にその違いを説明します。まず、startは、前述したように、「停止している状態から、起動、そのまま継続すること」です。
今までしてこなかったことを開始し、それを続けて実行していくときに使います。例えば、会社を興して経営していくときなどはピッタリです。
beginは、まずstartよりもフォーマルな感じがすることがポイントです。
beginは、「始める」という時点を強調する言葉になります。会議を始めるという場合、
“Let’s begin the meeting”
(会議を始めます)
と表現します。
また、事前に準備をして、段階を経てその時点に至るという意味がありますので、startのように何もないところから急に始まるのではなく、始まるまでに準備期間があると考えると良いでしょう。
“The lesson began at 10 O’clock AM”
(その授業は、午前10時に始まった)
という表現には、10時前から教室に生徒があつまり準備をして10時に、授業は始まったという感じになります。
始まったことに重点が置かれますので、その後始まったことが継続されたかどうかは意味が含まれていません。Startは、始まって継続することに意味があります。
会社を始めるときに、startは会社を作り、その事業が継続することを意味し、beginは会社が始まったことは明確ですが、継続についてはふれません。会社の設立については、継続することを前提にしたstartを使います。
30年前の自分のコラムを読んでいると、表面的な説明になっており、目的が誰でも使える英会話のフレーズを紹介するであっても、少々忸怩たるところがあります。
また、英会話のとらえ方が、時代とともに大きく変わったことを、改めて感じました。現在は、インターネットが普及し、様々な英会話のプログラムが楽しめるようになりました。
新しい英会話の学び方が、あなたに飛躍的な英会話の上達をもたらすかもしれません。
今までの英会話学習を、
“Let’s start new English Conversation learning!”
(あたらしい英会話の学習を始めて、継続してみませんか)
執筆家・英語教育・生涯教育実践者
大学から防衛庁・自衛隊に入隊。10年間のサバイバル訓練から人間の生について考え、平和的な生き方を模索し離職を決断する。時を同じくして米国国費留学候補者に選考され、留学を決意。米国陸軍大学機関留学後、平和を構築するのは、戦いを挑むことではなく、平和を希求することから始まると考えなおす。多くの人との交流から、「学習することによって人は成長し、新たなことにチャレンジする機会を与えられること」を実感する。
「人生に失敗はなく、すべてのことには意味があり導かれていく」を信念として、執筆活動を継続している。防衛省関連紙の英会話連載は、1994年1月から掲載を開始し、タモリのトリビアの泉に取り上げられ話題となる。月刊誌には英会話及び米軍情報を掲載し、今年で35年になる。学びによる成長を信念として、生涯学習を実践し、在隊中に放送大学大学院入学し、「防衛省・自衛隊の援護支援態勢についてー米・英・独・仏・韓国陸軍との比較―」で修士号を取得、優秀論文として認められ、それが縁で定年退官後、大規模大学本部キャリアセンターに再就職する。
修士論文で提案した教育の多様化と個人の尊重との考えから、選抜された学生に対してのキャリア教育、アカデミック・アドバイジングを通じて、キャリアセンターに新機軸の支援態勢を作り上げ、国家公務員総合職・地方上級職、公立学校教員合格率を引き上げ高く評価される。特に学生の個性を尊重した親身のアドバイスには、学部からの要求が高く、就職セミナーの講師、英語指導力を活かした公務員志望者TOEIC セミナーなどの講師を務めるなど、大学職員の域にとどまらぬ行動力と企画力で学生支援と教員と職員の協働に新たな方向性をしめした。
生涯教育の実践者として、2020年3月まで東京大学大学院教育研究科大学経営・政策コース博士課程後期に通学し、最年長学生として就学した。博士論文「米軍大学における高等教育制度について」(仮題)を鋭意執筆中である。
ワインをこよなく愛し、コレクターでもある。無農薬・有機栽培・天日干し玄米を中心に、アワ、ヒエ、キビ、黒米、ハト麦、そばを配合した玄米食を中心にした健康管理により、痛風及び高脂質血症を克服し、さらに米軍式のフィットネストレーニング(米陸軍のフィットネストレーナの有資格者)で筋力と体形を維持している。趣味はクラッシック音楽及びバレエ鑑賞。
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