教養のあるアメリカ人は、議論の仕方にある法則性を持っています。
それは大事なことは、二度繰り返すということ。
二度同じことを言うときには、同じ表現を使います。
これは大学でのスピーチ講座やコミュニケーションの授業で教えられるテクニックです。
法則を知っておくと、会話の途中で、「ここが大事なことなんだ!」という感触がつかめます。
表現テクニックのほかに、前置詞の変化で、微妙なニュアンスを伝えようとすることもあります。
例えば、I know about himと I know of himなどです。
今回は、前置詞の違いで、微妙な表現ができるということを、お話ししたいと思います。
<I know himって、彼に会ったことがあることを意味する>
質問です。“Do you know him?”と聞かれたときに、“I know him”と答えました。
さて、彼の何を知っているのでしょうか。
1. 彼は会ったこともあり、どういう人間か知っている。
2. 会ったことはないが、彼の存在は知っている。
3. 友人ではないが、彼について多くを知っている。
日本人の間違いやすい表現です。
答は(1)彼は会ったことがあり、どういう人間か知っている、になります。
ポイントは、「面識があり」、彼のことを知っているということです。
必ずしも友人とは言えませんが、まあ、知り合いという範囲はクリアーしています。
“Do you know him?”とアメリカ人に問われて、“Yes, I know him”と答えたら、「会ったことがあるし、知り合いだよ」というメッセージがアメリカ人に伝わります。
ビジネスであれば、そこから仲立ちをする話になるか、プライベートなら紹介する話しに発展するかもしれません。
面識がある、人となりを一応知っているという関係が基本です。それ以上の関係であれば、
“I know him well, We are friends”
「良く知っているよ。友達なんだ」
となります。
Do you know him? は、日本語にすると「彼は知りあいですか」ということなんです。
<I know of himって、面識はないが、彼の存在を知っているということ>
次に、“I know of him”の表現です。
knowの後に ofが付いています。ofが付くとどういった意味になるのでしょうか。
まずは、例文から推測してみましょう。
“Do you know A.”
「彼は知り合いですか」
“I know of A, but I’ve never met him before.”
「Aの存在は知っているけど、面識がない」
ポイントは、一度も会ったことがないということ。しかし、Aの存在は知っている。彼の名前とか顔は知っていることを意味します。
このAさんは、きっと周りでも有名な人なのでしょう。職場や学校で誰でもが知っている存在かもしれません。役員やリーダーで顔と名前が売れている人だから、名前は知っている。
ofという前置詞には、その存在を確定するという意味が含まれているのです。
動詞よって、knowであれば、「存在を知っている」になり、 think of him 「存在を考えている、彼のことを考えている、彼のことを強く思っている」といった意味になります。
存在自体を知っているだけで、内容は深くないということです。卑近な例では、芸能人で名前は聞いたことがあるという感じのですね。
有名な歌手であることは知っているけど、どんなヒット曲を持っている歌手かは知らない。
歌手の名前を聞いたことはありますという感じですね。
<I know about himって、面識はないが彼のことについて色々と知っている>
I know about himは、彼に会ったことはないけれども、彼の人となりや周辺のことをいろいろと知っていますという意味になります。
“Have you ever met him before?”
「彼と会ったことがありますか?」
“I’ve never talked to him before. But I know about him a lot”
「彼と話したことはないけど、彼のことは良く知っているよ」
“Because Hanako always tells me about him”
「花子がいつも彼のことを話してくれるからね」
ポイントは、会ったことがないが、彼のことをいろいろと知っているという状況です。特に友人とか好きだとか言う関係ではないが、彼の情報があつまる原因があり、かなりの情報を持っている。
この場合、花子という友人が彼のことを会うたびに話してくれるという情報提供があったから、彼のことを良く知るようになったということですね。
ここでもaboutという前置詞が意味を付け加えています。aboutは、その人や物のまわりの事情や情報全体を包み込むような感じで作用します。
その人が発信している情報のすべてに関連します。その中の多くを情報として持っているという感じです。彼はこんな感じの人ですということが説明できる情報をもっている(知っている)。
それは、彼が発信した情報を読んだり、彼の友達から何回か彼のことを聞かされていたりと、彼の情報が自分に届き、それを記憶しているという感じですね。
アメリカ人は、動詞にaboutや ofという前置詞をつけて、微妙な表現を使って情報を伝達しようとしています。日本人が見落としがちなところです。
前置詞の持つニュアンスを頭に入れておけば、そういった微妙な表現を理解でき、さらに的確に表現でき、コミュニケーション力が上がります。
執筆家・英語教育・生涯教育実践者
大学から防衛庁・自衛隊に入隊。10年間のサバイバル訓練から人間の生について考え、平和的な生き方を模索し離職を決断する。時を同じくして米国国費留学候補者に選考され、留学を決意。米国陸軍大学機関留学後、平和を構築するのは、戦いを挑むことではなく、平和を希求することから始まると考えなおす。多くの人との交流から、「学習することによって人は成長し、新たなことにチャレンジする機会を与えられること」を実感する。
「人生に失敗はなく、すべてのことには意味があり導かれていく」を信念として、執筆活動を継続している。防衛省関連紙の英会話連載は、1994年1月から掲載を開始し、タモリのトリビアの泉に取り上げられ話題となる。月刊誌には英会話及び米軍情報を掲載し、今年で35年になる。学びによる成長を信念として、生涯学習を実践し、在隊中に放送大学大学院入学し、「防衛省・自衛隊の援護支援態勢についてー米・英・独・仏・韓国陸軍との比較―」で修士号を取得、優秀論文として認められ、それが縁で定年退官後、大規模大学本部キャリアセンターに再就職する。
修士論文で提案した教育の多様化と個人の尊重との考えから、選抜された学生に対してのキャリア教育、アカデミック・アドバイジングを通じて、キャリアセンターに新機軸の支援態勢を作り上げ、国家公務員総合職・地方上級職、公立学校教員合格率を引き上げ高く評価される。特に学生の個性を尊重した親身のアドバイスには、学部からの要求が高く、就職セミナーの講師、英語指導力を活かした公務員志望者TOEIC セミナーなどの講師を務めるなど、大学職員の域にとどまらぬ行動力と企画力で学生支援と教員と職員の協働に新たな方向性をしめした。
生涯教育の実践者として、2020年3月まで東京大学大学院教育研究科大学経営・政策コース博士課程後期に通学し、最年長学生として就学した。博士論文「米軍大学における高等教育制度について」(仮題)を鋭意執筆中である。
ワインをこよなく愛し、コレクターでもある。無農薬・有機栽培・天日干し玄米を中心に、アワ、ヒエ、キビ、黒米、ハト麦、そばを配合した玄米食を中心にした健康管理により、痛風及び高脂質血症を克服し、さらに米軍式のフィットネストレーニング(米陸軍のフィットネストレーナの有資格者)で筋力と体形を維持している。趣味はクラッシック音楽及びバレエ鑑賞。
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