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誰でも悪党になりうる“悪の凡庸さ”

World Lifeな生活
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Hi!
火曜のJiroです。

お昼の情報番組を見ていたら「高市新首相の支持率71%」という数字が目に飛び込んできました。
初の女性首相への高い期待感かもしれませんが、この数字に私は一瞬違和感を覚えました。

というのも、ドイツの女流政治哲学者ハンナ・アーレントの名著 『Eichmann in Jerusalem(エルサレムのアイヒマン) を思い出したんです。

「悪の凡庸さ」とは何か

ナチス・ドイツが第二次世界大戦中、約450万~600万人のユダヤ人を殺害した際の実行の中心人物とされるアイヒマンについての話から。

アイヒマンは戦後潜伏先の南米で発見されイスラエルで裁かれることになり、
女流政治哲学者ハンナ・アーレントは、この裁判を傍聴し『エルサレムのアイヒマン』を書きました。

最も強く私の頭に残ったのは、アーレントが描いたアイヒマン像。
あれだけの大量殺人犯(の一人)です。きっと残忍狂暴狂った怪物だったに違いないと思っていたのですが、

彼を診た精神科医達は口を揃えて

「ごく普通の人間」

と診断したと書かれていました。

“….psychiatrists had certified him as ‘normal’… ’”

アーレントは続けてこう記します。
“The killer looked pretty much like you and me.”
(殺人者は、ほぼあなたや私だった)

これは戦後のナチス戦犯に対し、多くの人々が抱いた印象そのもの
――「殺人者達は、見た目はあなたや私と大して変わらない」。
つまり、彼らは特別な怪物ではなく、どこにでもいる「普通の人間」だったのです。

このことをアーレントは「the banality of evil(悪の凡庸さ)」と名づけました。

「普通の人間」が巨大な悪に加担する

私達は、悪事を働くのは恐ろしい人物や、冷酷な天才だと思い込みがちなようです。

映画でも、たとえば『ミッション・インポッシブル』の悪役は、残虐でカリスマ的な人物として描かれたり、あるいはオーム真理教ではリーダー達は洗脳され異常な精神状態になったと聞きます。

でも現実の「悪」は、もっと日常的で、静かに事務的に進行する、それが恐ろしい点だ…とアーレントは語っているような気がします。

もし「悪人」が特別な存在でないなら「誰でも悪に加担しうる」ということ。 つまり、私たち自身もその危うさの中にいるわけですよね。

でもこれは、アイヒマンが無実だ、とか言う意味とは違います。犯罪は犯罪です、念の為。

あなたはここで、普通の人が悪を犯すだなんて、と何だか暗い気持ちになりますか。確かにそれもそうかも。

でもアーレントはそこで終わりません。

希望のメッセージも記されています。

「全員を黙らせることはできない」

アーレントの本でもう一つの印象的だった箇所は、独裁への抵抗の可能性を述べる所。

…どんな独裁も、全反対者を「沈黙の闇」に葬ることはできない。

One man will always be left alive to tell the story.
(必ず誰か一人は生き残り真実を語る。)

この一節に、私はとても強い希望を感じました。

ほとんどの人が恐怖に屈するとしても「それでも沈黙しない人」が必ずいる ..一人でもいいから声を上げよ――

アーレントはそう語りかけているように思えます。

「抵抗」したヨーロッパの国々

アーレントは、ただ抽象的に抵抗の可能性を語るだけではなく、デンマークとイタリアで、知恵と工夫でユダヤ人犠牲者を減らすことができた事情も具体的に説明します。

デンマーク:官僚達がナチスの命令を遅らせたり、手続きをいい加減にしたり、情報を漏らし、結果的に8,000人中7,500人のユダヤ人が国外脱出できた。

イタリア:政府職員や市民の同様の非暴力的な抵抗により、約7万人いたユダヤ人の9割が戦後まで生き延びた。

「小さな抵抗」が「大きな生存」につながった例ですよね。

支持率71%への違和感

冒頭の話に戻りましょう。
私は何も、高市首相が独裁者だとか言っているのではありません。でも支持率が余りに高かったので、同じ支持率が高かったと言われるナチスドイツを思い出したんです。

アーレントが言うように、普通のヒトが悪を犯しうるなら、あらゆる政治家の行動は警戒すべき気がします。

英語で言うなら

You can’t be careful enough about enormous crimes politicians are capable of committing.

独裁者になるのに「悪人らしさ」はいりません。むしろ、感じのよさや常識人ぶりが、最大の武器になることさえあります。

繰り返しになりますが、恐ろしい独裁制の可能性には注意しても注意し過ぎないと思うのは私だけでしょうか。

英書が教えてくれること

今回あなたにお話しした『エルサレムのアイヒマン』は、歴史の記録に留まりまラズ、「独裁の悪」への警鐘や強烈な希望の両方を読み取れる本だと思います。

英語の本を読むことは、世界の考え方に直接触れることでもあります。
今回あなたにお伝えしたのも、やはり一冊の英書。
あなたも、英語を学びながら、「世界の思考」に触れられるようになると良いですね。

See you soon,
Jiro

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