Swatchが、防衛省語学学校で英語コースの主任教官をしていた頃、取り返しのつかないミスをしたことがあります。
陸上自衛隊と米海兵隊との間で、相互交流プログラムを立ち上げ、海兵隊員が語学学校を訪問してきたときのことです。
4か月前の同じイベントでは大成功をおさめ、今回も、最初から盛り上がっていくぞ!と気合を入れていました。
いよいよ開会の挨拶です。今回の挨拶は、新着任の代表が登壇しました。海兵隊員と陸自の隊員を前にして、
“Soldiers!Welcome to our school!”
と挨拶が始まった途端、海兵隊員全員が何も反応しなくなったのです。
<何故、反応がないのか?>
海兵隊員が、自衛隊駐屯地に研修にやってきました。教室には、自衛官40名と海兵隊30名が隣同士に座り、イベント開催の挨拶を待っていました。代表が英語のスピーチを始めた途端、今まで真剣に聞こうとしていた海兵隊員の態度が、硬化しました。
絵に描いたように、固まったのです。呼ばれた際に、鼓舞するための「ウラア~」という掛け声も全くありません。
代表に敬意を表して、熱心に聞き入っている態度でもなく、どことなく白けた雰囲気です。
沖縄の海兵隊司令部で勤務していたSwatchにとって、意外な光景でした。これほどまでに、ある言葉にこだわりがあるのかと。そのこだわりのある言葉とは、“Marine”。
学校の代表が行った挨拶の冒頭は、日本語では
「兵士の皆さん、学校へようこそいらっしゃいました」
でした。
しかし英語では、
“Soldiers!Welcome to our school!”
でした。
この“Soldiers”、という呼びかけが問題だったのです。
海兵隊員は、“Marines”です。「なぜ、俺たちが米陸軍兵士と間違わなければならないのだ!」という無言の反発だったのです。
担当教官であったSwatchは、上司への情報提供が十分できず、とんでもない失敗をしてしまいました。
その時、海兵隊のトップと目が合いました。「お前なら、どうにかできるだろう?」という彼の波動が伝わってきました。
その瞬間、Satchは叫びました!
“Top! I know you all marines are uncomfortable!”
(先任よ。海兵隊員は全員居心地が悪いだろう!)
“You should be addressed as marines!”
(お前たちは、マリーンと呼ばれるべきだよな!)
“Marines! You are truly welcomed , Urahhha!”
(米海兵隊員諸君!心から歓迎するぜ)
すると、海兵隊員全員が一斉に姿勢を正して、「ウラアアア~」と叫んだのです。
上司も自衛官もびっくりしていましたが、教室にいたすべての者が、海兵隊員のプライドを確認した瞬間でした。
<米軍の軍種って何❓>
米軍は、陸軍,海軍,空軍,海兵隊,宇宙軍,沿岸警備隊の6軍種あります。
沿岸警備隊は,国防総省の管轄ではないので,国防総省の軍という意味では,沿岸警備隊を除いた5軍種を指します。
そして、それぞれの軍種の軍人は公式な呼び名があり,これが一番大切な情報だったのです。
陸軍 soldier / ソルジャー
海軍 sailor / セイラー
空軍 airman / エアマン
海兵隊 marine / マリーン
宇宙軍 guardian / ガーディアン
なるほど!だったら,soldiersは、陸軍関係者に限定されたわけですか?
その通り!
soldiers ! と呼びかけた場合、陸軍の皆さん!と言っているので、海兵隊員への挨拶としては,失礼ですよね。
教室が静まり返えった理由は、軍種を間違えられたから、つまり、自分たちの立場を無視されたと考えたからです。
米軍人は,軍種で呼ばれることを,誇りに思っているので、そこのところの理解が、非常に重要になってきます。日本人の、米軍なら皆同じ、という考えはありません。
<相手の立場を知ること>
今まで述べたことは、軍種の違いを認識し、それぞれの兵士の立場を尊重することで、正しい認識が始まるということでした。
相手との違いの認識は、日本的な考えでは、あまり重要ではないと考えられてきたところがあります。その場に合っているのか、突出していないか、違和感がないかということが、判断基準になっています。空気を読み、その空気に合わせる。
そこには、皆同じような考えを持ち、行動をすることが良いことであるという考え方があります。
人より目立たないことで、全体の均衡をとっていくという考えは、農業中心の日本では当たり前のことでした。
戦後欧米から個人主義の考え方が入ってきて、当初は、個人主義は冷たいとか、日本には合わないとか言われていましたが、ITの技術の発達とともに、急速に、自分自身の人生を楽しむという感覚に変わっていきました。
好きなことは、とことん追求できるという風潮とともに、相手のことを考えて協力するという考え方が風化していきました。その中で、頑張っているのが、日本の自衛隊であり、警察、消防といった公安系の職業人たちです。
その中で、頑張っているのが、日本の自衛隊であり、警察、消防といった公安系の職業人たちです。
警察官がどのように相手(住民)の立場を考えているかを説明して、考えてみましょう。
近所の派出所を訪れて、道を聞いてみてください。警察官が非常に丁寧に対応してくれます。
住民には、「優しい」と感じる方が多くいると思います。
ところが、その職業的コンセプトは、「優しさ」ではありません。「住民の安心安全な生活を、あらゆる犯罪から守る」というコンセプトがあります。
警察職員の職務倫理及び服務に関する規則(公安委員会規則第一号)には、「人権を尊重し、公正かつ親切に職務を奉仕すること」とあります。
つまり、交番のおまわりさんは、まず、訪ねてくれた住民の人権を尊重し、公正かつ「親切に」職務を実行していてくれたのです。
優しくではなく、「親切」にです。親切とは、高齢者には高齢者への配慮、障害を持って人々には、障害に留意した配慮、女性には威圧感を与えないよう、安心できる雰囲気で接する、子どもでも分かる言葉で話すなどの配慮で、サービスが成り立っているのです。
これが、これからの日本人の基本になると思います。相手の立場を知り、それに対応していく。グローバル社会で生き抜くために、日本人はそういったコンセプトで、外国と外国人と向き合っていかなければならないと思います。
執筆家・英語教育・生涯教育実践者
大学から防衛庁・自衛隊に入隊。10年間のサバイバル訓練から人間の生について考え、平和的な生き方を模索し離職を決断する。時を同じくして米国国費留学候補者に選考され、留学を決意。米国陸軍大学機関留学後、平和を構築するのは、戦いを挑むことではなく、平和を希求することから始まると考えなおす。多くの人との交流から、「学習することによって人は成長し、新たなことにチャレンジする機会を与えられること」を実感する。
「人生に失敗はなく、すべてのことには意味があり導かれていく」を信念として、執筆活動を継続している。防衛省関連紙の英会話連載は、1994年1月から掲載を開始し、タモリのトリビアの泉に取り上げられ話題となる。月刊誌には英会話及び米軍情報を掲載し、今年で35年になる。学びによる成長を信念として、生涯学習を実践し、在隊中に放送大学大学院入学し、「防衛省・自衛隊の援護支援態勢についてー米・英・独・仏・韓国陸軍との比較―」で修士号を取得、優秀論文として認められ、それが縁で定年退官後、大規模大学本部キャリアセンターに再就職する。
修士論文で提案した教育の多様化と個人の尊重との考えから、選抜された学生に対してのキャリア教育、アカデミック・アドバイジングを通じて、キャリアセンターに新機軸の支援態勢を作り上げ、国家公務員総合職・地方上級職、公立学校教員合格率を引き上げ高く評価される。特に学生の個性を尊重した親身のアドバイスには、学部からの要求が高く、就職セミナーの講師、英語指導力を活かした公務員志望者TOEIC セミナーなどの講師を務めるなど、大学職員の域にとどまらぬ行動力と企画力で学生支援と教員と職員の協働に新たな方向性をしめした。
生涯教育の実践者として、2020年3月まで東京大学大学院教育研究科大学経営・政策コース博士課程後期に通学し、最年長学生として就学した。博士論文「米軍大学における高等教育制度について」(仮題)を鋭意執筆中である。
ワインをこよなく愛し、コレクターでもある。無農薬・有機栽培・天日干し玄米を中心に、アワ、ヒエ、キビ、黒米、ハト麦、そばを配合した玄米食を中心にした健康管理により、痛風及び高脂質血症を克服し、さらに米軍式のフィットネストレーニング(米陸軍のフィットネストレーナの有資格者)で筋力と体形を維持している。趣味はクラッシック音楽及びバレエ鑑賞。
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