突飛な質問ですが、あなたはぎょっとするでしょうか、もし誰かに「君の膵臓をたべたい」って言われたら…
あなたはピンと来たでしょうか。
この「君の膵臓をたべたい」は5,6年前出た小説の題名。作者は住野よる。DISH//の北村拓海らの主演で映画化され「キミスイ」という略称ができたほど話題に。
正直私も題名が題名なので、ずっと敬遠してたんです。ところが面白そうな英語作品には目がなくって。
英訳(I want to eat your pancreas)があると知った途端に読みたくなったんです。
ただ私の興味を一番惹いたのは(pancreas/膵臓)という英単語。(「パンクレアス」か…何だか不思議な感じ)。
小説を読み終わるのもそこそこに語源を調べたら意外な事が分かったんです。
今回はDNAのKREUE (生肉)繋がりでpancreas(膵臓)、raw(生の)、cruel(残酷な)等を見てみましょう^^
<まさか「パン」?>
DNAのKREUE (クレウエ/生肉)→ 一様な肉っぽさ→ 膵臓 (pancreasパンクレアス)
ちょっと細かいですが、pancreasはpan(パン) + creas(クレアス)。panは「全て」で日本語の「パン」ではありません。念の為。creasの所にDNAがあります。「全て生肉」とは、膵臓はごろっとした肉の塊の感じだからかも。
DNAに「生肉」なんて、と不思議に思ったでしょうか。大昔なので調理法も沢山あるはずがなく、肉と言えば生が多かったのかもしれませんね。
KREUE (生肉) → 一様な肉塊 → 膵臓 (pancreasパンクレアス)
<なぜ生が残酷か>
KREUE (クレウエ/生肉)→ raw(ロー/生の)
raw(ロー/生の)で「生」の意味は肉以外にも広がります。raw data(デイタ/情報), raw passion(情熱)などと使えそう。DNAからK(ク)はよく消えるようで、rawにもK(ク)がありません。(ちなみに日本語では同じ「ロー」でもlawは「法律」。全く別の単語です。)
KREUE (生肉)→ raw(生の)
KREUE (クレウエ/生肉)→cruel(クルーアル/残酷な)
cruelはKREUEと発音は似ているようです。ただ「生」からなぜ「残酷」?と思うかもしれません。「生」→配慮や工夫がない天然→傷つける→「残酷」のような変化が想像できるかも。
KREUE (生肉)→ 配慮や工夫がない天然 → 傷つける → cruel(残酷な)
<生ゴムと生魚の違いって?>
KREUE(クレウエ 生肉) → crude (クルード/未加工・未処理の)
次はcrude。deの部分はラテン語の名残らしいです。
「crudeって(生)の感じだが、raw(生)とどう違うの?」とあなたは思うかも。Good question!
crudeは「普通行われる処理や加工がまだ」という感じです。例えばcrude rubber (生ゴム)。普通精製して初めて伸縮自在のあの「ゴム」になるわけで…rawはraw fish(生魚) とか単純に今「生の」状態の感じかも。
KREUE(生肉) → crude (未処理の・生の)
<英語でも面白い「キミスイ」>
今回の語源調べの切っ掛けになった小説ですが、英語の読み物として非常に面白かったです。
何より題材が身近。学校での場面や出来事や「若者」の考え感じ方ということで、分かり易いし感情移入がしやすい。私は引き込まれて力が出たので、2日で読めました。
あなたがライトノベル的な英訳本を探しているならI want to eat… はピッタリかも。英語を楽しく学べるチャンスになると良いですね。
追伸:心に残ってる個所です。主人公の閉ざした心に響く桜良のセリフから。拙訳付で。
When you are all on your own, you don’t know who you are….
(一人だけじゃ、自分が誰か分からない。…)
The people I enjoy being with and the people I hate being with are who I am…Those connections give me shape…
(一緒にいて楽しい相手、楽しくない相手、どちらもこの私。そういう関係性が私に形を与えてくれる…)
私立学校に英語教師として勤務中、40代半ばに差し掛かったころ、荒れたクラスを立て直す策として、生徒に公言して英検1級に挑戦することを思い立つ。同様の挑戦を繰り返し、退職までに英検一級(検定連合会長賞)、TOEIC満点、国連英検SA級、フランス語一級、スペイン語一級(文科大臣賞)、ドイツ語一級、放送大学大学院修士号などの成果を得る。
アメリカで生徒への対応法を学ぶ為に研修(地銀の助成金)。最新の心理学に触れた。4都県での全発表、勤務校での教員への研修を英語で行う。現在も特別選抜クラスの授業を全て英語で行っている。「どうやって単語を覚えればいいですか?」という良くある質問に答える為、印欧祖語からの派生に基づく「生徒には見せたくない語源英単語集」を執筆中。完成間近。常日頃洋書の読破で様々な思考にふれているが、そうして得た発想の一つを生かして書いた論文がコロナ対策論文として最近入賞。賞品の牛肉に舌鼓をうっている。元英検面接委員