海外のレストランって、何を着たらいいのか、または何を着たらダメなのか迷いませんか?
私がイギリスに語学留学をしていた時の事です。
友人:「この間ロンドンに行った時に、公園でおじいさんが話しかけてきてね。なんか、お金持ちみたいで家に使ってない部屋がいくつもあるから今度ロンドンに来た時には泊まったらいいよって言ってたの。一緒に行かない?」
私:「え~。その人、怪しくない?大丈夫なの?」
その時住んでいたのは、イギリスの南端にあるブライトン。ロンドンまでは電車で1時間半ほどで日帰りも可能な距離。無理して泊まる必要もない。
友人:「私も怪しいと思ったけど、ちゃんとした人だったよ。昔、日本の人ですごくお世話になった人がいて、それからその人へのお礼のつもりで、日本の人を見たらもてなすんだって。
おじいちゃんだし、大丈夫じゃない?一人で行くのはさすがに怖いからさぁ~。ロンドンにタダで泊まれたらいいでしょ?」
私:「う~ん、じゃぁ行ってみる?でも、危なそうなら帰るからね。」
若い時は怖いもの知らず。怪しいなぁと思いつつも一緒に泊りがけでロンドンに行く事に。
友人がそのおじいさんに連絡をすると、夜にはいいレストランに連れて行ってあげるから夕食用の服を用意しておくようにと言われたそうだ。
ますます怪しくないかぁ?と思いながらも、夕食用に私はワンピースを入れておいた。
<そんな恰好では連れていけない!>
ロンドンで会ったおじいさんは、私が思っていたよりもきちんとした恰好をした白髪のイギリス紳士だった。
仕立ての良さそうなシャツをしゃんと着ている姿は、おじいちゃんというよりビジネスマン。頑固で几帳面なワンマン社長という感じ。
まずは荷物もあるので、おじいさんの家へと行く事に。
その時の私は、まだイギリスに来て数か月。ロンドンに来るのも3回目くらいでまだ街の事はよく分かっていなかった。
が、後にロンドンに住むようになって分かったのだが、そのおじいさんの住んでいた地域はロンドンの高級住宅街チェルシー地区にあった。
イギリスの家は、隣の家との間がない大きな壁のような形。
形式は、私がホームステイをしていたブライトンの家と変わらないが、表の造りと高級感が全然違う。
重そうな扉を開いて中に入ると、「ホテル?!」と思うくらいに天井が高く、ソファーやテーブル、置いてある調度品も高級感がある。
きれいに整えられた部屋はまるで生活感がない。一人暮らしの彼は、お手伝いさんが身の回りの事を全てしてくれているらしい。
(ほんとのお金持ちだぁ…)
映画に出てくるような洗練された部屋で、逆に落ち着けない。汚してはいけないとソファーも端っこに座り、お茶も気を付けながら飲む。
部屋に入り、少し落ち着いたところで「食事に行くから着替えて。」と言われた。
そこで、私は持ってきていたワンピースを着たのですが…
おじいさん:「他の服はないのか?インターコンチネンタルホテルに行くんだぞ!」
インターコンチネンタルホテル?! いいレストランってインターコンチネンタルだったの?!
その当時、二十歳であまりホテル名を知らなかった私でも知っていた超高級ホテル。高級ホテルでの食事にも驚いたが、自分の服装にダメ出しされた方が驚いた。
「え~、この服じゃダメなの?」
私としては、大人っぽいおしゃれな服を選んだつもりだった。
が、それは今思えばクラブに遊びに行くような恰好だったのだ。タイトで肩もあいた服だった。ホテルで食事をするには品がなかったのだろう。
上に羽織るものでもないのかとか聞かれたが、他は翌日着る予定のカジュアルなネルシャツとジーンズだけ。さすがにそれではカジュアルすぎる。まだこっちの方がいいだろうと思った。
他に服がないと知って不満げなおじいさん。
「本当は上の階のレストランに連れて行こうと思ってたのに…。君のその恰好じゃダメだ。連れていけない。残念だけど下のレストランにするよ。」
とインターコンチネンタルホテルの1階にある比較的カジュアルなカフェレストランで食事となった。
そこでも十分に高級感のあるレストランで私には十分だった。が、自分の服装のせいでおじいさんは機嫌が悪くなるし、高級レストランでの食事ができなくなってしまい友達には申し訳ないし…。自分が惨めで恥ずかしくて情けなかった。
次の日の朝。
ネルシャツとジーンズに着替えて部屋を出ると
「ちゃんとした服、持ってるじゃないか!なんで昨日そのシャツを着なかったんだ!」
とおじいさん。
私:「え?これカジュアルなシャツだから…。」
おじいさん:「襟がついてるじゃないか!それを上からでも着てたら上の階のレストランでも食事ができたのに…。」
え~!ネルシャツの方がワンピースより良かったの??? ネルシャツ=カジュアル着と思っていた私には理解できない言葉だった。
(あの時、ネルシャツを出しておけば…。)若かりし日の苦い思い出。
<レストランには何着ればいい?>
その後添乗員になり、世界各国のレストランへお客様を案内して思った事。
「日本人に夕食の時の服装選びは難しい!」
日本だと夕食も昼間と一緒の服で行く事が多くないですか?よっぽど特別なシチュエーションでない限りだいたい昼間の服装のまま行きますよね。
欧米諸国は、昼間はカジュアルな服装をしていても夜は着替えて出かける人が多いです。日本人は大体普段からきれいな恰好をしている人が多いので問題ない事が多いですが、ハワイやオーストラリアなどのリゾート地などに行く時はちょっと注意が必要です。
日中はみんな、Tシャツやタンクトップに短パン、ビーサンですが、夜は、カジュアルなレストランでもカジュアルなりのおしゃれをしています。
女性はリゾートワンピースやおしゃれなトップス、男性も襟付きシャツにチノパンなどの長いパンツ。
ビーチリゾートなどは開放感があり、カジュアルな雰囲気なので服装を気にする事はないかもしれません。別にTシャツ短パンでも高級店でもない限り入店を断られたりする事ありません。ですが、ただ何となく周りから浮いて見えてしまいます。
逆にヨーロッパなどで、少しいいレストランに行く場合。正装でないまでも、ジャケット着用が必要なレストランがあります。
ツアーの場合は事前にお客様に「少しいいレストランで食事をしますので、男性の方はジャケットを、女性の方も少しおしゃれ着をご用意ください」と案内をします。
すると、大抵の場合、男性はビジネススーツにネクタイ、女性は結婚式に着ていくようなワンピースを着てくるのです。
ミシュランの星付きレストランやディナークルーズならまだいいですが、「ちょっといい」位のレストランには少しかしこまりすぎで周りも「何事か?」という感じになるのです。
他の人たちを見ると、男性は写真のような襟付きシャツにノーネクタイ、スーツではないジャケットを羽織っています。女性は、ブラウスにスカート。オフィスコーデのような感じです。
レストランに合わせて、カジュアル過ぎず、フォーマルにもなり過ぎず、ちょっとおしゃれにというバランスがなかなか日本人には難しいところです。でもそれがさらっとできるようになると素敵ですよね。
男性の場合は、ロンドンのおじいさんが言っていたように「襟付きシャツ」というのがポイントのようです。
ハワイのアロハシャツはカジュアルに見えて正装になるといいますが、やっぱり襟付きですよね。襟が付いていればきちんと感がでるのかもしれません。
女性の場合は、会社に着ていくような服装で大抵のレストランは大丈夫です。
イギリスの時の教訓ではないですが、私は旅行の際には、高級レストランで食事をするような予定がなくても1枚はいい服を持って行くようにしています。
オーストラリアでは、語学学校で船上パーティーがあったり、働いていたホテルで記念パーティーがあった事もあります。
イタリアにいた時は、シェアメイトの卒業式とお祝いパーティーに呼ばれたり。意外とパーティーに遭遇する事は多いです。そんな時「持って行ってて良かった~」といつも思うのです。
国内旅行でも、夜、食事に出る時にはちょっとおしゃれをしたり、髪型を変えたりする事もあります。そうすると、気分もあがるし、お店の人も何だかよくしてくれているような?感じがします。
海外旅行に行った時にレストランに合わせてさらっと着こなせるように、国内のレストランで予行練習しておくのもいいかもしれませんね。
中学生時代から英語を話せるようになる事に憧れ、外国語短大へ進学。その後イギリスへ留学するも英語が話せず落ちこぼれの生徒に。英会話のトレーニング(カランメソッド)を受け英会話が上達。帰国後、夢だったツアーコンダクターになる。渡航国約35カ国 年間200日以上を海外で過ごす。その後オーストラリアにワーキングホリデーで渡り、オーストラリアにあるハミルトン島のリゾート会社に就職。その後日本に帰国し、京都のホテルやゲストハウスなどでの経験を経て、地元宮崎にUターン。現在は地元宮崎で、英会話教室及び、単位制、通信制の高校で英会話を教えている。
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