米北中部ウィスコンシン州立大留学中、年末年始の旅行中見かけたある情景が、40年以上たった今も印象に残っています。
「旅行」と書きましたが、クリスマス休暇中、寮は閉鎖。海外留学生は旅行するしか手がありませんでした。
でも幸い州内外に、ほぼ無料でホームステイさせてくれる家庭がありました。ほとんどの海外留学生はこういう善意のおかげで、休暇明けまで乗り切ったようです。
さて一軒目でのこと。現地に着くと休暇中の滞在者は私だけではなかったよう。親戚なのか友人なのか、出たり入ったり人数が多いこと。あちこちから幼い甲高い声。もう誰が誰やら…
夕食後、Make yourself at home(くつろいでね)と言われながら、入ったリビングが大混雑。多分10人以上。座ったソファーがぎゅうぎゅう詰めだったのを覚えています。
日本人は私一人。英語対応も多人数相手で、いっぱいいっぱい。疲れ眠くなった私は、一座の人達にお休みを言うと、Host motherが
“If you have anything you want, just tell us.”
(何でも欲しいものがあったら言ってね)
と言葉をかけてくれました。
そこで“
Can I have a can of beer, please?”
(缶ビールをもらえますか?)
と言いました。これってあなたは変だと思います?私は実は学生時代、缶ビール一本弱を、寝しなに飲むことがあったのです。
すると私の「beer」という語に反応してか、ホストファミリーの高校生くらいの男の子が、
“Beer, before going to bed?”
(ビール?寝る前に?)
と直接私に向かってではなく、あり得ない、と言うような感じで口走ったんです。
(両肩を軽くすくめる”Oh, no!”みたいだったかも)
するとHost motherがすかさずその発言を片手でサッと。
(そんなこと、あなたがとやかく言うコトじゃありません)
と制するようだったか。
そして “OK, anything else?” と言いながら、何事もなかったかのようにキッチンから持ってくれた缶ビールを私に手渡しました。
何気ない一コマですが、繰り返しますが今も印象に残っています。
なぜなら、言わばアメリカ人の国民性が作られる現場を目撃したからかも。
普通アメリカ人は、相手がすることに、やたら口を出さない、ああだこうだ言わないようですよね。
確かに一般的に個人主義・自由主義的なのかも。でも、まだ小さいうちは、結構変なことも言ったりする子もいるわけです。そういう時に、周りの大人の反応が重要。
なぜなら、周りの言動次第で子供の人格形成、ひいては国民性の形成が多分左右されるからです。
ここではまず10代の若者が人の飲み物の習慣について、余計で否定的な論評・反応。
すると母親は即座に制して、明確なダメ出し。これでその子は、自分の言葉がまずかったと学び、同じコトを繰り返しにくくなった…こうした一連のことが私の眼前で展開した気がしたのです。
全アメリカ人が最初からアメリカ的な考えとは限らない。多かれ少なかれ、周囲から影響を受け、段々アメリカ人的な性格を帯びていく…多分当たり前のことを、実感した気がします。
このように海外では自国では見えにくいことが浮き彫りになることがあるようです。あなたもコロナ後の世界、色々な実体験ができると良いですね。
See you soon!
Jiro.
追記:
休暇中に、留学生を滞在させてくれたのは、全くの持ち出しだったよう。もしかして宗教的な背景?今となっては分かりませんが、冒頭にも触れたように、多くの方の善意で、私を含め海外留学生が生活できたことを、今回改めて自覚しました。
Thank you, America!
私立学校に英語教師として勤務中、40代半ばに差し掛かったころ、荒れたクラスを立て直す策として、生徒に公言して英検1級に挑戦することを思い立つ。同様の挑戦を繰り返し、退職までに英検一級(検定連合会長賞)、TOEIC満点、国連英検SA級、フランス語一級、スペイン語一級(文科大臣賞)、ドイツ語一級、放送大学大学院修士号などの成果を得る。
アメリカで生徒への対応法を学ぶ為に研修(地銀の助成金)。最新の心理学に触れた。4都県での全発表、勤務校での教員への研修を英語で行う。現在も特別選抜クラスの授業を全て英語で行っている。「どうやって単語を覚えればいいですか?」という良くある質問に答える為、印欧祖語からの派生に基づく「生徒には見せたくない語源英単語集」を執筆中。完成間近。常日頃洋書の読破で様々な思考にふれているが、そうして得た発想の一つを生かして書いた論文がコロナ対策論文として最近入賞。賞品の牛肉に舌鼓をうっている。元英検面接委員