「スペインサッカーリーグでサポーターが相手選手に差別的発言」と最近TVで報道が。
ブラジル出身のビニシウス選手に向けて対戦チームのサポーター達が「サル!」を連呼。本人の抗議で試合が一時中断したみたい。
このニュースが気になったのは、私もスペインで昔似た経験をしたからです。
30年程前、久しぶりの海外。スペインの観光地マヨルカ島でのこと。
土産物店に家族と入ったら、一人の(女性?)店員がすっと来て脇に立つんです。「いらっしゃいませ」とか一言もなく無言。視線も合わしません。
(変なの…まあ、お土産探そう。あっこれどうかな?)とTシャツをとり上げました。家族もそれぞれ思い思いの品を。ございます。
で、見終った品物を私達が元に戻すと、無言店員が脇かそれを取り上げて、大げさにたたみ直すはホコリを払うはして、いちいち元の所に置き直すんです。
こんな行動を見せつけられたら誰でも、きっとあなたもピンと来ますよねえ。そうなんです、万引き扱いされたのです。
店内に東洋人は他にいません。自分が「外国人」と見られていると強烈に意識。ゾワゾワッみたいなイヤ~な体温変化を感じました。
今思い返すと生まれ初めての人種差別の触感だったのかも。
冒頭のスペインサッカーリーグでの差別報道に接した時、この体験をまた思い出し,(人種差別って根深いんだなあ)と半分諦めのように感じました。あなたも同感かも。
でも仮にですよ。人種差別って根が「浅い」ならどうでしょう?意外に単純なものだとしたら?もしそうなら随分違ってきません?.
でも「何くだらないこと言いだすの?」ってあなたは一笑に付すでしょうか。
実は最近知ったのが人種差別に関する常識と真逆の考え方。私も最初は戸惑いました。
「人種差別など根が浅い」と「非常識」なことを言うのは、進化心理学者のKurzban。しかも「根が浅いワケは数千年の歴史しかないから」と続くので読む方は一瞬??です。
Kurzbanは、大昔のヒトの出現と進化から一気に解き明かします。さあ彼の言いたいコト。
人類が地上に出現したのが約400万年前。以来現在までの期間は大きく二分される。移動生活と定住生活の期間。約一万年前に人類は移動生活から定住生活に移ったので移動生活=400万年ー1万年=399万年。
この長い399万年の間、無数のヒトの小集団が地球上で移動生活をし、進化し徐々に今の人類らしくなっていったと考えられる。
例えば、仲間以外の「よそ者」を区別する意識も、399万年間の進化の結果、ヒトの心に本能として刻まれた。今我々が感じる見知らぬ人に感じる警戒感や違和感もこうした本能に由来する。
では本能が感知するようになっている「よそ者」に「別の人種」は含まれていたか。「人種」意識が仮に本能として深く刻まれているなら、399万年間日常的に頻繁に人種間接触があったことになる。
しかし、大昔から違う人種同士が頻繁に出会えたはずはないだろう。
何故なら数百年前の日常的移動距離は(現在一日歩ける距離と変わらず)一日約60㌔。こんな小さなスケールの移動生活の中で人種間の頻繁な接触など起き得ないからだ。
黒人・白人の接触を見てみても、違う人種がよく接触するようになるのはせいぜい一万年前定住生活開始以降ではないだろうか。
1万年は本能が人間の脳内に刻まれるには短すぎる。つまり現在の人間の脳内に人種への違和感が本能として刻まれているはずがない。繰り返すがよそ者意識は本能だが人種意識は本能ではない。
本能なら根深い。本能でないなら「人種意識」は意外に弱い可能性がある。例えばスポーツ等の場合、今大多数の関心は選手の人種より、どのチーム所属かではないか。
とまあ、大端折りで教授の説です。
<ホントにそうか?>
では教授の説が正しいかどうか確かめましょう。
最後の教授の例ー今は選手の人種よりどのチームかに関心ーは、冒頭のサッカー差別に当てはまるでしょうか?
ビニ選手を差別したのは、言うまでもなく相手チームのサポーター。自チームのサポーターはビニ選手に差別的な言葉を言ったりはしませんよね。これって不思議にも思いませんが、結局自チームサポーター(や大勢)の関心は「人種よりチーム」ということでは。
<でもやっぱり?>
でもあなたは今世界で「人種間の対立」が続くのはなぜだろう、とやはり疑問が湧くかも。
教授によればそれは「たまたま」ということらしいです。
中東の対立にしても結局「よそ者」同志の対立。ただ同じような人・子孫ばかりが、偶然居合わして衝突し続けている。人種の差には本来関係ない….みたいです。
例えば(ロメオとジュリエット的に)2つの家が長い間争う。それが偶然白人と黒人の家同士だった…みたいな感じ。人種の対立と捉えて焦点をずらさないことが大事….なようです。
すぐには信じ難いかもしれませんが、ただの理想論ではなさそうです。人種についての一つの考え方かもしれませんね。
あなたも根深い人種の対立という見方を一度疑ってみませんか。
See you later!
Jiro
追記
◯CNNの映像付き記事
Vinícius Jr.: Real Madrid player persistently racially abused during Spanish La Liga match
By Matt Foster and Patrick Sung, CNN
https://edition.cnn.com/2023/05/21/sport/real-madrid-vinicius-laliga-racism-spt-intl/index.html
◯Kurzban教授らの見解などが紹介 されている洋書(邦訳なし)
Beyond Revenge(復讐を超えて)
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<英語版>
知ってる内容を英語ルートで理解する。洋画で字幕を読んで英語を聞くように。
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私立学校に英語教師として勤務中、40代半ばに差し掛かったころ、荒れたクラスを立て直す策として、生徒に公言して英検1級に挑戦することを思い立つ。同様の挑戦を繰り返し、退職までに英検一級(検定連合会長賞)、TOEIC満点、国連英検SA級、フランス語一級、スペイン語一級(文科大臣賞)、ドイツ語一級、放送大学大学院修士号などの成果を得る。
アメリカで生徒への対応法を学ぶ為に研修(地銀の助成金)。最新の心理学に触れた。4都県での全発表、勤務校での教員への研修を英語で行う。現在も特別選抜クラスの授業を全て英語で行っている。「どうやって単語を覚えればいいですか?」という良くある質問に答える為、印欧祖語からの派生に基づく「生徒には見せたくない語源英単語集」を執筆中。完成間近。常日頃洋書の読破で様々な思考にふれているが、そうして得た発想の一つを生かして書いた論文がコロナ対策論文として最近入賞。賞品の牛肉に舌鼓をうっている。元英検面接委員