20代半ば英語教員になりたての私は「青年の船」の存在を知り胸が高鳴りました。
「青年の船」とは、多国籍の若者が東南アジアをひと月船で巡る親善事業(’総理府主催’)。渉外(通訳)団員も募集するというので、英語を実地で磨きたかった私にはうってつけ。また教員としてマンネリ化しだしたような自分に喝を入れたい気もありました。
幸い合格し、当時のビルマ等6か国を200人ほどの仲間と訪問しました。
「訪問」といっても船だからノロノロ。港に着いた途端一日二日猛スピードで活動…
こんなパターンの繰り返しの中で最も印象に残ったのはインドのボンベイ(今のムンバイ)でした。
その印象というのは貧富のすごい格差。
大型バスで市内を通過する際、高層ビル群のすぐ足元からボロボロののスラム街が行けども行けども広がっていた光景は衝撃的でした。
バスが停まる度に花とか絵とか手にしたものを窓ガラスに押しつけて売りつけに来る子供達、私達が捨てた昼食の空箱を取り合う同じ子供達。
遠目に母親達が抱いていた嬰児達は死体のようにしか見えませんでした。
港に停泊中一泊だけ印度人家庭でのホームステイが組まれていました。
私は班の班長と一緒。(全体の「船」の構成ですが、班=班長と渉外+外国人1日本人5。これが30班あり全体で200人以上。三分の一は女性班みたいな感じでした。)
港に迎えに来てくれた方は聞けば電気屋さん。そのバイクに二人乗りでお宅に。シャワーはお湯が出ず入浴は諦めました。
夕飯にカレーをご馳走になった時ご主人から「辛くないか」と何度も確かめられました。夜は部屋から出る用事もなく、班長と雑談をして過ごしました。
翌朝バイクで船まで送ってもらいながら立ち寄った土産物屋に同じ船の仲間が2人。彼女達から聞いたホームステイの様子に唖然としました。
彼女達が初めに通された場所が、一瞬「家」だと思ったそうです。実は自分達用の「部屋」。ホストファミリーは建物のフロア―全体を所有してたんでしょう。ご主人は日本石油という企業のお偉いさん。奥様は映画王の娘。当時も映画制作数はインドが世界一でした。
深夜過ぎからのパーティーに10人のサーバントの一人が10台ある車の一台で送ってくれたそうで。バーティーには現地企業の役員に外交官といった方々がゾロゾロ。
私の滞在した家も多分中流以上だったのかも。でも間接的に垣間見た超セレブの生活は想像の埓外でした。
このように、当時のインドは所謂貧富の格差を目の当たりにする現場だったようですが、今はどうか?と常々思っていました。
すると地球全体の格差についての絶好の洋書に目を通すことができました。それは「Factfulness」という本。
それによれば今ではインドを含む世界の85%が言わば「先進国」になっちゃってるらしいんです。あなたは信じられますか?どういうことでしょう?
ーーーーーーーーーーーー
The world has completely changed….
(世界は完全に変化した)
85 percent of mankind are already inside the box that used to be named “developed world.”
(85%の国が昔の「先進国」の枠内)
The remaining 15 percent are mostly in between the two boxes.
(残りの15%は大体「先進国」と「後進国」の中間)
Only 13 countries,… or 6 percent of the world population, are still inside the “developing” box. …
(昔の「後進国」は13か国(世界人口の6%)しかない)(p28)
ーーーーーーーーーーーー
後進国・先進国という分け方が無意味になるほど世界は変わったのに、昔の「先進国」の人の頭の中の世界像は変化していない.,とも。
インド国内の貧富の差の様子も変わったという指摘も見つかりました。
一日一ドル以下で生活する最貧層はガバっと億単位で減ったと言うんです。
ーーーーーーーーーーーー
In 1997, 42 percent of the population of … India …were living in extreme poverty.
(1997年インド人の42%が極貧状態)
By 2017…that share had dropped to 12 percent: there were 270 million fewer people living in extreme poverty than …just 20 years earlier.
(2017年には12%に。わずか20年前と比べて2.7億人極貧層が減った)(p50)
ーーーーーーーーーーーー
念の為確認してみましょう。
1997年には、約10億人中42%の、4億2000万人が極貧状態。それが2017年には、約13.5億人中12%、1億6200万人…ということになりそうです。
確かに、まだ一億人以上の極貧者がいそうですが、4億人以上から比べればすごく減ったと言えるかも。
とにかく、私が数十年前に垣間見た世界は、大きく変わっていそう。またアップデートしていきたいと思います。
さて、私はこの船への参加後、無事教員生活に新たな気持ちで臨むことができたようですw
あなたも、英語の経験にもまた生活を見直せるような海外経験ができるといいですね。
See you soon!
Jiro
追記:
◯冒頭のクイズ。正解は6%(但し人口比)
◯「Factfulness」 by Hans Rosling
https://amzn.to/49tubY1
↓ ↓ ↓
私立学校に英語教師として勤務中、40代半ばに差し掛かったころ、荒れたクラスを立て直す策として、生徒に公言して英検1級に挑戦することを思い立つ。同様の挑戦を繰り返し、退職までに英検一級(検定連合会長賞)、TOEIC満点、国連英検SA級、フランス語一級、スペイン語一級(文科大臣賞)、ドイツ語一級、放送大学大学院修士号などの成果を得る。
アメリカで生徒への対応法を学ぶ為に研修(地銀の助成金)。最新の心理学に触れた。4都県での全発表、勤務校での教員への研修を英語で行う。現在も特別選抜クラスの授業を全て英語で行っている。「どうやって単語を覚えればいいですか?」という良くある質問に答える為、印欧祖語からの派生に基づく「生徒には見せたくない語源英単語集」を執筆中。完成間近。常日頃洋書の読破で様々な思考にふれているが、そうして得た発想の一つを生かして書いた論文がコロナ対策論文として最近入賞。賞品の牛肉に舌鼓をうっている。元英検面接委員