Hey!guys.
月曜日のSwatchです。
今から7年ほど前,ネットブログで「自衛隊幹部が異様な低学歴集団ある理由」(部谷直亮氏)という記事を読んだ。自衛隊出身者としては,正直言ってショックを受けた。
その後、数回にわたり、同じ記事が再掲され、防衛関係者がSNSでざわついていると知り、軍事教育研究者として、コメントできないかと考えた。
不快に思いながら、記事を読み進んでみると、筆者の主張したいことが見えてきた。
低学歴の自衛官では、グローバル化し、国際紛争が多発する現状にたいおうできないのでないかという、我が国の国防態勢の不備を鋭く突くものであった。
低学歴は正しいとは言えないが、幹部自衛官の高学歴化を目指してきた関係者にとっては、嬉しい応援に聞こえる。
今回は,その記事を私なり吟味したことを,メディアに繰り返し掲載される記事の真意と、読み方について考えてみたいと思います。
<国立大学受験生が,防衛大学校を注目>
自衛隊幹部が、低学歴集団というのは,ショッキングなタイトルである。
が、事実はそうではない。
まず、50年前には、防衛大学校に合格したり,入隊試験に合格したりした高校生に対して,高校教師たちが,入学や入隊を辞退するよう説得した時代もあった。
その時代は、自衛隊反対、自衛隊は憲法違反といった論調で、自衛隊に関するものはすべて悪という考え方が政党を中心に動いていたからである。
そのような環境であっても,防衛大学校入学試験への応募は増えていった。
なぜか?
当時は、大学予備校も現在ほど多くはなく、国立大学の模擬試験という機会も非常に少なかった。
そんな状況で,防衛大学校の入学試験が,国立大学受験生の目に留まったのだ。
理由は,防大の入試問題が、非常に標準的な問題で、実力ためにしになるという噂(評価)である。
実際に,防衛大学校の試験準備委員会が練りに練った「偏りのない」標準的な問題が出題されていたのだ。Swatchも受験した。
当時の入試制度からすれば,防衛大学校の試験が最初に実施され,それに続き国立一期校と呼ばれた大学,さらに第2期校の大学が続き,国立系の大学志願者は3回の受験が可能だった。
志望理由はともかく,防衛大学校は大学入試の「腕試し受験」という感覚で、受験生の注目を集めた。先ほど述べたように,自衛隊に関することは悪であるという考え方で、合格すれば,教師から入学を辞退するよう指導された。
この防衛大学校,通常,「防大」と呼称されるので,大学だと勘違いされている方も多いと思う。大学ではなく「大学校」なのである。
文部科学省の認可による高等教育機関は,「大学」と呼称する。簡単に言えば、文部科学省の大学等設置法による高等教育機関を大学という。
高等教育?は、高等学校、つまり高校ではない。
文科省により、教育機関の区分は,「高等教育」,「中等教育」,「初等教育」に区分されている。
具体的には,
大学、大学院は「高等教育」,
高校・中学校は,「中等教育」,
小学校が「初等教育」
である。
閑話休題(本題に戻すと),「大学校」は,文部科学省の所掌ではなく,各省庁の所管の教育機関である。
防衛大学校は、防衛庁(当時)の「所管学校」である。法律的に文科省とは関係がない。しかしながら、防衛庁は、当時の文部省の設置法に準拠するように、防衛大学校を作り上げた。
防衛大学校の制度的な変遷については紙面の関係で言及しないが,大学と同じレベルの大学校を作ることを目的に努力し、立派にそれを成し遂げたことは言える。
戦前,「陸軍士官学校」及び「海軍兵学校」は,少年たちのあこがれで、競争率も「帝国大学」をしのぐものであった。それは、すでに歴史の中に埋もれている事実である。
戦後,米国政府は、二度と戦争を起こさせないという米国の占領政策により,「陸軍士官学校」,「海軍兵学校」といった栄光に輝き、多数の有為の人材を輩出した士官学校の歴史を断ち切ったのである。
つまり、旧軍の使った名称をすべて廃止し、新しい用語を創り出したのである。階級は、大佐から1佐へ、「士官学校」は、「防衛大学校」と呼称するところとなった。
<世界でも稀有な3軍統合の士官学校である防衛大学校>
防衛大学校は、防衛庁により設置され、自衛隊幹部を輩出するようになって70年の歴史を有する教育機関である。名称が変わるとともに、その内容も旧軍色を排したものになった。
各国は、軍事教育は国の存続にかかわるものとして考え、軍事教育を維持、発展させてきた。
特に、米軍の教育制度は、世界一進んでいると言って過言ではない。
米陸軍は、米陸軍士官学校(ウエストポイント)、
米海軍は、米海軍士官学校(アクアポリス)、
米空軍は、米空軍士官学校(コロラドスプリング)
を有する。その歴史は、創立以来続いている。
米軍は現在、「米陸軍」、「米海軍」、「米海兵隊」、「米空軍」、「米宇宙軍」の5軍からなる。
士官学校が通常なら5つあるべきだが、米海兵隊は、米海軍士官学校に、宇宙軍は米空軍士官学校に教育をゆだねている。
以上のように、米軍または、他国の士官学校においては、各軍種(陸、海、空等)によって、士官学校が設置されている。旧軍の士官学校、兵学校を排した日本は、防衛大学校で新たな試みをする。
日本の防衛大学校は、軍種ごとではなく、「統合された」自衛隊幹部養成のための学校(士官学校)となっており、それは世界で防衛大学校だけである。
軍種ごとに士官学校を設置せず、防衛大学校一つで、自衛隊の陸海空の幹部自衛官を養成する制度となった。
現在、米軍などは、統合作戦のため、各軍をどのように統合していくかに腐心している。
そのことを考えると、設立当初から、統合作戦への人的交流を見据えた素晴らしいアイデアが防大設置にあったことは、驚きに値する。
米軍の幹部とその話をすると、非常に驚かれ、感心される。
<防衛大学校の学術的特異性,博士課程を持つ士官学校は世界で一校だけ>
防衛大学校には、世界で唯一である、学術的優位性がある。
それは、各国の士官学校にはない、修士課程、博士課程が設置されていることである。
以下の防衛大学校の沿革の抜粋を見ていただければ、お判りになると思う。
昭和29年7月1日 保安大学校から防衛大学校と改名
昭和32年3月26日 本科第1期学生卒業式
昭和37年4月1日 理工学研究科開講(大学院の修士課程相当)
平成9年4月1日 総合安全保障研究科開講(大学院の修士課程相当)
平成13年4月1日 理工学研究科後期課程を開講(大学院の博士課程相当)
平成21年4月1日 総合安全保障研究科後期課程開講(大学院の博士課程相当)
赤字で示した事項が、修士課程、博士課程の開講である。これは、防衛省が打ち出した「防衛省・自衛隊の教育訓練に関する抜本的改革」の施策に従って、大学校の教育制度が改革された結果である。
その施策の一つが、幹部自衛官の高学歴化であり、防大の修士・博士課程の開講により、効果をあげている。
米軍はじめ欧州の軍事大学の教育制度を研究し、自衛隊幹部へ修士以上の教育を実現させた、つまり、「低学歴の自衛隊幹部」に修士以上の教育の機会を提供したのである。
このことから、低学歴の自衛隊幹部という報道については、この時点で、間違いだと気づいていただきたい。
自衛隊の中枢となる防衛大学校出身の幹部自衛官が素晴らしい環境下で、育成されてきたからである。
自衛隊員の学歴の分布をみれば、大学卒は少数派かも知れない。が、焦点をあてるのは、数的なことではなく、幹部の質という面から論証すること大切なことを理解していただきたい。
字数の関係で,十分な説明はできなかったが,一般に知られていない国防教育施策を,防大という高等教育機関に準ずる組織を通して、防衛省は改革に力を入れているということを認識していただければ嬉しい。
あなたが,国防の教育政策という点で,一つの明確なコンセプトを持つことは、グローバルで活躍するために、必須の情報になります。
英語に取り組んでいるあなたなら、グローバル化の波もしっかりと把握されていると思います。
その中で、軍事の知識は、外国人との交流において、日本人のアイデンティティを示すうえでも重要な知識となります。
また、英語を習得する際の基礎知識として、軍事の情報は必須です(機会を改めて、述べたいと思います)。海外での生活においては、軍事情報を理解し、自国の防衛に関する意見を述べることで、信頼されることもつながるというのがSwatchの経験則です。
その経験則が少しでも、あなたの英語学習に役立てば幸甚です。
執筆家・英語教育・生涯教育実践者
大学から防衛庁・自衛隊に入隊。10年間のサバイバル訓練から人間の生について考え、平和的な生き方を模索し離職を決断する。時を同じくして米国国費留学候補者に選考され、留学を決意。米国陸軍大学機関留学後、平和を構築するのは、戦いを挑むことではなく、平和を希求することから始まると考えなおす。多くの人との交流から、「学習することによって人は成長し、新たなことにチャレンジする機会を与えられること」を実感する。
「人生に失敗はなく、すべてのことには意味があり導かれていく」を信念として、執筆活動を継続している。防衛省関連紙の英会話連載は、1994年1月から掲載を開始し、タモリのトリビアの泉に取り上げられ話題となる。月刊誌には英会話及び米軍情報を掲載し、今年で35年になる。学びによる成長を信念として、生涯学習を実践し、在隊中に放送大学大学院入学し、「防衛省・自衛隊の援護支援態勢についてー米・英・独・仏・韓国陸軍との比較―」で修士号を取得、優秀論文として認められ、それが縁で定年退官後、大規模大学本部キャリアセンターに再就職する。
修士論文で提案した教育の多様化と個人の尊重との考えから、選抜された学生に対してのキャリア教育、アカデミック・アドバイジングを通じて、キャリアセンターに新機軸の支援態勢を作り上げ、国家公務員総合職・地方上級職、公立学校教員合格率を引き上げ高く評価される。特に学生の個性を尊重した親身のアドバイスには、学部からの要求が高く、就職セミナーの講師、英語指導力を活かした公務員志望者TOEIC セミナーなどの講師を務めるなど、大学職員の域にとどまらぬ行動力と企画力で学生支援と教員と職員の協働に新たな方向性をしめした。
生涯教育の実践者として、2020年3月まで東京大学大学院教育研究科大学経営・政策コース博士課程後期に通学し、最年長学生として就学した。博士論文「米軍大学における高等教育制度について」(仮題)を鋭意執筆中である。
ワインをこよなく愛し、コレクターでもある。無農薬・有機栽培・天日干し玄米を中心に、アワ、ヒエ、キビ、黒米、ハト麦、そばを配合した玄米食を中心にした健康管理により、痛風及び高脂質血症を克服し、さらに米軍式のフィットネストレーニング(米陸軍のフィットネストレーナの有資格者)で筋力と体形を維持している。趣味はクラッシック音楽及びバレエ鑑賞。
Facebook
https://www.facebook.com/takeru.suwa.7/
※友達申請いただく際「World Lifeで見ました」と一言コメント頂けますでしょうか。よろしくお願いします。




