2021年6月、ついにアンドリュー・クオモニューヨーク州知事から、7月にニューヨーク州のロックダウンが解かれる旨、発表がありました。
コロナワクチンの第一回目の接種者数が70%を超えたとの事で、これにより、ワクチンを接種した人は、屋外でのマスクと2メートルのソーシャルディスタンスは、不要となりました。
また経済活動も再開されます。大きな制約があった飲食店や、交通機関、エンタメなど、ほとんどが、コロナ以前の元に戻る方向で進んでいます。
今回は、そんな解除から1ヶ月経った、ニューヨークの実際の様子をお届け致します。
地下鉄
24時間運行で有名なニューヨークの地下鉄ですが、パンデミック中は、深夜1時から5時までは清掃時間に当てられ、このニューヨーク地下鉄120年間の歴史上初めて、長期運休の時間帯あり、という状態となっていました。
それが深夜2時から4時まで、と運休時間が短縮になり、とうとう現在は、もと通り24時間運行に戻りました。
コロナ禍になる前、24時間運行の頃は、残念なことにホームレスの定宿となっていた地下鉄や地下鉄駅ですが、プラットフォームや駅も、この深夜の清掃時間帯には、しっかり閉鎖されたため、行き場を失ったホームレスたちが地上に。なので、パンデミック前と比べて、今でも街で見かけるホームレスの数が多く思われます。
昨年ロックダウン真っ只中の「フェーズ1」では、エッセンシャルワーカーのみが仕事を続けていました。エッセンシャルワーカーとは、私たちの毎日の生活に必要不可欠な仕事、医療従事者、郵便局、食料品店、など限られた職業の人たちです。
そんな限られた人だけだったので、地下鉄の利用客はがぐんと減り、いつもガラガラの状態になり、かえって、地下鉄が怖い、ということに。そこで交通手段として自家用車を買おうする人が増え、中古自動車の値段が急に上がったらしいという噂なんかもありました。
7月末現在、地下鉄の駅に入るときに、マスクは必須。席もぎゅうぎゅうには座らずに、1人分づつ空けるぐらいの感じで互いにスペースを取り合って座っています。ただ、地下鉄の路線によっては、ぎゅうぎゅうな路線もあったり、中には大きな声で喋っている家族連れなどもたまに見かけます。
フェリー
スタテンアイランドの住民にとっては、必須の交通機関である、スタテンアイランドフェリーは、8月16日から24時間運行へ戻るようです。
制限中は運休時間があり、1時頃の最終便に乗り遅れると、次の5時頃の便が出るまで帰れなくなっていたそう。ただ、マンハッタンのお店も早くに終わっていたので、そんなに遅くなる人はあまりいなかったかも。
レストラン
家賃が払えなかったテナントは、補助金を申請することができるようですが、それでも、残念ながら店を閉じたレストランやバーはあちこちで多いように見受けられます。この1年間のロックダウンで、1000軒以上がクローズしたとか。もの凄い数だと思っていましたが、でもニューヨーク州だけで2万6000軒余りのレストランやバーがあるそうですから、全体ではそんなに多いわけでは無いのかも。
これまでコロナのため、制約が1番ゆるい時でも、深夜12時が営業終了時間でしたが、6月から普段通りに戻りました。1年3ヶ月ぶりです。バーは朝4時頃まで営業。
レストランでは、屋内での飲食が禁止されていたために作った、屋外の簡易テラス席が、制限解除後も評判が良く、すごく暑い日は別ですけど、夕方などは涼しい風も吹いて、屋外テーブルもなかなかの人気。
もともとは屋外での飲酒が禁止のため、以前は、外にテーブルはなかったのですが、今はまだ規制緩和中のよう。
各お店は、まずデッキの床を作って、柱を立て、壁の部分にビニールシートを貼り、そしてプレハブぽい屋根を。屋外用のテーブルと椅子、屋外用空気入れ替えファン、そして音響機器など。また昨年の冬を経験していますから、ヒーターも設置。中には、ほんとにおしゃれなテラス席を作ったレストランもあります。
レストランでは、そんな大変な思いをして、屋外でお客様を迎え、昨年2020年のクリスマスを乗り切ってきました。ニューヨークの緯度は、日本で言うと青森県ぐらい北です。今年のホリデーシーズン(11月最終のサンクスギビングからクリスマス、ニューイヤー)はどうなるんだろう。屋内で祝えれば良いけれど。
ただ、お店によっては、まだまだお客様が戻らないところも多いようです。
お客さんが、すっかりデリバリー癖がついてしまったのかも。ロックダウンで、リモートで仕事をしていると、遊びに行かないのでお金が貯まるんだそうです。なのでおいしいレストランのお料理を家でデリバリー、酒屋で買ったワインを飲みながら、好きな映画を、って言うスタイルに、すっかり慣れてしまったのかもしれません。
ちなみに、レストランのメニューは、ほとんどのお店でQRコードをスキャンです。今後、レストランから、メニューと言うもの自体が消えていくのかな。日本から、缶切りと言うものが消えたように。(アメリカではまだまだ缶切りは健在です、笑)
エンタメ
ブロードウェイのミュージカルは、9月14日からオープンの予定。観劇のためには、ワクチン接種済みである証明書が必要となるかもしれないようです。
野球などのゲーム観戦も、ワクチン接種済証明書が必要だそう。
ジャズクラブなども、テーブルとテーブルの間のソーシャルディスタンスを取ったり、パーテーションを置いたり、きちんとコロナの対策をしながら、再開しています。
Birdland(バードランド)というミッドタウンの有名なジャズクラブでは、お客様に戻ってきてほしいとの願いを込めて、ミュージックチャージの値段を、1949年創業当時の値段、99セント(約100円)にして、客足が戻るのを祈っているようです。みんな、頑張っています。
さいごに
日本のマスコミでは、すっかり元に戻ったニューヨーク、などと報道されているかもしれませんが、それは観光地など、うわべだけです。
実際、夏に入って、感染者数はまた増え続けています。リベラルなニューヨーク州はワクチン接種者の数が比較的多い方ですが、同じアメリカでも、地方等のコンサバの州は、コロナはただの風邪、などと言っていたぐらいですから、ワクチン接種率も30%台にとどまっているそう。
実際、近所でもほとんどの人は、暑い中でもマスクをしていますが、観光客と思われる人たちは、マスクをしていない人が多いように見受けられます。
デルタ株、インド株などの懸念もあるし、この季節、旅行者はどんどん増え、まだまだ、油断はできません。
皆さんもぜひ、お大事にされてください。自己免疫を高めるためにも、栄養とって、出来る限り体を休め、陽に当たってビタミンDを増やし、適当な運動を。
ではまた来週。
平木かよ / Kayo Hiraki
ニューヨーク在住 2017年より、世界屈指の米国グラミー賞の投票権を持つ。同じく米国スタインウェイ・ピアノ公認アーティスト。現在、グリニッジ・ビレッジのジャズの老舗「Arturo’s」のハウス・ピアニストとして、週に5日、自己のトリオで演奏活動を続けて26年目。ニューヨーカーに、スイングの楽しさを届けている。ベースの巨匠、ロン・カーターとのトリオで、ブルーノート・NYへも出演。JALの国際線機内誌でも、海外で活躍する日本人として大きく取り上げられた。また、舞台「ヴィラ・グランデ青山」では山田優がジャズシンガーに扮するシーンでの、ミスティーのピアノ伴奏。カナダ・トロント・リールハート国際映画祭でブロンズメダルを受賞した映画「Birth Day」への挿入曲提供と共に、ピアニスト役で出演。フランス・パリ日本文化会館での館長招聘コンサートや、台湾にて、最大規模を誇る、台中ジャズフェスティバルへの出場など、世界を股にかけるスイング感あふれる彼女のピアノとボーカルには、定評がある。定期的に、くにたち音楽大学ジャズ専修で講義を持つ。