師走という呼び名の通り,12月になると慌ただしい感じがします。外国からの文化を取り込んで楽しむことが上手な日本では,昔より年末の忙しさが増しています。
クリスマスは,若い人にとっても,家族にとっても大事なイベントになりました。若い人々は,クリスマスの夜を誰と過ごすかを,かなり前から計画を立てます。
小学生の子供を持った親もクリスマスというと力が入ります。大変なのは母親。クリスマスが終わると,お正月の準備です。12月の26日には,クリスマスツリーを取り払います。
12月26日に,街や家庭からクリスマスツリーが消えてしまうのは,実は日本だけなんです。
年末年始を,海外で過ごす家庭もあるかと思いますが,アメリカでもヨーロッパでも,香港でもグアムでも,空港にはクリスマスツリーが飾られています。
日本の常識は,世界の非常識です。少し時間をさかのぼって,日本に入ってきた海外のイベントをチェックしてみましょう。
<サンクスギビング・デイ(感謝祭)>
アメリカでは、11月の第4木曜日に、Thanksgiving Day(感謝祭)を祝います。今年は、11月25日(木)でした。
サンクスギビング・デイは,イギリス・アイルランド国王ジェームズ1世のピューリタン(清教徒)への宗教弾圧から逃れ,メイフラワー号でアメリカへ渡ってきた民が始めたものです。
新天地を求め移民したピューリタン(清教徒)でしたが,作物の収穫がうまくいかず、飢えに苦しんでいました。アメリカへ入植し半年ほどで,半数近くが病死したと伝えられています。
そんな状況を不憫に思った先住民(ネイティブ・アメリカン)が彼らに食べ物を分け与え、トウモロコシなどの作物の栽培方法や狩猟などを教えたそうです。
そのおかげで,翌年には作物も収穫でき,移民たちは生活できるようになりました。先住民の支援への感謝と天の恵みに感謝して,毎年,感謝祭として祝うようになったのが,起源となっています。
サンクスギビングに出てくるごちそうは,七面鳥のローストです。マッシュポテト,キャセロール(インゲン),パンプキンパイ,ピーカンパイなどの手作りの料理が並びます。
家庭の主婦の腕の見せ所でもあります。母親の味,おばあちゃんの料理など,それぞれの家庭に伝わる秘伝の料理を食卓に乗せます。七面鳥が焼きあがるまでワクワク感わかりますね。
実は,サンクスギビングデイは,離れ離れで暮らしている家族が里帰りし,一緒に食事をして,感謝する日になっています。ニューイヤーズ・デイ(元旦)以上に大切な一日なのです。
ポイント1:サンクスギビングデイが,日本のお正月のように家族で集まる日なのです。
<ブラックフライデイでバーゲンセール>
サンクスギビングデイは,11月の第4木曜日です。アメリカ人は,その翌日の金曜日に休暇をとり,木曜から日曜日まで4連休をとるように,予定を組みます。
その金曜日に目を付けたのが,アメリカの企業です。サンクスギビング明けの金曜日に,バーゲンセールをすることを計画したのです。アメリカではこの日からクリスマス商戦が始まります。
ブラックフライデイは,バーゲンの売り上げにより企業が「黒字になる」金曜日と言われています。
しかし,当初はそういう意味ではなく,警察官のボヤキであったのを御存じでしょうか?
アメリカの企業が全国的に大バーゲンセールをすると,各都市で多くの人々が店舗に殺到します。
その原因の一つに,企業が打ち出すチラシ広告がありました。
そのチラシには,バーゲンを始める時間が明記してあり,購買意欲を高めるために”First come, first served” 「早い者勝ち」的な広告文句が使われています。
我先に,バーゲン会場へと老若男女が殺到します。車社会のアメリカはどこもかしこも車の渋滞です。そこで活躍するのが地元の警察官です。
署をあげて,バーゲンへ殺到する車の交通統制をすることになったのです。通常の勤務とは全く違う厳しい勤務状況になり,警察官は「ブラック・フライデー(暗黒の金曜日)」とぼやいたのです。
警察官のボヤキからサンクスギビングデイの翌日のバーゲンセールを「ブラック・フライデー」と呼ぶようになりましたが,警察官の悲鳴やボヤキでは印象が悪いと呼び名を変えることになりました。
アメリカの新聞社が,「企業が黒字をたたき出す金曜日」という意味に新解釈をして,ブラック・フライデーの呼び名が継続されることになり,現在にいたるのです。
ポイント2:ブラック・フライデーは,警察官のぼやきからきた!
<クリスマスツリーはいつまで飾るの?>
ロックフェラーセンターで、毎年12月にクリスマスツリーの点灯式が行われます。今年は12月2日が予定されています。昨年は,無観衆で点灯式の中継が行われました。
ロックフェラーのクリスマスツリーは,巨大なオウシュウトウヒの木が使われます。この木に5万個のLEDが飾られて,きらびやかな点灯式となるのです。
ロックフェラー財団には,クリスマスツリーを探す担当がおり,一年中アメリカ中をクリスマスツリーにふさわしい木(オウシュウトウヒ)を探して,買い取る契約をするそうです。
報道によると,今年のツリーは,アメリカ南部のメリーランド州で見つかった樹齢85年のもの。
さて,ブラックフライデイで買い込んだクリスマスツリーにクリスマス・オーナメントの飾り(ornament)を飾る準備も大変です。
ロックフェラーセンターのクリスマスツリーの点灯式は12月のはじめですが,各家庭のクリスマスツリーは,12月の24日に家族で飾り付けるというのが伝統になっているのです。最近では,早めに飾ってしまう家庭も増えています。
家族が集まり,クリスマスツリーを飾っていきます。リンゴはアダムとイブが食べた禁断の果実,きらきらした丸い球はキリストが生まれた日に輝いた星,点滅するLEDも星を表しています。
最後にクリスマスツリーのてっぺんに「トップスター」を取り付けます。飾りつけが終わったら,ツリーの足元に各人への贈り物を置きます。これでクリスマスツリーの準備は終わりです。
12月の24日に家族でクリスマスツリーを飾り,クリスマスを迎えます。そして翌日はクリスマスツリーを片付ける。それは日本だけの習慣です。
キリストの降誕を祝うイベントですから,12月25日から1月6日の顕現日(けんげんび)まで飾ります。その翌日には速やかに片づけられます。その日以降にクリスマスの飾りを残しておくと,縁起がわるいということも言われています。
ポイント3:クリスマスツリーは,12月25日から1月6日まで飾る
<長いクリスマス休暇>
サンクスギビングデイから次々とイベントがあり,さらにアメリカ人は長いクリスマス休暇をとります。サンクスギビングデイが,里帰りですから大家族で,クリスマスは,それぞれの家族単位でゆっくりと過ごすアメリカ人が多いです。
海外旅行をしたり,アメリカのリゾート地でゆっくりする家族もあります。家族の時間をしっかりと楽しみ,年末のカウントダウンを迎えます。
日本では,除夜の鐘を聞きながら,年越しそばを食べているかもしれません。カウントダウンが終わった瞬間,誰とキスをしても良いという習慣,日本では広がらないと思いますが,,,
街でカウントダウンをした人々は,新年を祝い,家路につきます。元旦は,ゆっくりと家で過ごして英気を養い,2日は仕事始めというところも。
さて,年末のアメリカから入ってきた行事の本来の意味を考えてみました。これからも新たに年末のイベントが商業主義に乗って,日本に導入されることかと思います。
イベントに追われるのではなく,本来の意味を理解して,自分なりに楽しむことが大事ですね。
執筆家・英語教育・生涯教育実践者
大学から防衛庁・自衛隊に入隊。10年間のサバイバル訓練から人間の生について考え、平和的な生き方を模索し離職を決断する。時を同じくして米国国費留学候補者に選考され、留学を決意。米国陸軍大学機関留学後、平和を構築するのは、戦いを挑むことではなく、平和を希求することから始まると考えなおす。多くの人との交流から、「学習することによって人は成長し、新たなことにチャレンジする機会を与えられること」を実感する。
「人生に失敗はなく、すべてのことには意味があり導かれていく」を信念として、執筆活動を継続している。防衛省関連紙の英会話連載は、1994年1月から掲載を開始し、タモリのトリビアの泉に取り上げられ話題となる。月刊誌には英会話及び米軍情報を掲載し、今年で35年になる。学びによる成長を信念として、生涯学習を実践し、在隊中に放送大学大学院入学し、「防衛省・自衛隊の援護支援態勢についてー米・英・独・仏・韓国陸軍との比較―」で修士号を取得、優秀論文として認められ、それが縁で定年退官後、大規模大学本部キャリアセンターに再就職する。
修士論文で提案した教育の多様化と個人の尊重との考えから、選抜された学生に対してのキャリア教育、アカデミック・アドバイジングを通じて、キャリアセンターに新機軸の支援態勢を作り上げ、国家公務員総合職・地方上級職、公立学校教員合格率を引き上げ高く評価される。特に学生の個性を尊重した親身のアドバイスには、学部からの要求が高く、就職セミナーの講師、英語指導力を活かした公務員志望者TOEIC セミナーなどの講師を務めるなど、大学職員の域にとどまらぬ行動力と企画力で学生支援と教員と職員の協働に新たな方向性をしめした。
生涯教育の実践者として、2020年3月まで東京大学大学院教育研究科大学経営・政策コース博士課程後期に通学し、最年長学生として就学した。博士論文「米軍大学における高等教育制度について」(仮題)を鋭意執筆中である。
ワインをこよなく愛し、コレクターでもある。無農薬・有機栽培・天日干し玄米を中心に、アワ、ヒエ、キビ、黒米、ハト麦、そばを配合した玄米食を中心にした健康管理により、痛風及び高脂質血症を克服し、さらに米軍式のフィットネストレーニング(米陸軍のフィットネストレーナの有資格者)で筋力と体形を維持している。趣味はクラッシック音楽及びバレエ鑑賞。
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