「日本人って、小学校から軍事教練しているから,皆同じ行動ができるんだよね!」
アメリカ人の友人から、こんなことを言われました。彼は父親が神戸で宣教師をしていた関係で,小学校4年生まで日本で暮らし,その後アメリカで高校を卒業した米海兵隊の友人です。
その彼から、日本人は小学校で軍事教練をしていると言われたのです。軍事教練とは、集団行動ができるようにするため、軍隊内で行なわれている訓練のこと。
「え!軍事教練ってどんなこと?」…と彼に聞いてみると、アメリカ米海兵隊に入隊した時の話をしてくれました。
海兵隊の最初の教育で,「気を付け,右へならえ」を教えられ,「そういえば,日本の小学校で習った!」と思い出した。それで,日本の小学校で軍事教育を受けたとい思い込んだのです。
<気付かぬうちに、全国民が受けている軍事教練>
「軍事教練なんか受けてないはず…。」と思うかもしれませんが、小学校の頃を思い出してください。「気を付け!」,「前へ~ならえ!」「右へ~,ならえ!」って聞いたことありますね。
冬休みが終わり,小学校の校庭や体育館に集まり,並ぶときに先生から指示されました。まっすぐ立って「気を付け」をして,前の列に合わせて,横をみて整頓した。
まさにそれが、軍事教練なのです。
そもそもなぜ軍事教練で、団体行動が出来る様にするか。それは,軍事作戦で全員が同じ行動をしなければ,危険なことが多くあるからなのです。
仕事でもそうですよね。朝の9時から朝礼をすると決まっているのに、みんなが違う時間に来たり、好きなことをされてしまうと仕事が進みませんよね。
自衛隊では、それらの教育を「軍事教育」とは呼ばず,基本教練(きほんきょうれん)と呼んでいます。「行動と時間を組織的に統制する」教育が実施されています。
小学校では,算数を習い,国語を習い,体育では跳び箱や体操を習いましたと答えることができます。でも,団体行動の基本を教育されたと自覚している人は,少ないのではないでしょうか。
外国人の目からすれば,それは小学校から軍事教練を受けているから,団体行動がとれるという評価になるのです。
その集団行動の教育は,実は,文部科学省(当時は文部省)が決めています。
<文科省(文部省)が定めた集団行動の教育があるのです!>
驚かれたかもしれませんが,実は,文部科学省が定めた,集団行動の教育があるのです。小学校や中学校では,定められた規則によって教育が実施されているのです。
文部科学省(当時は文部省)が決めた小学校・中学校・高校で実施される「集団行動の教育」が次の5項目です。
1 集団行動の行動様式(姿勢・礼・方向転換・集合・整とん・行進)を身に付けさせる。
2 集団の約束やきまりを守って行動させる。
3 機敏かつ的確に行動させる。
4 互いに協力して自己の責任を果たさせる。
5 リーダーの指示によって行動させる。
それぞれの項目を読むと,なるほどと思います。姿勢から始まり,礼の仕方,整頓要領など,事細かにどういう行動を身に着けるかが説明されています。
基礎的な行動ができるようになれば,次の段階に行き,「約束やきまりを守る」という心構えを教育します。
それができるようになれば,「機敏に的確に行動させる」ことまで,レベルを上げます。素晴らしい教育計画ではないでしょうか。
そして,各人に責任感を持つように教育し,「責任のある大人・社会人」の基礎を作り,リーダーの指示に従う「従順性」まで,教育するのです。
しっかりと読み込んでみると,教育の目的が垣間見えてきます。自分のことを考えてみると,そうやって成長してきたと感じます。良い国民になるよう教育されていると思いませんか?
<集団行動教育を刷り込まれた私たち>
私たち日本人は、自分でも意識しないうちに「良い社会人になるよう」小学校・中学校で,指導されているのです。
一方アメリカではどうか。日本の小学校で途中まで教育を受けた海兵隊員の彼に聞いてみたところ、アメリカでは集団行動の教育はなかったそうです。だからこそ余計に、「日本の小学校で習った!」と懐かしく感じたのでしょう。
私たち日本人は、自分でも気付かないうちに集団行動を小学校から刷り込まれています。集団行動が出来るのは、もちろん,悪いことではなく社会生活の基礎です。
団体行動が取れる,チームの一員として,ルールを守って行動できる。チームワークができることは,社会で求められています。大学生の就活でも,面接で必ず聞かれる質問は,チームワークについてです。
良い国民,良い社会人を作ることを目的に,国家に集団行動を教育されてきた私たちは,知らず知らずのうちに,他の国民とは違う行動をしています。
サッカー場でのごみ拾いは,世界的に評価されました。交通機関の乗り場では,列をつくり,乗降も整斉としています。おなかが空いていても,グルメのレストランの前で長蛇の列を作り,順番を待っています。
これは文科省の集団教育の成果と言っても良いのではないでしょうか。しかし,時代は劇的に変化しているのです。教育も時代のニーズとともに進歩します。
<自分のライフスタイルをみつめ直す時>
仕事柄,大学生に対して将来のキャリアの話をする際も、集団行動で刷り込まれた「みんなと同じなら安心」と言う考えが垣間見えることが良くあります。
企業の求めている人材は,文科省の集団行動にある「リーダーの指示に従う人」ではない。その企業の将来を担うリーダー,あるいは個性的な人材を求めています。
現在は,ITの発達で複雑な管理社会になっています。ITで労働時間も労働の実績もデータ化され管理されています。一方,働き方改革が提唱され,自律した生活も提唱されています。
自分で考え、自分で判断し、自分で決断する。「他の人がやっているから」という小学校の集団行動的な考えではなく,自分のライフスタイルを選択する時代になっています。
皆と一緒ならできる。自分一人ではできない,しなくても良いという考えは,日本人の弱いところです。これからは,私たち自身が主張する時代。
コロナ禍で新生活様式を模索する中,自分らしいライフスタイルを,考えてみる絶好の機会ではないでしょうか。
執筆家・英語教育・生涯教育実践者
大学から防衛庁・自衛隊に入隊。10年間のサバイバル訓練から人間の生について考え、平和的な生き方を模索し離職を決断する。時を同じくして米国国費留学候補者に選考され、留学を決意。米国陸軍大学機関留学後、平和を構築するのは、戦いを挑むことではなく、平和を希求することから始まると考えなおす。多くの人との交流から、「学習することによって人は成長し、新たなことにチャレンジする機会を与えられること」を実感する。
「人生に失敗はなく、すべてのことには意味があり導かれていく」を信念として、執筆活動を継続している。防衛省関連紙の英会話連載は、1994年1月から掲載を開始し、タモリのトリビアの泉に取り上げられ話題となる。月刊誌には英会話及び米軍情報を掲載し、今年で35年になる。学びによる成長を信念として、生涯学習を実践し、在隊中に放送大学大学院入学し、「防衛省・自衛隊の援護支援態勢についてー米・英・独・仏・韓国陸軍との比較―」で修士号を取得、優秀論文として認められ、それが縁で定年退官後、大規模大学本部キャリアセンターに再就職する。
修士論文で提案した教育の多様化と個人の尊重との考えから、選抜された学生に対してのキャリア教育、アカデミック・アドバイジングを通じて、キャリアセンターに新機軸の支援態勢を作り上げ、国家公務員総合職・地方上級職、公立学校教員合格率を引き上げ高く評価される。特に学生の個性を尊重した親身のアドバイスには、学部からの要求が高く、就職セミナーの講師、英語指導力を活かした公務員志望者TOEIC セミナーなどの講師を務めるなど、大学職員の域にとどまらぬ行動力と企画力で学生支援と教員と職員の協働に新たな方向性をしめした。
生涯教育の実践者として、2020年3月まで東京大学大学院教育研究科大学経営・政策コース博士課程後期に通学し、最年長学生として就学した。博士論文「米軍大学における高等教育制度について」(仮題)を鋭意執筆中である。
ワインをこよなく愛し、コレクターでもある。無農薬・有機栽培・天日干し玄米を中心に、アワ、ヒエ、キビ、黒米、ハト麦、そばを配合した玄米食を中心にした健康管理により、痛風及び高脂質血症を克服し、さらに米軍式のフィットネストレーニング(米陸軍のフィットネストレーナの有資格者)で筋力と体形を維持している。趣味はクラッシック音楽及びバレエ鑑賞。
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