米軍のアカデミーの留学経験で一番思い出深いものがプレゼンテーションの試験。
示されたお題で演題に立ち、クラスメートの前で10分間のプレゼンをする。
アカデミーは、軍のリーダーを養成するコースなので、プレゼンには力を入れている。
プレゼン前の2週間は、夜中の2時まで原稿作成に取り組んだことを思い出す。
プレゼン原稿を暗記し、音読を繰り返す。それにより、「時間感覚」を付けていくのだ。
原稿は長めに書き、時間に合わせて削っていく。短い原稿に足していくと、内容がぼける。
最初のプレゼンの日。評価の絶対条件は、10分プラスマイナス1分の時間管理。これをクリアーしなければ、評価されない。9分経過したところで、「1分前」と書かれたカード上がる。
この時点で終われば、合格。クラスメートの軍人は、ちらっとカードを確認し、プレゼンを続けている。30秒前。彼は、結論を話したところで、姿勢をまっすぐにして聴衆を見渡し、一息つく。
すると、前列にいたタイム係が、テレビ局のアシスタントのように指でカウントダウン始めた。
10秒前、9秒前、8秒前…..3!,2!,1!“This concludes my brief!”「これで終わります!」
<時間管理って、秒までこだわる?>
クラスメートは、満面の笑みで、演題から降り、タイム係とハイタッチをしている。彼以前にプレゼンした学生は、1分前のカードが上がった直後に終わったり、11分を超えた者もいた。
私も、ハイタッチの輪の中にはいり、”Treffic!(すごいね!)”なんて言いながら祝福する。
しかし、なぜそんなに嬉しいのかが、いまいち留学生の私には理解できなかった。(汗)
隣の席のクラスメートに、「時間ぴったりだと、かっこいいねえ!」とふってみると、「ピッタリじゃなくてもいいんだ。プラスマイナス10秒だからな!」と返してきた。
「え?プラスマイナス10秒って、どういうこと?」と問い返すと、プラスマイナス10秒の範囲であれば、評価は最高の「優秀」(Excellent)になるということだった。
1分以内であれば、評価は「良好」(Satisfied)となる。satisfyは「満足できる」という意味で、Excellenceと satisfiedでは雲泥の差がある。数秒までこだわる時間管理、目から鱗が落ちる瞬間だった。
<時間管理、秒までこだわる訳>
時間管理の重要性は、当たり前のように説かれている。英国が7つの海を支配できたのは、正確な航海時計を手に入れたことだといわれているが、時間管理の実感はなかった。
正確な時間がわかれば、時間管理ができるのか?という素朴な疑問が私にはあった。その疑問に答えてくれる訓練が米軍にはあったのだ。一秒を正確に自分で刻むことができるかという訓練。
10秒、30秒、45秒、1分などの単位で、1秒、2秒、3秒と、時計を見ずに、自分の感覚でカウントしていくのである。そして、感覚と実時間の差を体感しながら修正していく。
慣れてくるとかなり正確に60秒をカウントできるようになる。その基準を体に叩き込む。その時間感覚が必須な軍事作戦を紹介しましょう。敵味方とにらみ合った場面が想定されている。
敵と向かい合った戦場で、敵に「突撃」をかける場面だ。簡単に説明すると、敵の防御しているところに踏み込んでいくことを想像してほしい。そこに味方の部隊が、大砲の弾を大量に落とすのだ。
敵の頭の上に大砲の弾が降ってくる。弾に直撃され命を落とすものもいれば、隠れていた陣地が崩れて生き埋めで戦死する者もいる。射撃されている敵陣地には入れない。味方の射撃で死ぬことはあり得ない。
敵陣地の前で、地に伏せ味方の射撃が終わるのをまっているのだ。射撃が終わる直前に、連絡が入る。「最終弾落下、30秒前!」味方の射撃が30秒後に終わるのだ。
その瞬間、「兵士は皆、自分の時計をみる!」ということはない。ここで研ぎ澄まされた時間感覚が必要なのだ。リーダーは、しっかりとカウントダウンし、最後の弾が落下した瞬間、命令する。
「突撃に~すすめ!」
お判りいただけただろうか。一秒にこだわる理由のひとつである。軍の行動は、秒刻みでする行動だけではない。10分という感覚も時間管理の一つの重要な時間単位だ。
冒頭で、プレゼン原稿を書き、10分の時間間隔をつけるために、何度も音読すると書きました。
アカデミーでは、時間感覚を身に付ける目的をもって、プレゼンを重要視しているのです。
<時間感覚がない時間管理は絵に描いた餅>
軍のリーダーは、限られた時間で要求されたことを実現することが求められます。30秒で話せ!、1分で伝えよ!、10分のプレゼンをしろ!という要求に応えられる時間感覚を身に付けます。
次に、その限られた時間で、自分が何をできるかという行動の見積もり立てます。この2つがリンクすることで、無理のない計画を作ることができるようになるのです。
時計をにらみながら、計画をたてる。この仕事なら30分ぐらいでいいだろうと、当てずっぽうな計画を作れば、実行段階で無理が生じたり、無駄な時間がでたりします。
時間感覚が伴わない時間管理は、絵に描いた餅なのです。結局役に立ちません。
時間感覚をつけると自分の行動見積もりができる。自分の行動と時間がリンクすることで、時間内に何ができるかが具体的になり、計画に無理がなくなるのです。
これは、英語の勉強をする場合にも応用ができます。社会人として忙しい中、英語の勉強時間を取るのは隙間時間の活用がキーですね。
隙間時間5分で何ができるかという考え方ができると、勉強の効率化を図ることができます。その感覚と計画で、1時間にどのくらい勉強できるかの基準ができます。計画は実行性があがります。
英語の学習計画が、効率的で無理がない。短時間に何ができるかいう時間感覚と体験をもとにした見積りは、非常に有効で、生活にしっかりと英語学習を定着させてくれます。
英語ペラペラのための生活の基礎になりますよ。
執筆家・英語教育・生涯教育実践者
大学から防衛庁・自衛隊に入隊。10年間のサバイバル訓練から人間の生について考え、平和的な生き方を模索し離職を決断する。時を同じくして米国国費留学候補者に選考され、留学を決意。米国陸軍大学機関留学後、平和を構築するのは、戦いを挑むことではなく、平和を希求することから始まると考えなおす。多くの人との交流から、「学習することによって人は成長し、新たなことにチャレンジする機会を与えられること」を実感する。
「人生に失敗はなく、すべてのことには意味があり導かれていく」を信念として、執筆活動を継続している。防衛省関連紙の英会話連載は、1994年1月から掲載を開始し、タモリのトリビアの泉に取り上げられ話題となる。月刊誌には英会話及び米軍情報を掲載し、今年で35年になる。学びによる成長を信念として、生涯学習を実践し、在隊中に放送大学大学院入学し、「防衛省・自衛隊の援護支援態勢についてー米・英・独・仏・韓国陸軍との比較―」で修士号を取得、優秀論文として認められ、それが縁で定年退官後、大規模大学本部キャリアセンターに再就職する。
修士論文で提案した教育の多様化と個人の尊重との考えから、選抜された学生に対してのキャリア教育、アカデミック・アドバイジングを通じて、キャリアセンターに新機軸の支援態勢を作り上げ、国家公務員総合職・地方上級職、公立学校教員合格率を引き上げ高く評価される。特に学生の個性を尊重した親身のアドバイスには、学部からの要求が高く、就職セミナーの講師、英語指導力を活かした公務員志望者TOEIC セミナーなどの講師を務めるなど、大学職員の域にとどまらぬ行動力と企画力で学生支援と教員と職員の協働に新たな方向性をしめした。
生涯教育の実践者として、2020年3月まで東京大学大学院教育研究科大学経営・政策コース博士課程後期に通学し、最年長学生として就学した。博士論文「米軍大学における高等教育制度について」(仮題)を鋭意執筆中である。
ワインをこよなく愛し、コレクターでもある。無農薬・有機栽培・天日干し玄米を中心に、アワ、ヒエ、キビ、黒米、ハト麦、そばを配合した玄米食を中心にした健康管理により、痛風及び高脂質血症を克服し、さらに米軍式のフィットネストレーニング(米陸軍のフィットネストレーナの有資格者)で筋力と体形を維持している。趣味はクラッシック音楽及びバレエ鑑賞。
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