あなたはイタリアに「翻訳者は裏切り者」という諺があるのを知ってますか?
翻訳は大抵不正確。気をつけろよ、という意味でしょう。
でもまさに今日本で、一つの誤訳のせいで大きな弊害が蔓延…と聞いたらあなたは信じますか。
“social distance”「社会的距離」がそれ。どういうことでしょうか。
Socialには二つの意味。「社交上」と「社会的」。
いわゆるsocial distanceはお喋りの時の対人距離のこと。なら「社交上の距離」のはず。大袈裟な「社会的距離」という誤訳の為、離れすぎるは、話もしないはで社会がバラバラ…これが私の意見
<話すか、話さないか>
この誤訳説の当否はともかく、日本では赤の他人とは気楽に話さないのが普通みたい。例えば
レストランなどの「相席」。相席状況で見知らぬ人と話すことは滅多にないようです。逆に話しかけたら警戒される…というのがコロナ前でも普通だったのでは。
それと真逆なのがアメリカ。40年程前の留学時、アメリカ人は誰かれ見境なくこんなに喋るのかと何度も驚きました。
ホストファーザーにそう言うと、”It’s small talk!”(スモールトークさ)と。意味があまりない会話のことで、赤の他人と人間関係作るんだよとも言われました。
そしてコロナ禍の今、かたや日本では赤の他人との会話が完全消滅したみたい。
<黙る不自然さ>
でも今の複雑な世の中。他の人との協力・協働なしではどう考えても生きていけない。例えば今身に着けているモノ一つとっても、無数の手を経ている。何千何万人の手か想像できない。大勢の協力・協働状況は、日用品、ガス・電気・水道…ありとあらゆる物の生産・流通などに及びそう。
実際は複雑な絆が出来ている赤の他人同士。それなのに押し黙ってるのは変では。少しは言葉が出ても良いと思います。気楽な時候の挨拶まで躊躇う理由はどこにあるのでしょう。
<スモールトークの意外な効用>
日本文学研究者のR. キャンベル氏はある所で、赤の他人でも言葉を交わそうと提案していました。例えば歩行者同士が信号待ちの時、無言じゃなく一言天気の話をするとか。それが社会の風通しを良くする第一歩だとも。これってつまり、スモールトーク推奨では。(勿論感染は注意しつつ)
また特にあなたに付け加えたい事が。英会話って実はスモールトーク。真剣な深い話など先の先。英会話がうまくなりたいなら、見知らぬ日本人とのスモールトークは効果的なイメトレかも。
英語の諺に
A little goes a long way.
(少しが大いに役に立つ)
というのがあります。たとえ一言でも、されど一言。おまけに英会話イメトレにも….ならばもじって
A little goes long ways.
(少しが色々な面で大いに役立つ)
とも言えそう。
大変な状況下ですが、見知らぬ人との一言が、気持ちよく過ごせることにつながると良いですね。
See you next week!
Jiro
追伸
頭のイタリアの諺は、Traduttore è traditore. (トラドゥットーレ エ トラディトーレ)と原語ではリズムが良いらしい
Social distanceの類似表現の中、今回は最も人口に膾炙しているモノで書いた。
日本の貧困は見えない ロバート・キャンベルさんの提案
https://digital.asahi.com/articles/ASNBF6WFNNB7UHBI029.html?iref=pc_rellink_02
2020年10月19日
私立学校に英語教師として勤務中、40代半ばに差し掛かったころ、荒れたクラスを立て直す策として、生徒に公言して英検1級に挑戦することを思い立つ。同様の挑戦を繰り返し、退職までに英検一級(検定連合会長賞)、TOEIC満点、国連英検SA級、フランス語一級、スペイン語一級(文科大臣賞)、ドイツ語一級、放送大学大学院修士号などの成果を得る。
アメリカで生徒への対応法を学ぶ為に研修(地銀の助成金)。最新の心理学に触れた。4都県での全発表、勤務校での教員への研修を英語で行う。現在も特別選抜クラスの授業を全て英語で行っている。「どうやって単語を覚えればいいですか?」という良くある質問に答える為、印欧祖語からの派生に基づく「生徒には見せたくない語源英単語集」を執筆中。完成間近。常日頃洋書の読破で様々な思考にふれているが、そうして得た発想の一つを生かして書いた論文がコロナ対策論文として最近入賞。賞品の牛肉に舌鼓をうっている。元英検面接委員