今回もアメリカのコミュニティでの出来事をお話しします。
アメリカで留学を成功させるかどうかは、自分の努力もありますが、誰かに支援してもらうことが、非常に重要です。その一つがHost Familyの存在。
アメリカ陸軍の留学生支援は大変ユニークで、「お見合い」があります。ホストファミリー希望者と留学生が、軽食を取りながら自己紹介し、お互いの相性を確認するのです。
まず声をかけられたのが、日系の陸軍大佐夫妻。日本人の奥様と丘の上のマンション(邸宅)で暮らす富裕層の退役軍人。これはSwatchにとっては、願ってもないホスト様です。
さらに、アメリカ人の老婦人が声をかけてくれた。娘(大学講師)と二人暮らしをしている。婦人は、俳句に興味があり、地域で英語の俳句会を催している。日本文化を深く知りたいのです。
今回話題にするのは、その俳句婦人と大学講師の娘です。婦人と娘は、金曜日の夜などに自宅に招待をしてくれる。私ともう一人、韓国陸軍の大尉のホストファミリーとなっている。
ある時、韓国大尉から連絡があり、金曜日に夕食に行くという。ホストファミリーからは、連絡がないので電話をしてみた。娘さんがでて、“OK! You can come home!” 「仕方ないわね。来てもいいわよ!」という感じ。
そのことを老婦人と話すと、娘さんは私のことを “He is shy!” と言っているそうだ。
「彼は、純粋でかわいい?」ということかな?と都合の良いように解釈していると婦人が言った。
娘が、あなたとは会話が成立しないから、「夕食に招待したくない!」と言ったそうである。
「が~~~ん!」 完全に嫌われている。
<現実を直視するアメリカ人>
かいつまんで言うとこんな話である。
老婦人は、俳句に興味があり、留学生のお見合いの場で意気投合した。食事の後は、自室で俳句の表現法やどのように季節と自分の気持ちを表すかなどを話したことで、私とは仲が良い。
一方、娘は、キャリアウーマンで、テキサス工科大学で教鞭をとっている。コミュニケーションを担当。これは私にとって好都合。コミュニケーション能力向上の講義が自宅で聞ける絶好のチャンス。
食事の時には、いつも韓国陸軍大尉が一緒。彼は熱しやすいタイプ。娘の話題に相槌を打ち、時に、テーブルをたたきながら持論を吐く。娘は大尉が大のお気に入りである。
私は、娘の滑らかな英語に聞き言っている。英語の論理展開というか、相手に伝えようとする意志が見える。私が黙っていると、前言を要約し、または言い換えて説明してくれる。すごい!
鮮やかなスピーチテクニックで、つい聞き惚れてしまう。だから、大尉のように、熱く語ることはない。
そんなことは彼女には分かっていない。ただ、うなずいているだけの日本人は「不気味」でもある。
英語が分かっているかいないかも分からない。時々、出来の悪い学生を見るような目をする。
こちらとしてはドキドキして聞いているのだが、その気持ちは、全然伝わらないのは当たり前。
それで、彼女は私のことを ”Shy!” と、彼女の学生でいえば、一番低い評価をしたのだ。
“He’s shy!” は、誉め言葉ではなく、自分のことを相手に伝えることができない、少しばかり抑鬱する問題を抱えている人を言うのである。学生ならば、単位をもらえない劣等生!を意味する。
外見の判断は、アメリカ人にとっては、それがすべての評価になる。日本人のように、斟酌や忖度して、他人を評価するような考えは皆無である。
見た通りの評価である。身なりが粗末であれば、貧乏人であり、豪華な毛皮を着ていれば、金持ちである。実際、アメリカではその判断で、間違いはない。
活発に意見を言う人は、リーダーであり、モノを言わない人は頭が悪く、自分で行動できないとみなす。人を評価するのに、面倒な理論はなく、現実のみを直視して判断するのだ。
<情報発信しなければ、存在価値がない!>
老婦人から娘の私への評価を聞いて、さらに、shyの意味教えてもらい、私はがっかりした。
ドキドキしながら彼女のコミュニケーション技術を習得しようと真剣に聞いていたのに。
言葉を発しない日本人は、アメリカ人にとって、自己主張できない劣等の人間に映る。アメリカでは、自分の考えを相手に伝えることができない時には、大変なことになる傾向がある。
情報発信しなければ、存在価値がないと考えているのです。さらに、危険な状態に陥ることもある。
日本では、あなたが何であるかを説明しなくても、だいたい雰囲気で知れるものです。
しかし、多民族国家、自由な思想の国では、見た目で判断することが重要。見た目以上に理解してもらうには、自分自身を説明しなければ理解してもらえないという大前提があるのです。
その個人情報を、アメリカ人は真剣に聞いて、あなたがどのような人間かを理解しようと努力します。その情報収集力は凄いです。そして、あなたを自分にとって有益かどうかを判断するのです。
情報発信は多ければ多いほど良いという考lえ方が、アメリカにはあります。ポイント加算型の会話方法です。その原点は、アメリカ人の母親が子供に指南する「早く、長く話しなさい」だ。
アメリカ人の話は、止まらないという経験ありませんか。とにかく長い。良く聞いてみれば、同じことを繰り返している。それが、アメリカ人として生きていくための会話法なのです。
長く話すとは、自分を主張できることの証明です。早く話すのは、短時間で多くの情報を相手に提供することを意味します。主張していることを、相手に納得させるのも重要なポイントです。
あなたの反応がなければ、同じことを延々と繰り返して、伝えようとする。
アメリカ人が子供のころから身に付ける、コミュニケーションスキルの一つなのです。
<すみ分けるための情報発信>
自己主張することが、非常に大切だと分かっていただけたと思います。子供のころは、自分を守ることになり、ビジネスでは自分の主張を相手にしっかりと伝える技術となって役に立ちます。
アメリカ人の社会は、階層化しています。富裕層、貧民層と住み分けがなされています。テキサスのようにだだっ広い地域でも、城壁のように塀で囲んだ住宅地域を見ることがあります。
警備員がいる門を通り、その中に入ると、駐車場があり、広い庭が広がり、乾燥地域なのに青々とした芝生が敷き詰められ、専用のプールがあります。
これも情報発信の一つです。私たちは、こういうところに住んでいる。つまり、金持ちなのですという情報を発信しています。警備は万全!リスクマネジメントをお金で買っているのです。
言葉ではない情報発信とはこういうことです。それは、コミュニティの中でもあります。コミュニティのパーティに客として招かれたときも、個人情報をいかに発信していくかです。
ある程度経済的に恵まれた中流層は、仕立ての良いシャツとアイロンのかかったコットンパンツを着て、パーティに出席します。
こういった世代に人気なのがラルフ・ローレン、アバクロといった品質にこだわったブランドです。
言葉による自己主張、着るものなど外見にこだわった自己主張。そういった複合的な自己主張により、アメリカ人は住み分けをし、コミュニティ内で自分たちの安全を図っているのです。
Swatchが経験したのは、テキサスの一部の地域での経験かも知れません。アメリカでは、安全で安心した生活は、日本のように行政がしっかりと保障してくれるものではありません。
基本的に、自分たちのコミュニティを形成して、住み分けをして、その中で安心・安全な生活を手に入れているのです。コミュニケーションによって、自分を理解させるということが大切なのです。
“You are shy!”は、あなたにとってどのような意味に聞こえるでしょうか。
情報発信は、結局、自分のことを守るコミュニケーション力だということです。
執筆家・英語教育・生涯教育実践者
大学から防衛庁・自衛隊に入隊。10年間のサバイバル訓練から人間の生について考え、平和的な生き方を模索し離職を決断する。時を同じくして米国国費留学候補者に選考され、留学を決意。米国陸軍大学機関留学後、平和を構築するのは、戦いを挑むことではなく、平和を希求することから始まると考えなおす。多くの人との交流から、「学習することによって人は成長し、新たなことにチャレンジする機会を与えられること」を実感する。
「人生に失敗はなく、すべてのことには意味があり導かれていく」を信念として、執筆活動を継続している。防衛省関連紙の英会話連載は、1994年1月から掲載を開始し、タモリのトリビアの泉に取り上げられ話題となる。月刊誌には英会話及び米軍情報を掲載し、今年で35年になる。学びによる成長を信念として、生涯学習を実践し、在隊中に放送大学大学院入学し、「防衛省・自衛隊の援護支援態勢についてー米・英・独・仏・韓国陸軍との比較―」で修士号を取得、優秀論文として認められ、それが縁で定年退官後、大規模大学本部キャリアセンターに再就職する。
修士論文で提案した教育の多様化と個人の尊重との考えから、選抜された学生に対してのキャリア教育、アカデミック・アドバイジングを通じて、キャリアセンターに新機軸の支援態勢を作り上げ、国家公務員総合職・地方上級職、公立学校教員合格率を引き上げ高く評価される。特に学生の個性を尊重した親身のアドバイスには、学部からの要求が高く、就職セミナーの講師、英語指導力を活かした公務員志望者TOEIC セミナーなどの講師を務めるなど、大学職員の域にとどまらぬ行動力と企画力で学生支援と教員と職員の協働に新たな方向性をしめした。
生涯教育の実践者として、2020年3月まで東京大学大学院教育研究科大学経営・政策コース博士課程後期に通学し、最年長学生として就学した。博士論文「米軍大学における高等教育制度について」(仮題)を鋭意執筆中である。
ワインをこよなく愛し、コレクターでもある。無農薬・有機栽培・天日干し玄米を中心に、アワ、ヒエ、キビ、黒米、ハト麦、そばを配合した玄米食を中心にした健康管理により、痛風及び高脂質血症を克服し、さらに米軍式のフィットネストレーニング(米陸軍のフィットネストレーナの有資格者)で筋力と体形を維持している。趣味はクラッシック音楽及びバレエ鑑賞。
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