英語を学習するというと,まず
読む(リーディング)
書く(ライティング)
聞く(リスニング)
話す(スピーキング)
というこれら4技能のスキルを高めることに注意を向けがち。
実際,日本の英語教育も「話す(スピーキング)」を
「話すこと[やり取り]」と「話すこと[発表]」の2つの領域に分け,
4技能5領域を中心に学習計画が組まれています。
もちろん,この4技能のスキルアップは大切。
でも,でもですよ。
もう一つ,大切なことがあるのです。
それは,誰もが知っていることなのに,でも知識として知らないこと。
それって何だと思いますか?
―その英語,通じません―
英語力って,一朝一夕で身につくものではないですよね。
一昔前にあった,「聞くだけで英語を話せるようになる」ってこともありません。
話せるようになるためには,やっぱりそのスキルのトレーニングが必要です。
でも,今回お話することはそういう英語力ではないのです。
それは何かというと,
「和製英語を知る」
ということ。
え?と思われた方もいらっしゃると思います。
私たちは結構,カタカナ英語を日常的に話しています。
それらなくして,現代の日本人は会話なんて無理,だと思うのです。
例えば,
A:今年は給料のベースアップが望めそうだから,新しいノートパソコン買おうかな。
B:ノートパソコンを買うなら,あの店がいいよ。
A:でもネットショップの方が安いじゃん?
B:そうだけどアフターサービスが充実してるから,結果的にはコスパはいいと思うよ。
のような会話を,
A:今年は給料の賃上げが望めそうだから,新しい手帳型電子計算機を買おうかな。
B:手帳型電子計算機を買うなら,あの店がいいよ。
A:でも電気通信網店の方が安いじゃん?
B:そうだけど販売後奉仕が充実してるから,結果的には費用対効果はいいと思うよ。
無理矢理私が考えたものもあるので,ちょっとニュアンスが違うかもしれませんが,それでも,「普段の会話をカタカナ語なしでするのはちょっと難しい」ということがわかると思います。
(賃上げや費用対効果等は普通に使いますけどね(^_^;))
私たちは,日々,かなりの数の英単語を会話の中で使っています。
それが英語圏でも通じる単語であれば問題ありません。
でも,英語と思って話していた単語が「実は和製英語だった」,ということもあるんです。
それを知らずに英語での会話の中で使ってしまったら,きっと相手は
「???」
ってなって「何のことだ?」と思うことでしょう。
「自分は和製英語だということくらい知ってるし,ちゃんと気をつけるから大丈夫!」
と思った方もいらっしゃるかもしれませんが,きっと
「え,これ英語じゃなかったの?」
というものもあるはず。
先程の会話例に出てきたカタカナ語の中で,和製英語はどれだと思いますか?
・「コスパは,【コストパフォーマンス】の略だから,和製英語」
・「ノートパソコンは,【ノートブック型パーソナルコンピューター】の略だから和製英語」
と答えたアナタ,正解!
でも,実はそれだけじゃないんです。
先程の会話のカタカナ語は
「すべて和製英語」なんです。
―じゃあ,英語では何て言うの?―
例文中に出てきたカタカタ語,実際の英語ではどのように表現するのでしょうか。
まずは,「ベースアップ」。
「基本」が “base”で,「上がる」を “up” と考えての “base-up”になったと考えられますが,英語ではこのようには言いません。
あえて言うのであれば, “pay raise”です。
“pay day”が「給料日」を表すので,「給料のアップ」は “pay raise” ということができます。
でもなぜか日本では,他にも多くの”up”が使われる傾向にあるんですよね。
イメージアップや体力アップ,よく使うと思いませんか?
でも,これらも和製英語。
イメージアップは,
“improve ~’s image”(〜のイメージを改善する)
または “enhance ~’s image”(〜のイメージを高める)
体力アップは,
“improve ~’s physical ability”(〜の身体的能力を改善する)
のように言うんですね。
さて,次の和製英語はノートパソコン。
「ノートパソコン」のことを英語圏では, “laptop computer”といいます。
“lap”とは,「座った際にできる膝から腰までの前モモ」のこと。
その部分の上 “top”に置いて使うから “laptop”と言うんですね。
でもなぜ日本では,「ノートパソコン」というのでしょうか。
調べたところ,ある大手電機メーカーが「dy○abook」というブック型パソコン(今で言うノートパソコン)を開発販売したのが最初だそう。
その後,他社メーカーも同じような「ブック型」を出したのだけれど,
「同じ【ブック】」は使えない,ということから,「ノートシリーズ」として販売したのだとか。
それから,「ノート」が定着したらしいですよ。
面白いですね。
次は, “after service”。
いかにも英語にありそうですが,英語では “after-sales service”と言います。
“sales(販売)”した後の “service”なので, “after-sales service”の方がピッタリくると思うのですが,日本人はなんでも略したがる傾向にあるので,アフターサービスとなったのかもしれませんね。
そして「コスパ」は言うまでもありません。
“cost performance” の略です。
このように,普段使っているカタカナ語を「英語圏でも同じ」と思って使ったら大変!
その説明にまた時間がかかっちゃうかも!?
―他にもあるカタカナ語―
最後に,思いつく「通じない和製英語」を書いてみたいと思います。
きっと「え,そうなの?」というものがあるんじゃないでしょうか?
◯「クレーム」
英語の “claim”は「主張する」が主な意味。「文句・不満」は “complaint”です。
◯「キーホルダー」
英語では “key ring”が通常使われます。
“key holder”というと建物を管理する人のように,「鍵を保持している人」という職業的に捉えられる可能性があります。
あとひとつは,たくさんの鍵をかける壁に取り付けるフックもkey holderと言えます。
◯「ノンアルコール」
よく「ノンアルコールビール」等言いますが,正しくは “alcohol free”です。
◯「マフラー」
英語では “scarf”です。
日本では女性が首に巻くものと思われがちですが,性別は関係なく,首に巻くものは “scarf”です。
“muffler”というと車やバイクなどのマフラーのことになってしまうので,きっと
「日本人は首にマフラーを付けるのか?」
と驚かれることでしょう。
◯「ムードメーカー」
場を明るくしてくれる人をこう呼びますよね。
これも和製英語。
会議などの最初に,緊張をほぐすために世間話をしたり,場を和ませることを “ice break”と言います。
「氷を割る」ことで緊張を和げる感じです。
雰囲気を明るくしてくれる人のことを英語では, “icebreaker”といいます。
◯「ドクターストップ」
「とうとうドクターストップかかっちゃってさぁ。」と言いつつ,どことなく自慢げにこう言う人っていますよね(笑)
英語ではドクターストップに当たる言葉はないと思います。強いて言うならば,
“doctor’s order”(医師の命令), “doctor’s advice”(医師の助言)でしょうか。
◯「カンニング」
入試などのニュースでは,「不正」という言葉が使われているので,最近はまだカンニングって使っているのでしょうか。
でも私たち世代はきっと使っているはず。
英語で “cunning”は「ずるい・ずる賢い」という意味。日本で言うカンニングは “cheating” と言います。
ちなみに, “cheating”には,「浮気」という意味もありますのでお気をつけを。
◯「パーキング」
これ,駐車場って意味で使いがちですよね。
アメリカでは, “parking lot”というのが一般的。イギリスでは, “car park” と言います。
他にもペットボトル,ストーブ,キャッチフレーズなどなどたくさんありますが,その説明はまた今度。
―知っておくことが大切―
冒頭にもお話したように,英語を身に付ける学習は4技能だけではありません。
今回紹介したように,私たちが普段使っている「カタカナ語」って,いかにも
「私は英語ですのよ!」
という顔をしていますが,実は通じない英語。
そこを知っておくことも,英語学習としてとても大切だと私は思っています。
お酒の席などで教えてあげると,ちょっとしたムードメーカーになれるかもしれませんよ。
でも,あまり言い過ぎると「ウザい」と思われてしまうかもしれませんので,気をつけましょう。
そして,お酒はドクターストップがかからない程度に,ほどほどにね。
それでは,また来週〜♪
英語教材開発・制作者
米国留学から帰国後、幼児・児童英語教師を経て、中学・高校英語、受験英語、時事英語等多岐にわたる指導を行い英語教師経験を積む。また、ホテル勤務での実践英語経験を積んだり、カナダにて現地の子どもたちの英語教育にも携わりながら、CertTEYL(世界での児童英語講師認定コース)の認定を受ける。さらに、青山学院大学でTutoringの研究員としても活動。英語講師養成のeラーニングコースの日本での立ち上げメンバーとなる。「現場での経験を教材に活かしたい!」と、現在は英語教材開発会社にて日々教材開発に勤しむ。高校入試用のリスニングトレーニング教材(塾・学校向け)は累計10万部以上のベストセラーとなる。英語教材開発の傍ら、全国の英語教師への研修なども行う。また、土堂小学校(広島県尾道市)での英語指導や、初の民間校長として一躍時の人となった藤原校長(当時:杉並区立和田中学校)が手掛けた英語コースの指導に2年間携わるなど、英語教育に関する多様な分野で活躍。大の犬好きから、ホリスティックケア・カウンセラーなどペット関連の様々な資格を取得し、ペットライターとしても活動中。