「Nice to see you, how have you been?」
先日、パンデミック禍で3年以上会えてなかった、本当に久しぶりにArturo’s(私が演奏しているお店)にみえた、お客さまに言われた言葉。
これ、日本語に直しちゃうと、ただ「久しぶり、どうしてた?」って言う感じだと思うんだけど、アメリカ人がこのセリフを言うとき、顔を笑顔でぐちゃぐちゃにして言うと、
「すっごい会いたくて、やっと、今日会えた〜!!良かった〜!、ほんと久しぶりだよね、どうしてた?元気だった?!」みたいなニュアンスがありありです。(笑)
大げさ、と言えば、それまでなのですが、こう言ってくれる人に出会うと、あー、生きててよかった、今日ここに来れて、ほんとによかった、みたいな気分になります。
このコロナ禍で、ニューヨーク中のレストランは、いきなり閉めなくてはならなくなって、ディナーをしながらライブでピアノを聞ける場所など一切なくなった2020年3月。
1年間クローズの後、レストラン自体は再開したけれど、それ以降、音楽を入れる店などはほとんどなくて、お客さまもコロナが怖くて、ほとんど店の中には入らず、真冬でもサイドウォークの屋外テーブルで食事を済ませるようになった。
私も週5日グランドピアノを演奏していたのが週2日になって、演奏する時間帯も変わり、なかなか、常連のお客さん達とも出会えなくなって、もう4年目にはいります。
そんな中で、偶然、私を見つけてくれた常連のご婦人。つかつかつかっとピアノの所へ見えて、冒頭のセリフです。元気だったのね、またこうやってピアノ聞かせてくれるのね、ああうれしい、どんなにかこの日を待ち焦がれていたことか。そんな思いが、一瞬に伝わりました。
見知らぬ人にかけられる言葉
「I love your haircut!」
(そのヘアカットいいね)、
「Wow, I like your purse! Where did you buy it ?」
(そのハンドバッグ、いいね、どこで買ったの?)、
エレベーターで出会っただけの人に言われる言葉。こちらの人は、誠にいいな、と思ったものを、思ったことを、すぐ褒める。相手を褒める。それが、見知らぬ人でも気持ちよくさせる。
これは別に、コミュニケーション・テクニックでも何でもなくて、単に通りすがりの人たちの間で普通に起こることなので、これがここアメリカでは、自然なのだと思う。
「こんなことを言って、変なふうに思われないといいな」とか、「こんなことを言うと、こう言われるかも」とか、気にするかもしれないけれど、「自分は自分」。自分の感性を押し留めるのではなく、可愛がってあげれば良いのでは、と思います。
見知らぬ人に声をかけるのに抵抗があるなら、まずは家族でも同僚でも友人でも、「あ、そのジャケット、彼女にすごく似合ってる」って思ったら、それを口に出して一言。今日の旦那様の髪型、いつもになく「ぴしっと決まっている」と思ったら、一言。相手を褒めると、自分も気持ち良くなりますしね。ね、みんなでそうしない?
日本人て、親切心から、家族に対して、そのスカーフに似合ってないな、とか、その髪型良くないな、とか、ついついネガティブなイメージを、親切のつもりで相手に伝えちゃってません?・・・でもそれは、結局は相手を傷つけちゃってるような、気がする。
褒められた際の返事
さて、今度は、何か褒められた際のお返事
「Thank you!」 以外に「You mede my day!」という返しがあります。
例えば、何か気分がぱっとしない時でも、出かけるときの駅のプラットホームで、すれ違いざまに、「わあ、そのジャケット素敵ね、マンハッタンで買ったの?」なんて明るい口調で話しかけられると、こちらまで気分が明るくなります、そんな時のお返事に、使います。
自分がいいと思ったらいい
自分がいいと思ったら、いいと言う。いい、と伝える。これは音楽でも、アートでも一緒。
よく日本では、芸術愛好家が少ない、と聞きます。人が良いといっているから、雑誌に出ていたから、みんなが行くなら、と思ってチケットを買った、ではなくて、自分が良いと思ったから、良さそうと思ったから、と、「良い」と自然に表現したらいいのになぁ、と思います。
以上で、いまだにロングのダウンジャケットを着ているニューヨークからでした。5月のアタマだと言うのに、ほんと寒く、私は風邪をひいてしまいました。皆さま、日本は暖かいと思いますが、季節の変わり目なので、どうぞお体大切にされてください。
ではまた来週♫
Kayo
平木かよ / Kayo Hiraki
ニューヨーク在住 2017年より、世界屈指の米国グラミー賞の投票権を持つ。同じく米国スタインウェイ・ピアノ公認アーティスト。現在、グリニッジ・ビレッジのジャズの老舗「Arturo’s」のハウス・ピアニストとして、週に5日、自己のトリオで演奏活動を続けて26年目。ニューヨーカーに、スイングの楽しさを届けている。ベースの巨匠、ロン・カーターとのトリオで、ブルーノート・NYへも出演。JALの国際線機内誌でも、海外で活躍する日本人として大きく取り上げられた。また、舞台「ヴィラ・グランデ青山」では山田優がジャズシンガーに扮するシーンでの、ミスティーのピアノ伴奏。カナダ・トロント・リールハート国際映画祭でブロンズメダルを受賞した映画「Birth Day」への挿入曲提供と共に、ピアニスト役で出演。フランス・パリ日本文化会館での館長招聘コンサートや、台湾にて、最大規模を誇る、台中ジャズフェスティバルへの出場など、世界を股にかけるスイング感あふれる彼女のピアノとボーカルには、定評がある。定期的に、くにたち音楽大学ジャズ専修で講義を持つ。