テレビを見るわけでもなくつけていたら,
とある自治体が「学習ドリルを無償提供する」
というニュースが聞こえてきました。
「ドリルかぁ,なつかしいなぁ。」
と思ったのと同時に家族から
「ドリルってなんでドリルなの?」
という質問が。
たしかにそう思いますよね。
あなたなら,どう答えますか?
―ドリルと防空演習?―
数年前,職場の旅行で台湾へ行ったときのこと。
私は永年勤続休暇をいただき,同僚たちが帰国した後も台北を楽しんでおりました。
ある日,台北にあるパートナー会社のスタッフからメッセージが届いたのです。
「前言ったこと覚えてる?今日の午後1時半〜2時までは, “air-raid drill” だから絶対に建物の中にいてね。
外を歩いている人は罰金取られちゃうから!(実際は英語)」
滞在先のホテルでも,全く同じ説明を受けました。
私たち日本人にはあまり馴染みがないのですが,
“Air-raid drill”とは,
「防空演習」のことだそう。
台湾では,緊急事態に対する危機意識,さらに実際に緊急事態が発生した際の対応練度を高める目的で,この防空演習が毎年実施されているそうなのです。
午前中は街中を散策し,昼にはホテルへもどって大人しくしておりました。
午後1時半になるとサイレンが鳴り響き,ホテルの窓からみても誰も歩いてないし,
車も走っていません。
先程まで賑わっていた街の様子が,一瞬で一変。
テレビでも,画像のように訓練の様子が放送され,
日本人として考えさせられる時間でもありました。
と,話がちょっとそれてしまったような気がしますが,これも「ドリルの秘密」を解く大切な要素。
ホテルで配布された紙にも書かれているように,
防空演習は,英語で “An air-raid drill”と表記されているんですね。
そうなんです!
“drill”が入っているんですよ。
“drill” というと,「学習ドリル」の他には「工具のドリル」くらいしか思いつきません。
でも,英語の “drill”には,
「教練,訓練」
という意味もあるのです。
だから,学校や職場などで行われる「火災訓練」も,
“A fire drill”
と言うんです。
また動詞になると,
My father drilled into me to be polite anytime.
(私の父は,いつでも礼儀正しくあるようにと私に叩き込んだ。)
のように,
「しっかりと教え込む,叩き込む」
という意味でも使われるのです。
しっかりした「教え,訓練」という感じがしますよね。
―じゃあ,工具のドリルは?―
すでに「訓練,教練,教え込む,叩き込む」というイメージをお話したので,
「学習」になぜ「ドリル」が使われるのかは,ピンと来た方もいらっしゃると思います。
そうなんです!
大正解(笑)
大正解ですけれど,ではなぜ工具で使われるドリルも “drill”なのでしょうか。
“drill” の基本となる意味は,
「訓練,教練,練習」。
この中には,
何度も繰り返し[反復練習]し,
しっかりと定着させるための[訓練][練習]
という意味が含まれているんです。
ですので,学習ドリルもしっかり反復練習して身につけるための「練習」なのですね。
そして,工具のドリル。
みなさんご存知の,木材や金属などに穴を開ける道具です。
ここでちょっとイメージしてみてください。
木材や金属に穴を開けるために,ドリルはどのように動いていますか?
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イメージできましたでしょうか。
ドリルの先端がグルグルと回転するイメージ,湧きましたか?
回転していますが,でもあちこち動いているわけではありません。
同じ箇所,一点をグルグルと回転しています。
そうすることで,「穴を開ける」という目的に繋がります。
訓練も練習も同じ。
「繰り返し行うことでその知識や技能が身につき,定着する」のです。
訓練や練習も,繰り返し何度も行ってその技術をしっかりと身につける。
学習ドリルも,繰り返し何度も問題を問いたり,漢字を書いたりして知識を定着させる。
工具のドリルも,先端が一点をグルクルと回転して穴を開けるという目的を果たす。
一見,学習ドリルと工具のドリルは関係のないように思いますが,
こう考えると,
「あ,ちょっと繋がってるかも?」
って思いませんか?
その「発見」が,線となり “drill” という英単語に関連する「複数の意味」が一度に覚えられるようになると思うんですよね。
やっぱり言葉っておもしろい!
機会があったら,このドリル話を誰かに話してみてくださいね。
その時は,絶対にドヤ顔でお願いします。
あ〜,最近忙しくて4月中旬から英語の勉強をサボっている私。
進んでいないテキストを,しっかりと“drill”しなくては!
それではまた来週〜♪
英語教材開発・制作者
米国留学から帰国後、幼児・児童英語教師を経て、中学・高校英語、受験英語、時事英語等多岐にわたる指導を行い英語教師経験を積む。また、ホテル勤務での実践英語経験を積んだり、カナダにて現地の子どもたちの英語教育にも携わりながら、CertTEYL(世界での児童英語講師認定コース)の認定を受ける。さらに、青山学院大学でTutoringの研究員としても活動。英語講師養成のeラーニングコースの日本での立ち上げメンバーとなる。「現場での経験を教材に活かしたい!」と、現在は英語教材開発会社にて日々教材開発に勤しむ。高校入試用のリスニングトレーニング教材(塾・学校向け)は累計10万部以上のベストセラーとなる。英語教材開発の傍ら、全国の英語教師への研修なども行う。また、土堂小学校(広島県尾道市)での英語指導や、初の民間校長として一躍時の人となった藤原校長(当時:杉並区立和田中学校)が手掛けた英語コースの指導に2年間携わるなど、英語教育に関する多様な分野で活躍。大の犬好きから、ホリスティックケア・カウンセラーなどペット関連の様々な資格を取得し、ペットライターとしても活動中。