いきなりですが、想像してみてください。
あなたは今、欧米の国にいます。
ヨーロッパ、アメリカ、オーストラリア、どこでも構いません。
お好きな国にいることを想像してみてください。
現地の友人と食事をしています。
するとその友人から、
「わあ、フォークやスプーン使えるんだね。上手~!」
そう言われたら、あなたならどう反応しますか?
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おそらく多くの人は、
「え、日本だって普通にフォークもスプーンも使うよ。」
「洋食だってあるし、中華料理だってスプーン使うし」
と思いますよね。
実はこれと全く同じことを日本人はよくしているのです。
欧米諸国などから日本に来ている人たちに対して。
「箸の持ち方上手いですね。」
「箸の使い方お上手ですね。」
少なくとも、私がこれまで一緒に働いてきたイギリス人やアメリカ人、ニュージーランド人は、
「大昔じゃあるまいし、日本食レストランって今は世界中にある。中華料理だって
日本食以上にあるし箸も使う。箸を使う機会は結構ある。ましてや私たちは日本に住んでいる。箸が使えることくらい想像できるでしょう?それなのに日本人はいつもそうやって『褒めて』くる。これって案外失礼なんだよね。」
と言っていて、それに対してその場にいた日本人以外のスタッフは大きく頷いていました。
確かに外国出身者だとしても日本で生活しているんだから、箸が使えても不思議ではないですよネ。
でも「褒めた」日本人だって、別に悪気があるわけではありません。
本当に「わあ、箸が使えるんだ、すごいな、嬉しいな。」と思っていると思うのです。
でも、それはあまりにも「世界のこと」を知らないから。
「外国から来た人=箸を使わない文化」と思い込んでしまっているからだと思うのです。
私の上司はカナダ人です。
日本にはもう25年くらい住んでいて、日本人並みに日本語を話すことができます。
「その件に関しては、別途検討が必要ですね。」
なんて普通に言える日本語のレベル。
でも先日、その上司もこんな愚痴を言っていました。
「銀行やお店、カフェなどに行って、こちらが『日本語』で話したり注文したりしているのに、ほとんどの人は『英語』で返答してくる。なんでだ!?」と。
私はそれも、「欧米人の見た目=日本語ができない」という思い込みからだと思うのです。
同じことはレストランなどでもよくあるそう。
日本人と一緒に食事を注文していると、その上司の注文にもかかわらず、
店員さんは「別の日本人に注文を確認する」というのです。
店員さんからしてみれば、ちょっと緊張してしまったのかもしれませんが、
注文した本人にしてみれば、やっぱり「ちょっと失礼」に感じるのです。
それってやっぱり「世界を知らないから」だと思うのです。
日本人はシャイな国民性なのか、昔は鎖国をしていたからなのかわかりませんが、
他国の人たちと比べると「外国の人に対する免疫力が低い」のではないかと思います。
特に欧米諸国の人々に対しての免疫力が圧倒的に低い…。
鎖国をしている時代ではないのですから、もうそろそろ意識を変えていった方がいいと思うのです。
私は、日本で欧米諸国の人たちと初めて会話するときは、相手が英語で話してこない限り
「日本語」で話すようにしています。
たとえば、道を尋ねられた時。
相手がたどたどしくても、日本語で一生懸命に話してくれば日本語で返します。
その状況を見て、「あ、もしかすると英語の方がいいのかな」と感じたら、
「英語で話しますか?」 と聞いてから、相手の反応を見て英語で話すようにしています。
私たちが海外へ行って「その国の言語で」買い物したり、コミュニケーションをとろうしたりするように、日本にいる外国の人たちだって、
「日本にいるんだから、基本は日本語を使おう」と思っているのです。
それなのに、「日本以外の国から来た人=日本語ができないだろう」と勝手に解釈するのはちょっと早合点。
ましてや、日本語で話しかけてくれているのに英語で返すなど言語同断、無礼千万…、
とまではいかないと思いますが、きっと相手を残念な気持ちにさせてしまうでしょう。
また、流暢な日本語を話す人に対して、必要以上に「ゆっくりと話す」のも失礼です。
それは「余計な気遣い=詮索」なのかもしれません。
状況を見て、「普通」に接することが一番、お互い心地よいのです。
状況を見て、ですよ!(←ここ大事)
ちなみに、多くの人はご存じかと思いますが、
「外人」という言い方もやめましょう。
自ら「ガイジン」と言って自虐的に言う外国人もいますが、それはわざとです。
外国人、という呼び方も差別的にとらえられてしまう可能性があります。
日本人からすると、「日本以外の国の人を呼ぶんだからいいんじゃない?」と思う人もいるかもしれません。
また、「別の差別的に言っているわけではないよ。だって『外人さん』ってちゃんと『さん』をつけて言ってるもの。」という人もいるでしょう。
それダメーーー!です。
それは
「日本から見た『よその国の人』」という意味で、その他の国の人を呼ぶわけですよね。
多くの人たちは、「部外者」のように呼ばれていると感じてしまうのです。
彼らは「自分はアメリカ人」「自分は中国人」のように、自分のアイデンティティを大切にしています。
ですので、なるべくその方の出身の国で言ってあげるようにしたいものです。
これ、実は英語の “foreigner(外国人)”という単語でも同じような感覚があるのです。
公的な書類などには “foreigner”と書かれていたりしますが、
実際の会話などで使うと「差別的」ととらえられてしまうこともあるのです。
日本人がアメリカなどにいて、 “Oh, you are a foreigner!”(あ、君は外人だ。)なんて言われたら、ちょっと嫌ですよね。
やっぱり「私は日本人ですよ。」って言い返したくなっちゃう。
そんな感じです。
なので、日本にいる外国籍の人に使うときには注意しましょう。
さて、冒頭のお箸の話だけではありませんが、日本にいる海外から来た方たちも「郷に入っては郷に従え」の精神で、日本に馴染もうとしている人がほとんど。
その気持ちも汲んであげて、お互い良い関係を築き上げていきたいものです。
そのためには私たち日本にいる日本人も、
そろそろ本当の意味での
「心の開国」をしなければならない時なのかもしれませんね。
英語教材開発・制作者
米国留学から帰国後、幼児・児童英語教師を経て、中学・高校英語、受験英語、時事英語等多岐にわたる指導を行い英語教師経験を積む。また、ホテル勤務での実践英語経験を積んだり、カナダにて現地の子どもたちの英語教育にも携わりながら、CertTEYL(世界での児童英語講師認定コース)の認定を受ける。さらに、青山学院大学でTutoringの研究員としても活動。英語講師養成のeラーニングコースの日本での立ち上げメンバーとなる。「現場での経験を教材に活かしたい!」と、現在は英語教材開発会社にて日々教材開発に勤しむ。高校入試用のリスニングトレーニング教材(塾・学校向け)は累計10万部以上のベストセラーとなる。英語教材開発の傍ら、全国の英語教師への研修なども行う。また、土堂小学校(広島県尾道市)での英語指導や、初の民間校長として一躍時の人となった藤原校長(当時:杉並区立和田中学校)が手掛けた英語コースの指導に2年間携わるなど、英語教育に関する多様な分野で活躍。大の犬好きから、ホリスティックケア・カウンセラーなどペット関連の様々な資格を取得し、ペットライターとしても活動中。