こんにちは
NYのKayoです。
日本にいた頃は、毎年お正月が近づくと、年賀状を書くのが年末の大事な行事でした。
今では、SNSの「アケオメ!」で、新年のあいさつを済ませてしまう人たちも多いようですが、今になって思えるのですが、あの紙の年賀状には、独特のぬくもりがありました。
元旦の朝、玄関先のポストを開けると、届いているたくさんの年賀状。父、母、私の分と仕分けをしながら、「お父さんのはいつも多いなぁ」と羨ましく思ったものです。
そして1月15日には「お年玉くじ」の当選番号発表。新聞を片手に、家族3人で当選番号を探すのが毎年の恒例でした。たいてい当たるのは切手シートくらいでしたけれど、それでも小さなワクワクがありました。
今思えば、あの頃の年賀状は単なるあいさつ状ではなく、こたつとみかんとともに年の始まりを家族で味わう、お正月の風景、そのものでした。
年賀状文化
日本の年賀状には、「年の初めに言葉を交わす」ことを大切にする文化が、根づいているのだそうです。
干支の絵やおめでたい言葉を添え、一年の無事や幸せを祈る。書く側も、もらう側も心が少し改まる。これは、四季や節目を重んじる、日本人ならではの感性だと思われます。
ただ、今ではその風習もだいぶ姿を変えていますね。郵便局の年賀はがき販売数も年々減り、宛名はプリンターにお任せ。手書きの年賀状は本当に数えるほどになったようです。
忙しさやデジタル化の波もありますが、手書きや紙の手触りに込められた思いは、やはり特別なものですよね。
デザイン重視のクリスマスカード
一方アメリカに来てからは、年賀状の代わりに「クリスマスカード文化」を楽しむようになりました。
こちらは、とにかく種類が豊富。宗教色のあるものから、かわいい動物や雪の風景まで、大きな店の棚いっぱいに並びます。1枚5-10ドルほどするものも珍しくなく、あれこれ選んでいるうちにけっこうな出費になるのですが、それもまた年末の恒例行事。
少し節約したい人は、10枚セットの箱入りカードをまとめて買ったりもします。
便利なのは、ほとんどのカードに「Merry Christmas and Happy New Year!」など、あいさつ文が、あらかじめ印刷されていて、書き足すのは名前だけ、という合理的な仕組みです。
それでも、カードを受け取った側はとても嬉しそう。届いたカードは、暖炉の上やリビングの棚に並べて飾られます。なので、送った先で人の目に触れるものだから、少し上質なデザインを選びたくなる、、、そんな、見栄もどこか、微笑ましいものです。
そう、人の心はアナログ
考えてみれば、年賀状とクリスマスカード、どちらも、一年に一度「会えない人へ気持ちを伝える」ための文化。ただ、その根っこには少し違いがあるようです。
日本の年賀状は「新しい年を、ともに祝う」縁起の儀式。神社での初詣と同じように、年の始まりを清らかに迎える意味が。
一方、アメリカのクリスマスカードは「家族や友人との結びつきを強める」ための温か〜い風習のような感じ。
クリスマスが宗教的行事である一方で、カードを贈る習慣には、宗教抜きにして、人とつながる喜びが感じられます。
私は、この季節にはアメリカのクリスマス関連の曲を演奏する機会が多いのですが、歌詞には、「このクリスマスを、あなたと過ごせたら」(過ごせない理由がある。つまりこの彼は、戦地に赴いているので)、というような曲もあり、なんかキュンとします。
クリスマスを家族と過ごすことが、アメリカ人にとって、とても大きな喜びなんですね。
最近はEメールやSNSのスタンプひとつで済ませてしまうことも多くなりましたが、やはり紙のカードには、指先の温度とインクの匂いがありますよね。
年に一度、ポストを開けて誰かからの思いが届く、、、それだけで、心の中が少し明るくなる気がします。
デジタル化がどれほど進んでも、やっぱり人の心はアナログ。このクリスマスには、またお気に入りのカードを選んで、遠く離れた友人へ、ゆっくりペンを走らせてみようと思います。受け取った人の笑顔が、今から、目に浮かびます。そんな心の余裕ができてきた、最近のお年頃にもちょっと感謝。
寒さがだんだんと厳しくなってきました。お忙しい季節かと思いますが、どうぞお風邪など召されませんように。
それではまた来週♫
Kayo
平木かよ / Kayo Hiraki
ニューヨーク在住 2017年より、世界屈指の米国グラミー賞の投票権を持つ。同じく米国スタインウェイ・ピアノ公認アーティスト。現在、グリニッジ・ビレッジのジャズの老舗「Arturo’s」のハウス・ピアニストとして、週に5日、自己のトリオで演奏活動を続けて26年目。ニューヨーカーに、スイングの楽しさを届けている。ベースの巨匠、ロン・カーターとのトリオで、ブルーノート・NYへも出演。JALの国際線機内誌でも、海外で活躍する日本人として大きく取り上げられた。また、舞台「ヴィラ・グランデ青山」では山田優がジャズシンガーに扮するシーンでの、ミスティーのピアノ伴奏。カナダ・トロント・リールハート国際映画祭でブロンズメダルを受賞した映画「Birth Day」への挿入曲提供と共に、ピアニスト役で出演。フランス・パリ日本文化会館での館長招聘コンサートや、台湾にて、最大規模を誇る、台中ジャズフェスティバルへの出場など、世界を股にかけるスイング感あふれる彼女のピアノとボーカルには、定評がある。定期的に、くにたち音楽大学ジャズ専修で講義を持つ。





