こんにちは
NYのKayoです。
夜、ベッドに入ってからスマホを触る──きっと日本でもアメリカでも、多くの人がやってますよね。ベッドの中でこそこそするのって、何か楽しい。子供の頃、親に怒られながらも、こっそりベッドの中で、大好きなシャーロック・ホームズの本を読み続けていたことを思い出します。
で、そのスマホの「使い方の目的」には、どうやら日米では、大きな文化の違いがあるように思えます。
寝る直前まで、SNSが気になる日本人
日本の友人たちに聞くと、「寝る直前までLINEを返してた」「ニュースを見てたら目が冴えちゃって」「ベッドに入ってからが、やっと私自身の時間!」と笑いながら言います。
どうやら日本では、寝る前のスマホは、情報の締めくくりのような存在らしい。一日の終わりにニュースやSNSをチェックし、明日の予定をしっかり頭に入れて、頭を休めないまま眠りに落ちていく。
まるで仕事や社会と、最後の最後までつながっていなくちゃ、って言うような感じ。
さざ波のBGMで眠りたいアメリカ人
一方、ここニューヨークでは少し違います。アメリカ人の多くは、夜は「wind-down routine ワインド・ダウン・ルーティーン(気持ちを落ち着ける時間)」を大切にします。
スマホを使うとしても、YouTubeやSpotifyでリラクゼーション音楽を流したり、睡眠用Podcast(ポッドキャスト)を聞いたり。さざ波の音や雨の音のBGMも人気です。まるでスマホを、デジタル・ラジオのように使うのです。
彼らにとってスマホは、社会とのつながりではなく、子守唄代わり、って言う感じ。同じデバイスなのに、使い方がまるで正反対なのが面白いところです。
アメリカでは“digital detox” デジタル・デトックス(デジタル断食)や、“tech detox” テック・デトックス(スマホやパソコンなどのデジタル機器から一定時間離れること)という言葉もよく聞きます。「夜9時以降はスクリーン禁止」などと自分でルールを作る人も多い。子どもたちの学校でも、「寝室にスマホを持ち込まないように」と保護者に呼びかけるほど。
それに比べると日本では、スマホを枕元に置いて充電しながら、最後の1分までSNSをチェック……という人がまだまだ多い印象です。
さて、気になる電磁波は
おもしろいのは、「電磁波を気にする」割合が、逆に日本の方が高いらしい。
アメリカでは科学的と言われる根拠を重んじる人が多く、「**1 foot(約30センチ)**離せば問題ないでしょ」とあっさり。
でも日本では、「Wi-Fiは体に悪いらしい」と聞くと、すぐにルーターの電源を切っちゃう人もいる。
それなのに、眠りを浅くしてしまうSNSはやめられない……なんだかこの矛盾、とっても人間らしいですよね。
私はというと、最近は目も疲れやすくなったので、ベッドに入ったら画面は見ずに音だけ。スマホを頭から30センチほど離して、YouTubeの音声をBGMのように流しています。
これが意外と心地よくて、いつの間にか眠ってしまうんです。そういえば、幼い子どもに大人が絵本の読み聞かせをしてあげますよね。まさにその感じ。
先ごろはまっているのが、彦一とんち昔ばなし(笑)。少し前は源氏物語を54帖、聞きました。いろいろな先生方の解説YouTubeもあり、とても楽しめました。
アメリカに来て、日本文学の解説をこんなにじっくり聞けるとは思わなかったので、**YouTubeさまさまです。**というわけで、もしかしたら私も、すっかりアメリカ的な「wind-down(ワインド・ダウン)」派になったのかもしれません。
ちょっと早めにベッドに入り、仄暗い部屋の中で、目をつむって源氏物語の朗読を聞く。思いは1000年前の平安時代に馳せて……なんて素敵な、寝る前の習慣でしょう。
お休みの前に、リラックス
考えてみると、日本では「頑張る」「我慢する」「ちゃんとしなきゃ」というような言葉が日常の中にあふれています。
アメリカ人はそれよりも、特に仕事以外の場所では「リラックスして」「楽しんで」という言葉をよく使う。仕事場で使う人もいます。同じ夜の過ごし方ひとつにも、そんな文化のメンタリティの差が見えるような気がします。
ストレス社会と言われる日本。でも、もしかしたら、寝る前の15分間の使い方を少し変えるだけで、心がふっと軽くなるかもしれません。
スマホを「社会との、本日最後の連絡手段」ではなく、心を解放して「眠りへのやさしいガイド」にしてみる。そんな小さな変化が、きっと翌朝の気分を変えてくれるのでは。
さて、明日からゆっくりお休みになっていただけるとうれしいです。**良い睡眠は健康に大きく影響すると言われています。**トップアスリートも睡眠をとても大切にしていますよね。大谷翔平選手が毎日10時間ほど睡眠を取るという話を聞いたときは、私も驚きました。
ぜひ皆さまも、ゆっくり良い睡眠時間を取れますように。
さて、それではまた来週♫
Kayo
平木かよ / Kayo Hiraki
ニューヨーク在住 2017年より、世界屈指の米国グラミー賞の投票権を持つ。同じく米国スタインウェイ・ピアノ公認アーティスト。現在、グリニッジ・ビレッジのジャズの老舗「Arturo’s」のハウス・ピアニストとして、週に5日、自己のトリオで演奏活動を続けて26年目。ニューヨーカーに、スイングの楽しさを届けている。ベースの巨匠、ロン・カーターとのトリオで、ブルーノート・NYへも出演。JALの国際線機内誌でも、海外で活躍する日本人として大きく取り上げられた。また、舞台「ヴィラ・グランデ青山」では山田優がジャズシンガーに扮するシーンでの、ミスティーのピアノ伴奏。カナダ・トロント・リールハート国際映画祭でブロンズメダルを受賞した映画「Birth Day」への挿入曲提供と共に、ピアニスト役で出演。フランス・パリ日本文化会館での館長招聘コンサートや、台湾にて、最大規模を誇る、台中ジャズフェスティバルへの出場など、世界を股にかけるスイング感あふれる彼女のピアノとボーカルには、定評がある。定期的に、くにたち音楽大学ジャズ専修で講義を持つ。

