先週に引き続き、ニューヨークで、私、Kayo HIRAKIが、ピアノ・パフォーマンスで4半世紀にわたりずっと演奏を続けている、グリニッジビレッジにあるArturo’s(アルトロ)のお話。
先週は、このイタリアンレストランの有名料理のお話をしました。
今週は、今までここArturo’sに来た、数多くの有名人のお話をしますね。
ここはニューヨークのダウンタウン、グリニッジ・ビレッジのど真ん中なので、立地も抜群に良いんです。
まずは、お店のオーナーが、今までで1番感動したのが、スティービー・ワンダー。
なんとここのグランドピアノで演奏し、歌も歌ってくれたのですって!残念ながら、これは30年ほど前の話で、私はまだニューヨークにいなかったのだけれど…。
そして、ワールドワイドに有名なミュージシャンの名前を上げていけば、ジャズの全盛期に一世を風靡した大御所シンガーのビリー・エクスタインや、トニー・ベネット、トランペット奏者のクリス・ボッティ。
ロック界でのスーパースターを並べるなら、ジョン・ボンジョビ、U-2のバンドメンバー全員、そしてディーバ(歌姫)では、テイラー・スイフト、セレーナ・ゴメスら。
そして映画スターも、大物が続々と。
スカーレット・ヨハンソン、ユマ・サーマン、ゲイリー・オールドマン、ブルック・シールズ、ショーン・ペン、シンディ・クロフォード、
私でも知ってるようなアカデミー賞常連のスターたちが、綺羅星の如く続々と。
そしてちょっとジャンルは変わって、アメリカではトークショーホストとして第一線で活躍中のコメディアン、ジミー・ファロンや、今は亡きJ・F・ケネディ・ジュニアも、ラザニアやピザに舌鼓を打って行ったそう。
20世紀の、アメリカの超有名人勢ぞろい、って言う感じですよね。
現在のオーナーに聞いたエピソードの中でも、特に興味深かったのは、以前のご主人と一緒に来店した映画女優ユマ・サーマン。タランティーノ女優として、キル・ビル一連の作品などでも有名な彼女が、店内に飾ってあった油絵を購入したいと申し出たそう。
その油絵は、店主アルトロの手によるもので、趣味のペインティングなんだけれど、彼女は特に気に入ったみたいで、それで、オーナーと交渉の末、金銭は発生させず、ユマの持ち物である、
アメリカ・NBAのニューヨーク・ニックス(人気のバスケットボールチーム)のオールスター(選手全員)のサイン入りバスケットボール🏀と、トレード(交換)したのだそうです。
(笑) すごいよね。売ちゃんと、本物だって言う証明書までつけてくれたそうです。
私の1番の思い出は、ここでギタリストのHiram Bullock(ハイラム・ブロック)と出会ったことかなぁ。去る2007年に急逝した、ニューヨークを代表する売れっ子ギタリストでした。ピアノも弾くし、歌も歌うし、曲も書くし、エンターティナーで、私は何枚も彼のアルバムを持っていたし、大好きだったのです。
その彼が、ピアノを演奏していた私のところに来て、「僕にも弾かせてくれないかな」って、尋ねられて。「うん、いいよ」って、ピアノ譲りました。その後、彼と話していて、彼が日本生まれだって言うことも知ったし、ピアノで連弾したり、曲作りに関して、いろんな話を聞けた。
具合が良くないって言ってたのにワールドツアーに出かけて、そのまま帰らぬ人になりました。彼との出会いは、とてもとっても、大切な、私の大事な思い出です。
ここArturo’s は、美味しいピザって言うだけでなく、週7日、毎晩2バンドずつ、NYでもほんとに人気のあるミュージシャンたちの演奏が深夜過ぎまで続くんです。
なのでニューヨーク中の、いやアメリカ中、世界中の良いミュージシャンたちが、チャンスさえあれば毎晩集まるお店で、私はそんな中にずっとこの四半世紀の間、いることが出来た。
増尾好秋さんも、ここで常任ギタリストとして演奏されていたこともあったし、その後もよく見えていました。日野皓正氏も見えました。
ここArturo’s で、自分が感激したミュージシャンの名前を挙げることは、余りに数が多すぎて容易ではありません。
私が今までジャズピアノを弾いてこられたのは、最初の頃に、この広いニューヨークで、この店で毎日のように演奏するチャンスをもらえたおかげだし、そしてこの場所が、私の人生をどんどんすごい方向へ引っ張っていってくれたことも事実です。感謝しても、しても、しきれない。
今日は、こんな私の感動を少しでも皆さんにお届けできれば。と思い書きました。
次回は、私のここArturo’s での演奏の一日を、お届けする予定です。
どうぞお楽しみに。
P.S.
これは、懐かしい20年以上前のフォトですが、、、わたし、若い!
P.P.S.
Arturo’s へ行く途中の風景です。
いつも、日によっていろんな色にライトアップされたエンパイア・ステート・ビルを見ながら、演奏へ行きます。そのたびに、ここはニューヨークなんだな、って身が引き締まる思いがします。
平木かよ / Kayo Hiraki
ニューヨーク在住 2017年より、世界屈指の米国グラミー賞の投票権を持つ。同じく米国スタインウェイ・ピアノ公認アーティスト。現在、グリニッジ・ビレッジのジャズの老舗「Arturo’s」のハウス・ピアニストとして、週に5日、自己のトリオで演奏活動を続けて26年目。ニューヨーカーに、スイングの楽しさを届けている。ベースの巨匠、ロン・カーターとのトリオで、ブルーノート・NYへも出演。JALの国際線機内誌でも、海外で活躍する日本人として大きく取り上げられた。また、舞台「ヴィラ・グランデ青山」では山田優がジャズシンガーに扮するシーンでの、ミスティーのピアノ伴奏。カナダ・トロント・リールハート国際映画祭でブロンズメダルを受賞した映画「Birth Day」への挿入曲提供と共に、ピアニスト役で出演。フランス・パリ日本文化会館での館長招聘コンサートや、台湾にて、最大規模を誇る、台中ジャズフェスティバルへの出場など、世界を股にかけるスイング感あふれる彼女のピアノとボーカルには、定評がある。定期的に、くにたち音楽大学ジャズ専修で講義を持つ。