元首相秘書官の発言が大きな議論を呼んでいると、報道されました。
同性婚や性的少数者について、「見るのも嫌だ、隣に住んでいたらイヤだ」という発言ですが、海外では日本人の高官がそういうことを発言するのが話題になっています。
大きな議論を呼んでいると報道される割には、実質は何も議論されていない。そこが問題です。知らないうちに、忘れ去られてしまうかもしれない。ある時、新しい法律として施行されるかも。
考えてみると、あなたは話題になっている議論を誰かとしますか。ほとんどの人は「ない」と答えると思います。しかし、外国人、特にアメリカ人はそういう議論が大好きです。
難しい話はさておき、英会話という点から、このトピックを考えてみると、意外なことが分かってきます。
日本人が、英語が話せないのではなく、実は、議論がうまくできないのではないかということ。
<好き嫌いで議論する日本人の癖>
本質を議論せず、好き嫌いで話をしてしまう傾向が、日本人にはあります。日本人同士が話をするなら、それで済みますが、そこに一人でも外国人が入ってくると、話はややこしくなります。
外国人は、問題点は何かを議論しようとするからです。
特に、英語で議論をする場合、問題点を理解し、自分の立場を明確にしないと議論はできません。
Swatchは、若いころ、外国人のグループで議論をした時に、なぜか自分が無口になり、議論に加われない経験が多くありました。
それは、問題点がわかっていないからであり、自分の立場を明確にできないからです。
自分の意見がないのです。好きか嫌いかで発言できるのは、一話題で一度だけです。
自分の立場はこうで、こういう意見や問題意識をもっている。だから、反対(賛成)であるという
論理展開ができないのです。
それでは、どうしたら議論に積極的に参加できるかを考えてみましょう。
まず、話すトピックスを正しく理解しなければなりません。が、情報がない!
そうです。それが日本社会の一番の問題です。何が問題なのかが分からないのです。
それは、新聞やテレビ報道が、問題を「好き嫌い」にすり替えてしまうからです。
<まず、LGBTQを理解しましょう!>
議論するためには、ことの本質を理解することです。
問題になったのは、「同性婚」ではありません。「性差別」が問題点です。ポイントは、男女の性器によって区別された「性(セックス)」ではなく、自分自身が感じる「性(ジェンダー)」があることを理解することです。
その自分自身であるという「アイデンティティ」を認めることから始まっています。性に関するアイデンティティを「ジェンダー・アイデンティティ」と呼んでいます。
そのアイデンティティを表現するのに、LGBTQという用語を使います。
LGBTQとは、
L: Lesbian レズビアン 他の女性に惹かれる女性
G: Gay ゲイ 肉体的、恋愛的、感情的に同性に惹かれ続ける人
B: Bisexual バイセクシュアル 複数のジェンダーに魅力を感じる人
T: Transgender トランスジェンダー 出生時の性別とは異なるアイデンティティを持つ人
Q :Queer クイアー 性的指向が異性愛に限らないこという考えを持つ人
さらに
Cisgender シスジェンダー 出生時の性別に従って生きる人
Non-Binary ノンバイナリー 性自認が男性でも女性でもない人、または混在している人
このような定義があるのです。
これが分かっていないと議論はできません。まずは、自分がどの立場にあるかを知ることです。
好き嫌い、良い悪いという表現を使えば、他人をたった2つの立場で見ることになります。
それは、「見るのもいや」と同じレベルです。
LGBTQを理解することで、議論する立ち位置がきまります。
<No One left behind! 誰一人取り残さない!>
さらに、議論に必要なことは、理念です。共通の理念を持って、そこを出発点にすること。
現在、一番重要な理念が国連の理念です。
2015年、193の国連加盟国全てが
「誰一人取り残さない-No one will be left behind」
を理念に掲げ、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)のための2030アジェンダを採択したのです。
あなたが良く知っている、SDGsは、言い換えれば、国連が作った一つの世界目標です。17の目標の達成によって、持続可能な社会の実現を目指すという計画です。
コンビニの袋が有料になったという程度のことではないのです。
その根本となるものが、”No One(will be) Left Behind!”という国連の理念です。「誰一人として取り残さない」が、世界的な共通の理念となっています。
SDGsは、全世界がやろうと決めた目標なのです。そして、2030年以降も、それが
継続され、持続可能な世界の実現に向けて努力は続きます。
その中の5番目の目標(ゴール)が、「ジェンダー平等を実現しよう!」です。
すでに世界は、ジェンダー・フリーの世界を描いているのです。
世界は、国連を中心にして動き出しています。日本政府は、外圧に弱いといわれてきました。
また、世界から取り残されている、世界の動きに対応できないと批判されてきました。
しかし、それが劇的に変わりました。2015年9月27日、安倍首相(当時)は、国連持続可能な国連サミットで演説を行い、SDGsの取り組みを世界でリードしていくと述べたのです。
それにより、日本政府はSGDsと全面的に取り組むことになり、国連の政策を日本政府の政策にとりいれることで、世界をリードするという方法を手に入れたのです。画期的なことです。
あなたが議論をするときに、この国連の理念を基本にしておけば、世界中で議論することができるのです。
<外国人との議論でもう沈黙しない!>
LGBTQの議論をするときは、2つの理念、「誰一人とりのこさない」と「ジェンダー平等の実現」を基本に考えていきます。
それによって、議論の骨格が出来上がり、ぶれることはなくなります。
好き嫌いで議論するのではなく、論理的に自分の意見を発言できるようになります。
考えてみれば、そういった準備や論理の骨格を持たずに話し始めても議論にはなりません。
自分の考えを、その場で整理したり、英語にするのは大変なことです。
考えている間に、議論はどんどん進んでいきます。
そういった認識さえなく、ただ沈黙していた自分を思い出します。
理念を知り、自分の意見を考えておけば、議論は充実し、さらに他人の立場を理解できます。
今では、話題になったことをどうやって議論しようかと考えるのが楽しみになっています。
準備をすれば、議論は本当に楽しいものになります。
執筆家・英語教育・生涯教育実践者
大学から防衛庁・自衛隊に入隊。10年間のサバイバル訓練から人間の生について考え、平和的な生き方を模索し離職を決断する。時を同じくして米国国費留学候補者に選考され、留学を決意。米国陸軍大学機関留学後、平和を構築するのは、戦いを挑むことではなく、平和を希求することから始まると考えなおす。多くの人との交流から、「学習することによって人は成長し、新たなことにチャレンジする機会を与えられること」を実感する。
「人生に失敗はなく、すべてのことには意味があり導かれていく」を信念として、執筆活動を継続している。防衛省関連紙の英会話連載は、1994年1月から掲載を開始し、タモリのトリビアの泉に取り上げられ話題となる。月刊誌には英会話及び米軍情報を掲載し、今年で35年になる。学びによる成長を信念として、生涯学習を実践し、在隊中に放送大学大学院入学し、「防衛省・自衛隊の援護支援態勢についてー米・英・独・仏・韓国陸軍との比較―」で修士号を取得、優秀論文として認められ、それが縁で定年退官後、大規模大学本部キャリアセンターに再就職する。
修士論文で提案した教育の多様化と個人の尊重との考えから、選抜された学生に対してのキャリア教育、アカデミック・アドバイジングを通じて、キャリアセンターに新機軸の支援態勢を作り上げ、国家公務員総合職・地方上級職、公立学校教員合格率を引き上げ高く評価される。特に学生の個性を尊重した親身のアドバイスには、学部からの要求が高く、就職セミナーの講師、英語指導力を活かした公務員志望者TOEIC セミナーなどの講師を務めるなど、大学職員の域にとどまらぬ行動力と企画力で学生支援と教員と職員の協働に新たな方向性をしめした。
生涯教育の実践者として、2020年3月まで東京大学大学院教育研究科大学経営・政策コース博士課程後期に通学し、最年長学生として就学した。博士論文「米軍大学における高等教育制度について」(仮題)を鋭意執筆中である。
ワインをこよなく愛し、コレクターでもある。無農薬・有機栽培・天日干し玄米を中心に、アワ、ヒエ、キビ、黒米、ハト麦、そばを配合した玄米食を中心にした健康管理により、痛風及び高脂質血症を克服し、さらに米軍式のフィットネストレーニング(米陸軍のフィットネストレーナの有資格者)で筋力と体形を維持している。趣味はクラッシック音楽及びバレエ鑑賞。
Facebook
https://www.facebook.com/takeru.suwa.7/
※友達申請いただく際「World Lifeで見ました」と一言コメント頂けますでしょうか。よろしくお願いします。