三十年以上教員だった私、ちょっと変わった目標を持ってました。
それは「ノー英語嫌い」つまり英語嫌いを作らないこと。
目標としては、普通生徒に英語を好きになって欲しいとかになりそう。ちょっと変かも。
何故「ノー英語嫌い」かというと、子供の頃に嫌いになると、一生嫌いになりそう。それって子供の将来の可能性を奪うことでは?子供の未来を奪うなんて、英語好きを、たとえ何人作れても取り返しつかないことなのでは?…こんな風に思ってたんです。
(どうやったら英語嫌いが生まれにくいか)と考えてた私が出会ったのが
「Seven kinds of smart」
というお役立ちの洋書。
「賢さ」には七種類あるって知ってましたか? 私はこれ読むまで全然。
この洋書には、人の知性には七種類あり、モノを習う時に、その知性のタイプにあったモノややり方だとピンとくると書いてありました。
さて人の知性は以下の7種類。
1.logic smart(理屈で習う人) (smartはここは賢いと言う意味で「スタイル」とは無関係)
2.word smart(言語で習う人)
3.number smart(数字で習う人)
4.music smart(音楽で習う人)
5.picture smart(絵・イメージで習う人)
6.body smart (体の感覚で習う人)
7.people smart(仲間と一緒に習う人)
国語や英語はタイプ2、数学はタイプ1.3. 美術はタイプ5、体育はタイプ6、という具合に、教科毎にぴったりの「賢さ」はあるかも。
でも私がヒントにしたのは、少し違います。ちょっと専門的になりますが、後であなたのお役に立ちそうなので、つまりこういうこと。
タイプ2 word smart(言語で習う人)の、言葉に敏感な生徒は、大体英語好きになる、問題は2以外のタイプの生徒。これらの生徒にウケが良い授業をすれば、英語嫌いは生みにくい…ということです。
そう思って、いろいろなことをしました。例えば
タイプ4 music smart(音楽で習う人)用に、月毎に英語の最新の歌を歌いました。意味が分からなくても、毎回ちょっとづつ歌うんです。こんなことと思うかもしれませんが、music smartにとってはあるとないとでは大違い。
タイプ6 body smart(体の感覚で習う人)用に、よく体を動かさせました。例えば中1で人称代名詞やbe動詞を覚える時、人称体操を作りやらせました。歌詞は“I am, you are, he is, she is, it is, we are you are they areだけの短い体操。また、わざと席を離れる口実を与え(ノートを私に見せにくるとか)、座っている時間が長くなりすぎないようにしました。
タイプ7 people smart(仲間と一緒に習う人)用に、グループ活動もよく取り入れました。動詞のトランプを自作し、ゲームをさせました。また5,6人の班をクラス内に作り、互いに教えさせました。といっても真似事に近いんですが、試験前など、模擬問題をやらせ、リーダー役中心にグループで答え合わせさせました。
以上、タイプ2以外の子供が、英語の授業のシンドさを減らし英語嫌いになりにくいようにと、実施したことの一部です。どれも今振り返れば地味で、あなたは期待外れですか。
でも色々なタイプの子が、毎日(の授業)を楽しく感じ、英語嫌いにならずにすんだ…これに決定的だったと、今でも信じています。
そしてあなたの役に立ちそうのはここ。あなたが(タイプ2以外、つまり言葉に特別に敏感ではなかったとして)また英語の授業がもし好きでなかったとして、それは色々なタイプの子への配慮不足の授業だったからかも、ということ。
さあ「~の授業は面白くなかった。~の科目は大嫌いだった」と一言で済ましてしまわず、知性には何種類もあるという記事の内容を参考に少し考えましょう。
嫌いになった教科の理由が分かり、そしてそれがもしあなたの習い方と教え方のミスマッチなら、まだ遅くない。これから好きになるチャンスがまだまだあるかも。
人生で好きなものは沢山ある方がいいですよね。
あなたの好きなものが一つでも増えますように。英語が(もっと)好きになるならなお良いですよね。
追記:「Seven Kinds of Smart」:Identifying and Developing Your Multiple Intelligences
https://amzn.to/3VwQyYs
<英語版>
私立学校に英語教師として勤務中、40代半ばに差し掛かったころ、荒れたクラスを立て直す策として、生徒に公言して英検1級に挑戦することを思い立つ。同様の挑戦を繰り返し、退職までに英検一級(検定連合会長賞)、TOEIC満点、国連英検SA級、フランス語一級、スペイン語一級(文科大臣賞)、ドイツ語一級、放送大学大学院修士号などの成果を得る。
アメリカで生徒への対応法を学ぶ為に研修(地銀の助成金)。最新の心理学に触れた。4都県での全発表、勤務校での教員への研修を英語で行う。現在も特別選抜クラスの授業を全て英語で行っている。「どうやって単語を覚えればいいですか?」という良くある質問に答える為、印欧祖語からの派生に基づく「生徒には見せたくない語源英単語集」を執筆中。完成間近。常日頃洋書の読破で様々な思考にふれているが、そうして得た発想の一つを生かして書いた論文がコロナ対策論文として最近入賞。賞品の牛肉に舌鼓をうっている。元英検面接委員