最近,Swatchが教えている英会話のクラスで ”I’m humble”と言う表現を取り上げました。メンバーの一人が持っていた英会話のテキストには、「恐縮です」と訳されていました。
実際の場面を想定して、英会話の練習をしてみると、全員が「困ったような、遠慮するような」表情で会話をしていました。
「それって、まったく意味が違うよ!」と指摘すると、全員がさらに困った顔をしたのです!
<I’m humble は、恐縮するじゃない>
“I’m humble”は、「私は、恐縮しています」と訳されますが、実際の意味するところは全く違うのです。
あなたが、「恐縮です」と話すとき、なにがしかの後ろめたさや居心地の悪さを感じていませんか。
それは「恐縮」という日本語の意味を完全に知っているからです。
身近な辞書で「恐縮する」を調べてみました。
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恐縮とは、恐怖で身がすくむこと。現代ではもっぱら、ありがたさなどを感じて身がすくむような思いがすることを意味して用いる(実用日本語表現辞典)
恐怖に萎縮すること。または、相手に対して失礼や、身を過ぎたこと感じ、身が縮まる思いをすること。(Wiktionary日本語版)
おそれて身がすくむこと。 相手に迷惑をかけたり、相手の厚意を受けたりして申し訳なく思うこと。おそれいること。デジタル大辞泉(日本語カテゴリ)
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3つの辞書に共通するのは、恐怖で身がすくむことです。さらに、分析すると相手に過大評価され、困惑し、恥ずかしくなり身がすくんでしまうことです。
あなたは、「恐縮」の意味を十分理解しているので、そういった消極的な、一歩下がった考えを体現しようとするのでしょう。Swatchの英会話のメンバーも、「恐縮です」を日本語に忠実に表現した訳です。
結果、“I’m humble”は、日本語の誤訳である「恐れおののくこと」として表現されてしまったのです。日本人が良くやってしまう間違の、日本語から考えた英語の理解です。
「恐縮」は、この感情を表現するのですから、どうしてもへりくだった態度や自信のない態度、困惑した表情になりがちです。
英語表現の“I’m humble”には、そういったマイナスな、消極的な意味は込められていません。
実は、「へりくだるも自慢のうち」や「卑下も自慢の内」のことわざの持つ心理感覚に近いのです。
Humbleは、自分自身で使う場合は、「へりくだるも自慢のうち」という感覚で使ってください。
“I’m humble”は、「私は、謙虚です」が正しい考え方です。
私は、決しておごり高ぶり、人を上から目線で見るのではなく、相手の立場を尊重し、その人の意見を傾聴しますといった謙遜です。
“I’m humble”で相手に伝えたいことは、自分がいつも謙虚でありたいと思っていること、謙虚であることになにがしかの努力をしている人間だと主張しているのです。
褒められた時に、「恐縮です。申し訳ありません。私はそんな人間ではありません」といった日本人的な考えは捨てて、相手の言っていることを受け止めて、自覚することが大切です。
<humbleのマイナスな意味も押さえておく>
言葉は生き物です。時代時代で変化して今の言葉が存在しています。タイムマシンで平安時代の社会に行けたとしても、NHKの大河ドラマのような現代語で会話は理解できません。
英語を学習する上で、過去によく使われた意味を知っておくのは有効ですし、英語学習者として知りたい好奇心もあります。
Humbleには、「謙遜した、謙虚な、控えめな、地位や身分などが低い、卑しい、質素な、粗末な、~を卑下する、謙虚にする」などの意味があります。
語源は、インド・ヨーロッパ祖語のdhghem-(大地・地球) で「地上、低いところ」という意から、現在の「humble(低い、卑しい、謙遜した)の意味につながっています。
あなたが良く目にする表現は、以下のように、謙遜する心を中心にしたもので、表現もポジティブで、日常会話で素直に使える表現です。
1、She is humble.
(彼女は謙遜している)
2、Humble smile
(つつましい微笑み)
3、There are my humble feelings
(ささやかな気持ち)
一方、経済的な発展とともに、中流階級が増え、世の中の格差が少しづつ縮まっていった時代の変化の中で、差別的な意味のhumble(育ちの悪い、卑しい)は使われなくなって来ました。
4、A man of humble
(生まれの卑しいひと)
5、My humble self
(取るに足らない小生)
昭和の時代には,まだまだそういう表現が使われたと思いますが,現在はないでしょう。そういった意味を、頭になかに整理をしておくと、時代、時代の考え方も整理ができて良いと思います。
<Humble Bragって何!?>
最近SNSが若い世代を中心に流行しています。その中の記事の大部分は「自己自慢」の記事です。
自慢があまりに独りよがりだと、うざい自慢になり、フォロワー数が伸びません。
そんな時に使われるテクニックがあります。それが、“Humble Brag”(謙虚に見せかけた自己自慢)です。Humble「控えめな、謙虚な」という意味です。 Bragは、「偉そうに自慢する、鼻にかける」です。
SNSの世界は知らない人とのコミュニケーションが多くあります。その中で、お互いの自慢話を、直接自慢するのではなく、「謙虚な言葉で隠れた自慢」をすることを、Humble Bragと言います。
“Pride couched in humble word”「謙虚の言葉で隠れた自慢をする」とも言います。
SNSでのやり取りで、このHumble Bragが多く見られます。ある人は故意に、ある人は知らず知らずのうちに、自分の自慢をしています。表現は、あくまでも謙虚に!がコツです。
大雑把に言えば、SNSの世界は、「自分の自慢を公表することです。」その自慢を「うざい!」と思わせずに、読者やサポーターの好感を得るには、Humble Bragでそれとはなく自慢するテクが必要です。
“I don’t know why I look young!”
(なぜ若く見られるかわからないわ)
“I forget my age because I’m a forgetful person”
(物忘れしやすいから、自分の年齢も忘れているからかしら)
日々アップされていく記事やトピックを追っていくと、色々なテクニックにお目にかかれます。記事の内容だけではなく、Humble Bragのテクを吸収するのも面白いです。
<I’m humbleを使ってみよう>
“I’m humble”は、「恐縮です」ではなく、「私は、謙虚です」と考えることが現代風な解釈であることをお話ししました。
言葉は時代とともに変わり、意味そのものが変化していくこともあります。現代では、humble bragという言葉が生まれ、SNSの世界で自己自慢が一つの自己表現の手段となっています。
そういった中で、“I’m humble”を実際にどのように使うかについて、紹介します。
あなたが表彰されたり、賞をもらったりする機会があれば、ステージに立つときにピッタリの決まり文句があります。
“I’m humbled and honored to be here”
(この場にいることが、大変光栄です)
「大変光栄です」の中に、自分自身が謙虚に考えてみると、正直に嬉しく、光栄に思っているという意味が含まれています。自分の光栄な気持ちをしっかりと伝えることができる表現です。
“I’m humbled to get this prize”
(この賞をいただくことができ、本当に光栄に思います)
“I’m humbled”は、恐縮するという意味で使うのではなく、感謝の気持ちが前に出てきます。そして、光栄であるという気持ちを伝えることができます。
I’m humbleを付け加えるだけで、配慮深く、他人に感謝する気持ちを付け加えることができる、
マジックフレーズです。どんどん使ってみましょう。
執筆家・英語教育・生涯教育実践者
大学から防衛庁・自衛隊に入隊。10年間のサバイバル訓練から人間の生について考え、平和的な生き方を模索し離職を決断する。時を同じくして米国国費留学候補者に選考され、留学を決意。米国陸軍大学機関留学後、平和を構築するのは、戦いを挑むことではなく、平和を希求することから始まると考えなおす。多くの人との交流から、「学習することによって人は成長し、新たなことにチャレンジする機会を与えられること」を実感する。
「人生に失敗はなく、すべてのことには意味があり導かれていく」を信念として、執筆活動を継続している。防衛省関連紙の英会話連載は、1994年1月から掲載を開始し、タモリのトリビアの泉に取り上げられ話題となる。月刊誌には英会話及び米軍情報を掲載し、今年で35年になる。学びによる成長を信念として、生涯学習を実践し、在隊中に放送大学大学院入学し、「防衛省・自衛隊の援護支援態勢についてー米・英・独・仏・韓国陸軍との比較―」で修士号を取得、優秀論文として認められ、それが縁で定年退官後、大規模大学本部キャリアセンターに再就職する。
修士論文で提案した教育の多様化と個人の尊重との考えから、選抜された学生に対してのキャリア教育、アカデミック・アドバイジングを通じて、キャリアセンターに新機軸の支援態勢を作り上げ、国家公務員総合職・地方上級職、公立学校教員合格率を引き上げ高く評価される。特に学生の個性を尊重した親身のアドバイスには、学部からの要求が高く、就職セミナーの講師、英語指導力を活かした公務員志望者TOEIC セミナーなどの講師を務めるなど、大学職員の域にとどまらぬ行動力と企画力で学生支援と教員と職員の協働に新たな方向性をしめした。
生涯教育の実践者として、2020年3月まで東京大学大学院教育研究科大学経営・政策コース博士課程後期に通学し、最年長学生として就学した。博士論文「米軍大学における高等教育制度について」(仮題)を鋭意執筆中である。
ワインをこよなく愛し、コレクターでもある。無農薬・有機栽培・天日干し玄米を中心に、アワ、ヒエ、キビ、黒米、ハト麦、そばを配合した玄米食を中心にした健康管理により、痛風及び高脂質血症を克服し、さらに米軍式のフィットネストレーニング(米陸軍のフィットネストレーナの有資格者)で筋力と体形を維持している。趣味はクラッシック音楽及びバレエ鑑賞。
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