近所の図書館に出かけた時のこと。私、急に図書館員に返事や相づちをする気が失せたんです。
なぜなら、貸出手続きをする図書館員の喋りが、あまりに一方的な、AIの音声みたいでびっくり、で何だか失望したから。
「はい、合計4点…。返却は11月10日までに…DVDはカウンターに…有難うございました。」
表情ゼロ。肌寒くなりました。たまたまだったと思いたいですが。
なぜこの話をしたかというと、その数日前に体験した、「妙なやり取りに見えて、実は心がぽかぽかするような会話」を体験して、会話やコミュニケーションで大事なことが分かったからなんです。
それは障害者の会が運営する音楽祭に、合唱隊として出演した時のこと。ゴスペルを3曲歌いました。
「妙なやり取りに見えて、実は心がぽかぽかするような会話」の相手は会場係の女性。彼女が合唱隊に2度近づいて来て、話しかけてくれました。
1回目は「頑張って!」
2回目は「私は今日が誕生日。新しいキャラの名は何でしょう?」
と2回目の言葉は、脈絡ゼロで唐突に。
誕生日は良いとしても、「キャラ」とは何かのTV、それとも漫画の事だろうか?….と事情を知らない人なら戸惑ったかもしれません。
でも私達合唱隊は予め知らされていたんです。
スタッフには、嬉しくて興奮し、意味不明なことを言う方もいるかも、と。なので、そういうセリフを聞いても慌てた者はゼロ。
皆私のように(すごく嬉しいんだろうな。出演してくれて有難う、有難う、という意味だな)と心の中で解釈していたに違いありません。
音楽祭の会場係の女性が私達に伝えたものは、あの図書館員より、遥かに多く豊かな内容だったと思いました。
これって、英語を学ぶ時にも参考になりそうです。
英語を勉強すると「英語を話せるようになりたい、ペラペラになりたい」と思うと思います。
でも「どういう気持ちを伝えたいのか」の方も、いや多分その方がもっと、重要だということです。
例えばですが、あなたが地元の通訳ボランティアをしたくて英語力を磨いているとします。
地元のデータについて詳しくなるのは大切。でも旅行者へのウェルカムの気持ちがあなたから生き生き伝わることの方がもっと重要なのでは。
図書館のシーンに戻ると、事務的な情報は、言葉の上では十分伝わったかもしれません。でも人間同士の生きた自然な感情のやりとりが欠けていて、殺伐で冷たいコミュニケーション。
それに対して、音楽祭のシーンでは、セリフは妙でも、「音楽祭に来てくれて有難う、嬉しかった」という生き生きした感情がちゃんと伝わった、心がほっこりするコミュニケーション。
英会話でも、英語の一つの言い回しを学ぶ際、どんな気持ちを込めるか…を試したり想像すると良いのでは。
一つ例として、
How far is it to the station?
(駅までどの位ですか?)
という文章。この一文だけでも、状況次第で感情とか気持ちは色々ですよね。
(まだつかないのか…)と「うんざり」
(もう近いだろう)と「ホッ」
(あの有名な駅に…)と「ワクワク」
(昔来た場所が変わり過ぎ)で驚き、郷愁や悲哀。
(素敵な未知のヒトに話しかける口実)高揚感、どきどき、後ろめたさ
こういう感情や気持ちを込める方が楽しく、早く上達する気がしませんか?
そもそも「情報」って「(感)情を報せる」と読めますよね。
日本語でも英語でも、情報は感情と一緒に伝えると良いコミュニケーションになりそうです。
<今週のJiro’s Quiz>
What is this?:
You give and take information or ideas. You might say, connection, contact, conversation, talk, or just telling.
(1. chorus 2. concert 3.communication)
(ヒント:質問文のyouは一般的な人のことです。「あなた」のことを言っているのではありません)
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正解 3.communication
See you next time,
Jiro
私立学校に英語教師として勤務中、40代半ばに差し掛かったころ、荒れたクラスを立て直す策として、生徒に公言して英検1級に挑戦することを思い立つ。同様の挑戦を繰り返し、退職までに英検一級(検定連合会長賞)、TOEIC満点、国連英検SA級、フランス語一級、スペイン語一級(文科大臣賞)、ドイツ語一級、放送大学大学院修士号などの成果を得る。
アメリカで生徒への対応法を学ぶ為に研修(地銀の助成金)。最新の心理学に触れた。4都県での全発表、勤務校での教員への研修を英語で行う。現在も特別選抜クラスの授業を全て英語で行っている。「どうやって単語を覚えればいいですか?」という良くある質問に答える為、印欧祖語からの派生に基づく「生徒には見せたくない語源英単語集」を執筆中。完成間近。常日頃洋書の読破で様々な思考にふれているが、そうして得た発想の一つを生かして書いた論文がコロナ対策論文として最近入賞。賞品の牛肉に舌鼓をうっている。元英検面接委員