最近,ハグ中毒やハグ依存症が。老若男女問わず,増えているそうです。生活になんとなく充実感がない。人恋しい。笑顔が少なくなる。ミィーテイングが終わると,出口の横に立ってしまう。誰かがこちらに向かってくるとハグの準備をする。
笑い話のようですが,これSwatchの体験談です。ハグ中毒です。アメリカでの生活で日常的に当たり前にしてきたハグですが,留学から帰国後,自分がハグ中毒症であることに気がつきました。
2000年のことですから,大昔の話ですよね。月日の流れは,ハグ中毒を解消し,私をハグの達人(プロフェッショナルなハグ)にしてくれました。ハグにはいろいろな効用があります。
それでは,私の米軍におけるハグの珍しい体験をお話します。
ハグで癒される国,アメリカ
ハグの効用については,ウエブ上でも,精神科医,心理診療士などの専門家が論文を沢山発表しています。しかし,軍事における体験的ハグ論については,読んだことはないと思います。
今回は,米軍留学を通じて,シャイなおじさんが,ハグのとりこになっていく過程と,英語の文化に覚醒していく心の成長をお話します。帰国後の「ハグのない日本」での暮らを対比しながら,ハグの効用をお伝えできればと思います。
ハグをすると,麻薬物質の数倍の効果があるエンドルフィンという脳内麻薬が出ると,脳科学の専門家は指摘しています。鎮痛剤で言えば,数倍効く沈痛剤であれば劇的に効くということでしょう。
日本とアメリカの文化の違いは大きいですね。社会対個人という点では,日本の社会は,受容するというか「包み込んでくれる」文化があります。街全体が非常に気持ち良い,安心する雰囲気があります。
これは割合多くの日本人が実感していると思います。海外旅行から帰国して,安心した,気が楽になったという経験はないでしょうか。日本は,生活するだけで癒される国なのです。
一方,アメリカでは社会全体にそういった雰囲気がないので,少しぎすぎすしています。ですから,個人で,特定の地域,場所,組織に所属していなければ,,,,フツーに孤独です。
アメリカ人は,所属する社会を大事にします。ハグは,相手を仲間だと認識する重要な行為です。ハグには,仲間意識という強い感情があります。ハグによる仲間意識によって,癒されるのです。それを意識すればアメリカでの孤独な生活は快適になるかもしれません。
ハグの男女差を知ろう!
多くの日本人のハグ初体験は,男女ともに,外国人女性のハグではないでしょうか。ハグの存在を知らずに,ある時,外国人女性から,優しく「ふわ~ぁっ」と抱きしめられる。
ビジネスの別れ際の握手ではなく,優しいハグで感謝,仲間意識,ねぎらいの気持ちを表してくれたあの瞬間!エンドルフィン出しまくりの20代のSwatchを思い出します。
ハグは,男女差とやり方の差があります。例えば,女性は正面から頬が擦れ合うような感じで,優しくゆっくりとハグします。相手の背中に手をまわし,軽く胸が触れるような感じで上半身を接触させます。
50cmぐらいの距離から,ゆっくりと相手に近づいていき,ハグします。親密度によって,お互いを抱きかかえる時間が長くなり,抱く動作も「大きく,強く」なります。横で見ていても,優しく,癒される感じですね。
男性は,正面切って抱き合うというよりは,まず,胸のあたりでお互いの手をがっちり握るようなポーズをとることが多いですね。そして,お互いの左の肩と右の肩が触れ合う感じで,軽く接触し,握った反対の手で相手の背中を抱きかかえます。ガシッという感じです。
ラグビーのスクラムを組むような感じで,相手に接触する体の部分や角度が決まっているような感じです。ハグの動作も早く,接触時間も女性に比べ短くなります。
アメリカ軍人のハグ
Swatchの体験では,日本にいるときには,米陸軍軍人の奥様たちとのハグは多かったと思います。いつも優しく癒されるハグをしてくれました。しかし,アメリカの軍人とはあまりハグした記憶はありません。
米陸軍のアカデミーに留学して,その感覚が一変します。クラスメートとの自己紹介はハグで始まりました。もちろん全員軍人です。男女の比率は,7対3ぐらいだったと思います。挨拶として,普通にハグをする生活が始まりました。
ハグの仕方にも民間人とは差があります。米軍人は,男女ともに行動がきびきびしており,動作のテンポも早く,常に周りの目を意識して,自律的に動いています。
女性軍人がハグする場合は,そのきびきびとした動作が,ハグの際にはゆったりとしたテンポにかわり,癒すというよりは包み込むような人間性があります。リーダーとしての自覚でしょうか。
一方,男性軍人の場合は,行動のテンポはほとんど変わりません。ハグの合図は,相手をにらみつけることです。相手のニックネームを呼び,まさしく肩でスクラムを組むようにガシッとあたり,
手のひらで相手の背中を引き寄せ,さらに「バシッ!」と叩きます。
その時,心の声が聞こえます。「頑張ろうぜ!」という激励です。明日も,仲間としてやっていこうという意識です!そういった意識を確認するために,がっしりと肩を組み,気合を入れて軽く背中を叩くのです。
このハグもしびれますね。外国人としてのコンプレックスや精神的な引け目が一切なくなります。本当の仲間意識です。それが明日への活力となってきます。
プロフェッショナルなハグ
陸軍大学のアカデミーは,米国全土から選抜された軍人が約400人学んでいます。卒業すれば,300人以上の部下の面倒を見るリーダーとなります。それぞれの部隊で重要な役割をします。
たとえば,アフガニスタンに派遣されたとき,隣の部隊のリーダーとして,同じ時期・場所で任務に就くことも少なくありません。一緒に働くという仲間のハグのモチベーションになっています。
常に横のコミュニケーション,つまり同期との仲間意識と情報収集手段としての関係を強力に維持して,自分の部隊の任務に,日々リーダーとして邁進していくのです。
ハグによって,信頼に値する人間関係をここで構築していくのです。そのためにプロフェッショナルなハグを,男女とも日々,本当にマメに実施しているのです。これはアカデミーの文化となっています。
日本で,軍人とのハグの記憶がなかったのは,軍人から仲間とみられていなかったからかもしれません。あるいは,米軍人は,職務上目上の者に対しハグを求めることはしないので,気取った言い方を許してもらえば,軍人として一目置かれていたのかもしれません。
いずれにせよハグする両者に「仲間であるという意識」がなければ,軍人同士のハグは存在しないのです。「プロフェッショナルなハグ」とは,そういうことなのです。
外国の地で,自分を認めてもらいたいという感覚が芽生えれば,それが足掛かりとなって前に進めます。異文化を受け入れることにより,相手から(文化から)も受け入れられるのです。ハグにも深い文化がありますね。
執筆家・英語教育・生涯教育実践者
大学から防衛庁・自衛隊に入隊。10年間のサバイバル訓練から人間の生について考え、平和的な生き方を模索し離職を決断する。時を同じくして米国国費留学候補者に選考され、留学を決意。米国陸軍大学機関留学後、平和を構築するのは、戦いを挑むことではなく、平和を希求することから始まると考えなおす。多くの人との交流から、「学習することによって人は成長し、新たなことにチャレンジする機会を与えられること」を実感する。
「人生に失敗はなく、すべてのことには意味があり導かれていく」を信念として、執筆活動を継続している。防衛省関連紙の英会話連載は、1994年1月から掲載を開始し、タモリのトリビアの泉に取り上げられ話題となる。月刊誌には英会話及び米軍情報を掲載し、今年で35年になる。学びによる成長を信念として、生涯学習を実践し、在隊中に放送大学大学院入学し、「防衛省・自衛隊の援護支援態勢についてー米・英・独・仏・韓国陸軍との比較―」で修士号を取得、優秀論文として認められ、それが縁で定年退官後、大規模大学本部キャリアセンターに再就職する。
修士論文で提案した教育の多様化と個人の尊重との考えから、選抜された学生に対してのキャリア教育、アカデミック・アドバイジングを通じて、キャリアセンターに新機軸の支援態勢を作り上げ、国家公務員総合職・地方上級職、公立学校教員合格率を引き上げ高く評価される。特に学生の個性を尊重した親身のアドバイスには、学部からの要求が高く、就職セミナーの講師、英語指導力を活かした公務員志望者TOEIC セミナーなどの講師を務めるなど、大学職員の域にとどまらぬ行動力と企画力で学生支援と教員と職員の協働に新たな方向性をしめした。
生涯教育の実践者として、2020年3月まで東京大学大学院教育研究科大学経営・政策コース博士課程後期に通学し、最年長学生として就学した。博士論文「米軍大学における高等教育制度について」(仮題)を鋭意執筆中である。
ワインをこよなく愛し、コレクターでもある。無農薬・有機栽培・天日干し玄米を中心に、アワ、ヒエ、キビ、黒米、ハト麦、そばを配合した玄米食を中心にした健康管理により、痛風及び高脂質血症を克服し、さらに米軍式のフィットネストレーニング(米陸軍のフィットネストレーナの有資格者)で筋力と体形を維持している。趣味はクラッシック音楽及びバレエ鑑賞。
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