こんにちは
NYのKayoです。
ニューヨークに暮らしていると、ときどき「日本ではあり得ない!」という出来事に出会います。先日も、ブルックリンのニュースを見ていて、思わず、あちゃーっ、と叫びそうになりました。
いらない銃を交換できる?
「Gun buy back program / ガン・バイ・バック・プログラム開催」
つまり、いらなくなった銃を持っていくと、警察や検事局が、その場でギフトカードや景品と交換してくれる、という催しです。
しかも驚くべきことに、名前も身分証も必要なし。まるで不要になった家電をリサイクルに出すような、そんな気軽さです。
日本の感覚からすると、「一般家庭に“いらない銃”って何?」というところから始まりますよね。
でもこちらでは、長年家に眠っていた古い銃、亡くなった家族が残していったもの、あるいは、持ってるけどとりあえず処分したい、と感じる人も少なくないようで、こうしたイベントには、毎回列ができるほどだそう。
プログラム実施状況
昨年12月、ニューヨークのブルックリンでは、セント・ポールズ・コミュニティ・バプティスト教会を会場に、朝10時から午後4時まで開催されました。
条件によっては、最大500ドルのギフトカードに加え、AirPods まで付くという太っ腹ぶり。
まるでホリデー・セールのようですが、もちろん目的は「銃による暴力を減らすための、安全な処分」。
警察の方いわく、銃が動くかどうかは問わない、とのこと。壊れていようが超古かろうが、銃は銃。安全に回収されることに意味があるそうです。
地域によって、また拳銃の種類によって、買取価格に違いがあるのも、なんだかアメリカらしいおおらかさ。
たとえばニューヨーク近郊のロックランド郡では、拳銃は250ドル、アサルトライフルは500ドル、ライフルやショットガンは75ドル、自作銃は25ドル。まるでフリーマーケットの値札のようですが、ここにも確かな意図があって、高額なものほど危険性が高いとされ、より強い回収の動機付けがされているのです。
物騒と平和が隣り合う光景
このガン・バイバック・プログラム、ブルックリンでは年に3回ほど行われます。会場の外では銃を抱えた市民が静かに並び、教会のボランティアが微笑みながら、紙コップのホット・チョコレートなどを配っていたりして、「物騒」と「平和」が、なんともいえない妙なバランスで隣り合っている光景が見られます。
ニューヨークの冬の空気に、ほんのり不思議な温度が混ざる瞬間です。
アメリカのフロンティア(開拓者)としての歴史
私は日本育ちなので、いまだに「名前も聞かずに銃を回収するなんて…」と目を丸くしてしまいます。でも、異国の地で暮らすうちにだんだんと、文化や社会の仕組みは、その土地が抱えてきた歴史と、暮らしの積み重ねでできているのだ、と感じることができるようになってきました。
なんと驚くなかれ、この日に買い取られた銃は、全部で157丁。
日本だと、何かあったときには交番があちこちにありますが、この広大な土地アメリカでは、ポリス・オフィスまで行くのに車で40分、なんて言うこともざら。
なので、自分の身は自分で守る。その歴史が、このような銃社会を作り上げてきたようです。
銃が身近にある社会だからこそ生まれた、静かで実用的で、どこかユニークな取り組み。ニューヨークにいると、今日もまたそんな、日本ではありえない、とっても興味深い日常に出会います。
それではまた次回♫
Kayo
平木かよ / Kayo Hiraki
ニューヨーク在住 2017年より、世界屈指の米国グラミー賞の投票権を持つ。同じく米国スタインウェイ・ピアノ公認アーティスト。現在、グリニッジ・ビレッジのジャズの老舗「Arturo’s」のハウス・ピアニストとして、週に5日、自己のトリオで演奏活動を続けて26年目。ニューヨーカーに、スイングの楽しさを届けている。ベースの巨匠、ロン・カーターとのトリオで、ブルーノート・NYへも出演。JALの国際線機内誌でも、海外で活躍する日本人として大きく取り上げられた。また、舞台「ヴィラ・グランデ青山」では山田優がジャズシンガーに扮するシーンでの、ミスティーのピアノ伴奏。カナダ・トロント・リールハート国際映画祭でブロンズメダルを受賞した映画「Birth Day」への挿入曲提供と共に、ピアニスト役で出演。フランス・パリ日本文化会館での館長招聘コンサートや、台湾にて、最大規模を誇る、台中ジャズフェスティバルへの出場など、世界を股にかけるスイング感あふれる彼女のピアノとボーカルには、定評がある。定期的に、くにたち音楽大学ジャズ専修で講義を持つ。

