こちらに長く住んでいますと、度々、生活の中での日本人とアメリカ人の色々な考え方や習慣、しつけの違いを感じることに出会します。
そんな違いを感じるエピソードをいくつかお届けします。
さっさとしなさい!
先日、奥さんが日本人、旦那さんがアメリカ人のカップルが、子育てについて、いろいろ話してくれました。そのお話の中で、私たち日本人には当たり前の「さっさとしなさい!」が、理解できないと言うのです。
これ、一瞬「え?」と思いました。
「その子供によって、やりたい速さがあるのだから、急がせる必要は無い。」
と旦那さんは言うのです。確かに、その通りですね。では日本ではなぜよく子どもを急がせるのか。
私の考えとしては、多分、1人がもたつくと、他の人に迷惑をかける、それは良くないので、さっさとできる子供に育てたい、と社会を思いやるあまり、子供に、気づかずにプレッシャーをかけてしまっているのではないかと。
例えば、子供がトイレに行ってくると言えば、日本のお母さんは、
「さっさとしなさい!」
ですが、アメリカ人のお母さんは、
「Take your time!」 (ごゆっくり)
と微笑みます。なので、アメリカにはゆったりとした雰囲気があるのでしょうか。
エアコンつけっぱなし!
以前、日本の両親のところに、ニューヨークのミュージシャンの知り合い泊めてもらったことがあります。当時わたしはニューヨークにいたので、ミュージシャンの彼ひとりで。その時の両親の困惑ぶりに驚きました。
泊まったすぐ翌朝、両親から電話があり、
「彼を、普段使っていなかった祖母の部屋だったところにお泊めしたが、朝になっても雨戸は開けない!、襖も閉めきり!、布団もあげない!、掛け布団の上を歩きまわった形跡がある!、そしてクーラーと部屋の電気をつけっぱなしで出かけた!!!!」
と言うのです。
それを聞いて、私は、苦笑するしかありませんでした。朝起きたら、まずは窓や雨戸を開ける、起きたら布団を畳んで押し入れに入れる、そして掛け布団の上は歩かない、といった「普通の日本人の習慣」を、「普通の外国人」は知らないので、しないというか、できないのです。
私もうっかり、そういうことを説明するのを忘れていたので、両親に謝りました(笑)
ここニューヨークでは、電気代が家賃に含まれている、というビルも多くあります。その為、暑い時期に昼間出かける時は、夜帰って来たときに涼しいようにと、クーラーをつけっぱなしで出かけるのが普通、と思っている人も多いんです。
日本にいれば当たり前と思われるような、出かける時はクーラーは切るかタイマーにする。また、後にお伝えする、食事は家族揃って、決まった時間に一斉に食べる、出されたものは残さずに、そういうことが当たり前ではない国の人たちが、ここにはたくさんいます。来てすぐの頃は、いちいち驚いていましたが、最近は慣れました。(笑)
食事は個人が好きなタイミングで
私の周りのアメリカ人は、食事は自分がお腹がすいた時が一番おいしい時、と思ってい人が多いようです。なので食事を取るタイミングについて、スペシャルなクリスマスや記念日等の特別なディナーは、家族が全員揃うまでは我慢しますが、普段は家で各個人が勝手に好きなタイミングで食べることが多いようです。
ここニューヨークでは、みんな忙しすぎるからかも。
あー、お母さんが食事を作るわけでは無いから、各個人が好きなものを適当に買ってきて済ませることになるかなあ。
シリアルに牛乳をかける。パンにちょっとハムや野菜を挟んでサンドイッチ。フランクフルトソーセージを温めてパンに挟めばホットドッグ。そして冷凍のピザ、そんな感じの食材が、アメリカの各家庭の冷蔵庫にはいっぱい詰まっています。
レンジでチンするだけで、ワンプレート出来上がりなんていう冷凍食品もたくさんあります。
まあマクドナルドやKFC、ダンキンドーナツなどもあちこちにあるしね。
日本の母はすごい!
日本人のお母さんたちは、本当に凄いです。毎日、食事の支度、洗濯や掃除などの家事全部をやってから、自分の仕事に出かけるのですもの。
私の知る限り、アメリカの女性はまず料理をしません。もともと女性が料理をしなければ、という感覚はなく、得意な方がやる、という感じで、旦那さんが毎回料理をされているケースもあります。
そして、料理に限らず、家事も平等に家族みんなで分けっこです。食器洗い機はもちろん普通に家にありますしね。
そして両親が共働きだと、そんなにハイクラスな家庭でなくても、掃除のヘルパーさんを雇ったり、ベビーシッターを頼んだりします。
近所の中学生とかに、お小遣いを渡して、ベビーシッターをお願いしたりもするのですが、掃除ヘルパーさんにしても、ベビーシッターにしても、自分の家の鍵を、赤の他人に預けるとか、大事な赤ちゃんや子供を、近所の中学生とかに任せて、両親がドレスアップしてゆっくりディナーに出かけるというのも、以前はびっくりでした。
まるでハリウッド映画の世界みたいだと思いました。
また、お裁縫なんかについても、ソーイングの専門家が街のあらゆるところにいるので、ちょっとした裾上げなども、そこに頼みます。ニューヨークでは、普通のクリーニング屋さんに、ソーイングの専門家の為のコーナーが併設されています。
そんな感じなので、アメリカ人の女性は、日本のように、江戸時代の昔から続いているような、まず女性は早起きしてご飯を炊いて、縫い物を習って、毎朝掃除をして、などというしつけが無いので、そういったことは、誰かに頼まなければならないんです。
私たち日本人は今でも、自分たちが食べるものを美味しく調理したり、部屋を清潔に保ち、衣服のちょっとした修繕など当たり前にできますが、そうでないと、どんなに不便か…私は、本当に日本人でよかったです。
平木かよ / Kayo Hiraki
ニューヨーク在住 2017年より、世界屈指の米国グラミー賞の投票権を持つ。同じく米国スタインウェイ・ピアノ公認アーティスト。現在、グリニッジ・ビレッジのジャズの老舗「Arturo’s」のハウス・ピアニストとして、週に5日、自己のトリオで演奏活動を続けて26年目。ニューヨーカーに、スイングの楽しさを届けている。ベースの巨匠、ロン・カーターとのトリオで、ブルーノート・NYへも出演。JALの国際線機内誌でも、海外で活躍する日本人として大きく取り上げられた。また、舞台「ヴィラ・グランデ青山」では山田優がジャズシンガーに扮するシーンでの、ミスティーのピアノ伴奏。カナダ・トロント・リールハート国際映画祭でブロンズメダルを受賞した映画「Birth Day」への挿入曲提供と共に、ピアニスト役で出演。フランス・パリ日本文化会館での館長招聘コンサートや、台湾にて、最大規模を誇る、台中ジャズフェスティバルへの出場など、世界を股にかけるスイング感あふれる彼女のピアノとボーカルには、定評がある。定期的に、くにたち音楽大学ジャズ専修で講義を持つ。