先日、Digital版新聞でMLBの大谷に関する記事を読み、思わず「おっ」と声が出ました。
「…Shohei Ohtani and Yusei Kikuchi…are bonding in their first Major League All-Star experience together.」
(大谷と菊池は、初めてのAll-Starを、同時に経験しながら絆を強めていた。)
But one of them is …visibly exhausted.」
(しかしうち一人は…見るからに疲れ果てている)
オールスターゲームの前夜、2分間の球数無制限でホームラン数を競う、ホームランダービーに関する記事でした。大谷は、これに日本人として初参加。菊池は大谷と同じ高校で、今年選り抜き大リーガー達が集う、オールスターに大谷と共に初選出。
ホームラン競争に疲れ切った、「one of them」はもちろん大谷。TV中継でも「疲れた!」という彼の口の動きがはっきり読めました。
さて、海外で活躍する彼らに、私も非常に興味はありますが、記事への「おっ」は別の理由。それは、探していた英語の材料にうまく出会えたから。2文字の同じ単語DNAが、二つの別の単語の中に出ていたのです。
単語DNAは、現在の英語に隠れている数千年前の大祖先の言語の名残。この単語DNAのおかげで単語の語源がとても分かり易くなり、意外な意味や繋がりを見つけながら楽しく英語を学ぶのに役立ちます。
さあいったいどの二つの単語でしょう。
答えはexperience(エクスピアリアンス/経験)と、exhausted(エグゾースティッド/疲れ切った)。
こんな短い英文にex-(エクス,エグズ / 外へ)のDNAが2つ見つかりました。
このex-(エクス,エグズ / 外へ)を含んだ単語って、英文の中で見かけることが多いです。では今回の記事で見つけた2つの単語から見てみましょう^^
「経験」と「疲れ切る」の「外へ」の感じは
experience(経験)は「一つ一つくぐり抜けて後に「外に」経験が出てくる」ような感じ。つまり、いろいろあって一歩一歩実感して体験して最後に「ああこんな経験したな…」と言えるようなものが「外に」ぽこっと出てきてたみたいな。まさに「経験」ですね。
(少しマニアックになりますが-per-は、「前へ(進む)」と言う意味の単語DNA。だからより正確な説明は「前に進んで体験した結果、経験が生まれ出る」わけです。-ienceはラテン語の語尾の名残。)
exhaustedは「エネルギーが全部外に吸い出されて中に残っていない」というような感じ。別の表現だと(be) tired out/ worn outです。「エネルギー」が、外に出てしまった感じをoutでも表せるんですね。
(-haustedの部分は「汲む」と言う意味のラテン語の過去分詞から来ています。「外に汲み出され尽くす」という風に「疲れ切る」感じを表わしているんですね)
EXだけでも「なんとかなるほど」?!
極端に言うと、詳しい説明も付け足しで要はex-の部分だけ、と思ってもらっても結構です。単語を覚えるには「イメージだ!」とよく言われますが、このexがあるとイメージしやすくなるのは確かです。「外に」をkeywordにして結構正確なイメージが頭に浮かべられますよ。
例えば
export エクスポート/輸出する・・・「外に売り出す」(正確には外に「運ぶ」)
exampleエグザンプル/例 ・・・「(例が)外に出る」(〃 外に「取り」出す)
expensive エクスペンシブ/高価な・・・「金が出る」(〃 秤で重りが外に動き値が決まる)
こんな風な推測法は、日本人が漢字の意味を、何となく分かるのと似ています。魚偏があるだけで魚の種類だなとすぐ分かりますよね。
EX偏があったら「何かが外へ」ということですね。
Excuse meで目鱗!
道をあけてもらいたい時”Excuse me.”
ぶつかりそうになって”Excuse me.”
ぶつかってもExcuse me….Excuse me….って、
よく使う決まり文句だって覚えているかもしれませんね。でも、意味をきちんと考えたことはないのでは?
これ、実は命令文なのですが、何を「して!」と言っているのか見てみましょう^^。
ex-は「外へ」で、-cuse(キューズ) の部分は、元はcause(コーズ/原因・理由)だそうです。そうすると「咎め責める理由」位の意味ですね。だから文全体として
「私を咎め責める理由・状態から外に出せ!」=「私を許して、(軽く) 失礼!」となります。
但し、間違っても「ええと…なんだっけなあああア…キューズミー」何て言うと大変です!これは ”Accuse me.”と聞えてしまいます。Accuseのac-は 「~に向かって」という単語DNAな為、
「私を責め咎めることに向かえ」=「私を訴えて」などの意味になってしまいます!!
Excuse me. 「責め咎める理由・状態から外に出せ」➾ 「私を許して、失礼!」
Accuse me. 「 〃 理由・状態に向かえ」 ➾ 「私を訴えて」
チョークを「外に」!
昔予備校で教えていた頃、このex-の説明用に、教壇でよくしたパフォーマンスがあります。
それは「ex-は『外へ』だ!」と大声でチョークを一本外に投げる(!)というもの。生徒たちから大拍手…は滅多に来ませんでしたが「分かり易い!」と言う声はよく聞きました。
今日は、あなたに印象を強く持ってもらうために、そのチョーク投げをします。
「ex-は『外へ』だ!」(私の部屋の窓から外へ飛び出す一本のチョーク…)
See you!
以下出典
(The Asahi Shimbun>Sports>article MLB/Ohtani, Kikuchi enjoy Home Run Derby, high school reunion (大谷、菊池がHRダ―ビーで高校同窓会)
https://www.asahi.com/ajw/articles/14394056 20221/07/18 15:58)
私立学校に英語教師として勤務中、40代半ばに差し掛かったころ、荒れたクラスを立て直す策として、生徒に公言して英検1級に挑戦することを思い立つ。同様の挑戦を繰り返し、退職までに英検一級(検定連合会長賞)、TOEIC満点、国連英検SA級、フランス語一級、スペイン語一級(文科大臣賞)、ドイツ語一級、放送大学大学院修士号などの成果を得る。
アメリカで生徒への対応法を学ぶ為に研修(地銀の助成金)。最新の心理学に触れた。4都県での全発表、勤務校での教員への研修を英語で行う。現在も特別選抜クラスの授業を全て英語で行っている。「どうやって単語を覚えればいいですか?」という良くある質問に答える為、印欧祖語からの派生に基づく「生徒には見せたくない語源英単語集」を執筆中。完成間近。常日頃洋書の読破で様々な思考にふれているが、そうして得た発想の一つを生かして書いた論文がコロナ対策論文として最近入賞。賞品の牛肉に舌鼓をうっている。元英検面接委員