【World Life】とは?
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あなたの英語の師匠は誰ですか

World Lifeな生活
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私が,英会話に興味を持った1970年代は、アメリカ文化そのものが日本人のあこがれ!
英語を話すことも「あこがれ」ではありましたが、英語は日常的には使いませんでした。

ハンバーガー,ホットドッグ、コーラ,ハリウッド映画,そしてアメリカのホームドラマ。
アメリカの文化や商品がどんどん紹介され,それを手に入れるのが庶民のステータス。

現代では、英語が話せなくては,グローバル化の社会を生き抜けない!とか、英語が公用語になると予想する者もいます。そして、日常生活は、カタカナ英語があふれています。

信じられないかもしれませんが、50年前は、カタカナ英語はキザ!だと揶揄されました。日本全体に、英語のアレルギーがあったのです。
「コーラ」はOKでも,「コカ・コーラ」と言うとアメリカかぶれと批判される始末。 

そんな英語の偏見に満ちた社会でも、当時のテレビは、アメリカの番組が多く放送され大人気でした。英語アレルギーの日本人でも,アメリカのテレビ番組に熱狂していたのです。

その訳は,,,

伝説の英会話講師の発音に衝撃!

実は、すべて日本語吹き替えの番組だったのです。こなれた日本語で、ジョークはそれなりに日本語の文化に合うように翻訳・意訳されていました。

極めつけのテクは、笑う場面には「笑い声」がアフレコされていたのです。日本人の多くは、ピンとこないジョークでも、「わはは」という誘いの笑い声で笑っていました。

当時、日常生活でネイティヴの英語を耳にすることは、まったくありません。街角で外国人を見ると,しげしげと見つめていました。英語教材も出版社に予約して1か月後に郵送されてくるという時代。

英語に興味はあっても,人前でカタカナ英語を使うと、アメリカかぶれとか正しい日本語を話せと注意されるような時代。そんな時に私が出会ったのが、NHKラジオ英語会話です。

“Hello, Welcome to our English Conversation Program”「ハロ~。私たちの英語会話番組にようこそ」と軽快に話しかけるオープニングの英語が素晴らしく美しかった。

担当講師は、東後勝昭氏。先生は,当時早稲田大学の教授。ロンドン大学で博士号を取得。1972年からNHKラジオ「英語会話」の講師をなんと13年間も担当!

英語の発音とイントネーション指導の第一人者。美しいブリティシュ・イングリシュと明るく軽妙な語り口で、リスナーの絶大な人気を得た伝説の英語講師だったのです。

NHK英語会話は,土曜日は、コーヒー・ブレイクと称した英語トークの特別番組でした。東後先生,アシスタントの米国人女性と男性英国人の3人で会話がはじまります。

なぜ東後先生の英語が美しいと思ったのか?

それは東後先生の英語が、ゲストの外国人よりクリアーで、ソフトな低音の声が心地よく、品があり,さらにリズムが躍動しているように聞こえたからです。音楽を聴くような快感。

ネイティヴのように英語を話し、ゲストよりクリアーでよどみない英語。それまで英語に対して強い憧れを持っていましたが、映画以外、外国人との英語の会話に立ち会ったことのない私にとっては、夢のような時間でした。

衝撃を受けたフレーズとは?

土曜日は、時折、話題になっているゲストが出演し,個性的な英語を聞かせてくれる特番もありました。ラジオ番組だけで、英語の世界がひろがっていきます。

その日のゲストは、アポロが月に着陸したときの通訳者、西山千氏でした。月面の着陸は、「一人の人間にとっては小さな一歩だが,人類にとっては大きな躍進だ」の通訳で有名。

西山千さんとのインタビューで,東後先生が次のようなフレーズを口にしたとき、体中に電撃が走りました。

“Landing on the moon!”
「月面着陸」という意味です。

頭の中に、この英語のフレーズが「す~~~と」入ってきたのです。「ランディング・イン・ザ・ムーン」とつぶやいてみました。カタカナ英語の発音で、先生の発音とは別物。

このフレーズが番組の会話で数回繰り返され、私の耳に鮮明に残りました。番組終了後、カセットテープ(当時の録音機器)を何回も聞き直し発音をまねしますが、うまくいきません。

先生と同じテンポで発音できないのです。ラジオですから映像で先生の口元をチェックすることはできません。あくまでも想像しながら、色々と試みてみます。

50回ぐらい練習したところで、さすがにやる気がなくなり、ため息とともに、「あ~、やんなっちゃうな!」とつぶやいたとき、あることに「ハッ!」と気が付いたのです。

口を半開きにして、息を吐きながら「やんなっちゃうな」といったときに、唇はほとんど動かず、口の中で舌が上下に動いているのです。

それを応用して、landing on the moonを発音してみました。うまくいかない。舌が思い通りに動かないのです。このフレーズで舌が口蓋につくのは、“l,n,d,n,n,m,n”です。

約2秒の間に、舌を7回上下させるのです。特訓です。舌で作る7つの音を猛練習しました。

途中どうしてもひっかかる部分がありました。theの部分です。これは、舌を噛むのではなく、前歯の裏に舌をつけて「ダ!」と発音するとうまくいくことがわかりました。

馬鹿の一つ覚え

Landing on the moon このリズムと音が耳にこびりついて離れない。発音練習しても全然違う。そんな状況で、練習を続けました。「L,n,d,n,n, ダ!m,n」の形が見えてきました。

これを繰り返し舌に動作を覚えさせました。口を半開きにし、母音を加えて発音します。ランディングオンダムーン!形になってきます。結局、一日このフレーズを繰り返しました。

馬鹿の一つ覚えです。東後先生のこのフレーズの発音は、耳にす~とはいって、記憶されました。それまで聞いたことのないリズムと滑らかな発音が非常に新鮮だったからです。

あとは、耳に残った音を再現すれば良いのです。一日中練習をし、寝る直前にカセットテープで、シャドウイング(先生と同じタイミングで英文を発音すること)してみました。

数回すると、タイミングが合い始め先生の声とシンクロしていきます。ワクワクする時間です。テープを止め、一人でつぶやく、“landing on the moon!” 言えた!!!

技を一つ盗めば成功

落語でも芸能でも技は盗むものだといわれます。私もそう思います。自分で工夫することでさらに着実に身につきます。しかし、すべての技を盗むことはないと思います。

気に入った技術を一つ盗み、自分のものにすることで,オセロゲームでコーナーを押さえた時のように,一瞬でパタパタパタとその技が体全体にしみこんでくるのです。

“Landing on the moon!”をきっかけに、私の英語発音が変わり始めました。今までの発音を見直し、東後式に入れ替えていく。フレーズごとにその作業を続けるのです。

コツコツと日本人的な英語から、リズムのある、舌を使った英語の発音に矯正していきます。練習が楽しくなり、人前で英語を話したくなります。これもペラペラのコツです。

今振り返ると、このフレーズ“Landing on the moon!”が、私の英語の原点です。NHK ラジオ英語会話の東後先生の一言で英語ペラペラの道が開けたように思います。

東後先生の美しい、リズミカルな英語との出会い。なぜそんなに衝撃を受けたのかが理解できる先生の言葉があります。

「発音をよくするためには、この部分をこうやって直したらいいというだけではないように思います。本人の言葉に対する姿勢、取り組み方、日常生活の言葉に関係することが総合的に英語の発音の中に出ています。」(東後勝明:早稲田大学教授)

英語ペラペラの世界への近道。英語の師匠,是非とも見つけてください!

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