夏真っ盛り、11月の大統領選挙戦を控え8月にはいったニューヨークですが、いまだ観光に関するところはクローズ、室内のエンタメ系(ミュージカル、ジャズクラブ等)及びバーなどのアルコール類のみ出すお店はすべて営業停止、映画館やジムもしまったまま、レストランは先月と同じく路上に作った数席の簡易テーブルでのみのささやかな営業、という感じ。大通りでは、ガラッとお店が空いた空間に大きく「テナント募集」の張り紙が、どんどん目立ってきています。
今日は、最近興味深いと思ったアメリカの人気有料テレビからの番組をひとつ、ご紹介しますね。ディスカバリーチャンネルが経営する、HGTVチャンネルからのピックアップです。
Love it or list it, 「そのままここに住みますか?それとも新居を購入しますか?」
この番組は、男性のユニークな不動産業者と、女性のスタイリッシュなインテリアデザイナーの2人のホストによって進められます。
今の住居にトラブルを持っているカップルが出てきて、例えば子供がいてぐしゃぐしゃになっているリビングルームなどを見せて、子供の遊び場になる独立した部屋が欲しい、とかダイニングが狭すぎる、とかこの家をなんとかしたい、してほしいと言うような注文を出すんです。古かったり、壊れていたり、掃除や整理が行き届かなかったり、そんな家をまず見せてくれます。
それでまずデザイナーは、とりあえず、どことどこをどういうふうにしたらいいか改築のアドバイスと話し合いをし、彼らはそれを任せます。
その間に、不動産屋の彼が、このカップルに購入できそうな家を3軒見せて周ります。この3軒が結構ミソで、まず、予算を大幅に上回るんだけれど、ものすごい素敵な、インテリアもバッチリの新築の家を見せます。このカップルの目をまず肥やしてもらうんですね。そして次に、予算よりも安くクオリティ良くないちょっとがっかりするような家を、見せます。そしていよいよ次は、この2人の気に入るようなぴったりの家にアジャストしていくんです。
それですっかりその3軒目の家を気に入らせておいて、今度は見事にリノベーションした自宅へ戻ります。もともとご近所とのお付き合いがあったり、場所が気に入って購入した家ですから、問題点が解決されれば、どうしても敷地が狭いとかいうこと以外だったら、ネゴシエートのしようはあるわけです。
さてそこで、番組のクライマックス。この2人が、どちらを取るか。スタイリッシュなデザイナー(そのままここに住む)か、ユニークな不動産屋(新居購入)か。勝敗はいかに!
結構いろんなTV番組で勝者と敗者を作りたがるのは、アメリカではよくあること。自分の夢のためには、とにかく強い意志を持って相手を蹴散らしても進み続ける、というのがヨーロッパ人のもともとの考え方だそうですから、現代のアメリカは、こういう社会の風潮なんでしょうねぇ。
自分の夢のために、数々のオーディションやコンテストを受け続けていく、そんな人生の楽しみ方ができる、ニューヨークなんです。
平木かよ / Kayo Hiraki
ニューヨーク在住 2017年より、世界屈指の米国グラミー賞の投票権を持つ。同じく米国スタインウェイ・ピアノ公認アーティスト。現在、グリニッジ・ビレッジのジャズの老舗「Arturo’s」のハウス・ピアニストとして、週に5日、自己のトリオで演奏活動を続けて26年目。ニューヨーカーに、スイングの楽しさを届けている。ベースの巨匠、ロン・カーターとのトリオで、ブルーノート・NYへも出演。JALの国際線機内誌でも、海外で活躍する日本人として大きく取り上げられた。また、舞台「ヴィラ・グランデ青山」では山田優がジャズシンガーに扮するシーンでの、ミスティーのピアノ伴奏。カナダ・トロント・リールハート国際映画祭でブロンズメダルを受賞した映画「Birth Day」への挿入曲提供と共に、ピアニスト役で出演。フランス・パリ日本文化会館での館長招聘コンサートや、台湾にて、最大規模を誇る、台中ジャズフェスティバルへの出場など、世界を股にかけるスイング感あふれる彼女のピアノとボーカルには、定評がある。定期的に、くにたち音楽大学ジャズ専修で講義を持つ。