アメリカ留学中,「授業でこんな内容のプレゼンをする」という課題がありました。
それは,
「自分で何か商品を考え,それを消費者の心に響くようなプレゼンをする」
というもの。
何を思ったか,私は
「コンディショナーとシャンプーを一緒にして,時間もお水も節約できる」という,
日本では既に同じようなものがあったので,それを紹介したのです。
だって,本当に作るわけではないし,アメリカにはそのようなものはなかったんですもの。
そして付けた名前は「COMPOO(コンプ―)」。
「これはきっとウケるぞ!」と勇んでプレゼンをしたのですが,
先生は,
“Oh, no…”と右手で目を隠して,薄笑いを浮かべながら下を向いてしまいました。
それはなぜだったのでしょうか。
―シャンプーとコンディショナーって・・・―
以前,このような記事を紹介したのを覚えている方はいらっしゃいますでしょうか。
アメリカのバスルームはトイレとお風呂が一緒になっているものがほとんど。
その理由は,お風呂は身体の汚れを落とす所であり,トイレは排泄する所。
どちらも汚いものを落とす場所だから,という内容の記事。
そのような考え方が多いアメリカ。
シャンプーは髪の汚れを落とすもの。
コンディショナーは髪に栄養を与えるもの。
これらの使用目的は「汚れを落とす」と「栄養を与える」ものなので正反対。
少なくとも,その先生にはこの正反対の2つが一緒になっているって考えはナンセンスだったのかもしれません。
なので,
“Oh, no…”と言われてしまったのですかね(^_^;)。
でも今は, “Japanese hair treatment”(日本のヘアートリートメント)として,
5 in 1シャンプーなんてものもたまに売られているので,先生の考えも変わってるかも(笑)
―リンス,コンディショナー,トリートメントの違いって何?―
そもそも,リンス,コンディショナー,トリートメントって何がどう違うのでしょうか。
花王(https://www.kao.com/jp/qa/detail/17139/)によると,
リンスとコンディショナーは「ともに髪の表面をなめらかにして,痛みを防ぐもの」,
トリートメントは「髪の内部に成分を浸透させて髪の状態を整えるもの」とあります。
ふむふむ,リンスとコンディショナーは基本同じで,トリートメントは髪内部のケアをするものなのねφ(..)メモメモ
これは英語でもほとんど同じ。
でも!
ちょっと知っておきたいトリビア(古!)が1つあるのです!
―リンスってコンディショナーじゃない!?―
日本ではコンディショナー的なものを「リンス」っていいますよね。
リンスは, “rinse”なので英語です。
でもその意味は,「すすぐ」「すすぎ」。
では,なぜ日本で「リンス」というようになったのか,
ネットや英語情報などの記事には,「リンスは和製英語」と書かれているものがほとんど。
でも,実際には和製英語ではなかったのです。
「LOREAL Paris USA(ロレアル・パリス・USA)」のホームページには,
“A hair rinse is a treatment that provides your hair with a variety of benefits.”
(ヘアリンスとは、髪にさまざまな効果をもたらすトリートメントのことです。)
と書かれており,
米の研ぎ汁,アップルサイダービネガー(りんご酢)などを使ったリンス,
そして,髪の色を一時的(次のシャンプーまで)染めるカラーリンスなどの種類があるそう。
このようなヘアケア方法が昔からあり,いずれもすぐに「すすぐ」ことから,このような名前で呼ばれる様になったのかもしれません。
フォーラム等,ネットでアメリカの様々なサイトを調べてみると,
What is the difference between “hair rinse” and “conditioner”?
(ヘアリンスとコンディショナーの違いは何?)
という内容のトピックがたくさん見つかります。
いろいろな人がその質問に答えているのですが,
「コンディショナーと同じ」
「何の栄養もない髪をコーティングするもの」
「ヘアリンスって何?コンディショナーのことでしょ?」
と意見が様々。
そこでさらに掘り下げていくと…
実は,1970年代後半頃までアメリカでは “Clean Rinse”(クリーンリンス)という商品が売られていたそう。
(https://flashbak.com/wp-content/uploads/2014/12/GLYNNIS-OCONNOR-BRECK-CLEAN-RINSE-AD-1977-753×1024.jpg)
その説明には,
“Clean Rinse dissolves completely to rinse out faster.
Leaves your hair squeaky clean, soft and shiny too!”
(クリーン・リンスは完全に馴染むので,すすぎも速い。
髪がきしまず、やわらかく、つやつやになります。)
と書いてあります。
しかし,80年代に入る頃には “conditioner”(コンディショナー)が一般的となり,
“rinse”という言葉がヘアケアにメインとして使われることはなくなったのだとか。
その時から40年以上経った今。
ネイティブたちの中でも “Hair Rinse”がコンディショナーのことを指していた,
ということを知らない人がいても不思議ではありません。
でも実は, “Apple Cider Vinegar Hair Rinse”(アップルサイダービネガー・ヘアリンス)という名の商品は今でもアメリカでも売られています。
―”Rinse”は和製英語ではない?―
本当に多くの英語情報サイトなどには,
「リンスは和製英語」と説明されています。
確かに, “rinse”という英語は「すすぐ(動詞)」「すすぎ(名詞)」です。
「シャンプー後,髪がきしまないためにつけたものを「洗う」のではなく「すすぐ」ので,
そこから「リンス」と呼ばれるようになった」と考えるのも何も不思議ではありませんが,
実際には,アメリカでも “hair rinse”と呼ばれていたのですね。
英英辞書(Merriam-Webster )で “rinse”という単語を調べてみると,
a: to cleanse by clear water(澄んだ水できれいにすること)
b: to treat (hair) with a rinse(リンスで髪を扱うこと)
と掲載されています。
今は日本でも “hair conditioner”(ヘアコンディショナー)が一般的なので
英語で話すときも大丈夫かと思いますが,
もし,単語が思い浮かばずに「リンス」しか出てこなかった場合は,
必ず前に “hair”を付けて,“hair rinse”と言いましょうね。
そうでないと,やっぱりただの「すすぎ」になって,
意味が通じないかもしれません。
でも知らない人も多いので,やっぱり “hair conditioner”が安全です!
―言葉は生きている―
いやぁ,やっぱり言葉って生きてます。
むか〜しは使われていた言葉も,今では使われなくなったり,
使われていても,ほとんど知られていないため理解されなかったり。
そういうのを知ることも,やっぱり “Good”ですよね。
「チョベリグ!」です。
・・・
・・・
(それ,自然と使われなくなったって言うよりも,ただの「死語」じゃない?)
って思ったでしょ!?
正解ですm(_ _)m
余談ですが,今回, “rinse“を色々と調べていて見つけたのですが,
「歯磨き後,口をゆすがない」方がいいらしいです。
“Don’t rinse your mouth with water after brushing your teeth.”
(歯磨き後は,水で口をゆすがないで)
というのをたくさん見ました。
その方が虫歯予防などの効果が高いそうですよ。
口をゆすぐ(すすぐ)のも, “rinse”を使うんですね。
それではみなさま,
See you next Thursday!
英語教材開発・制作者
米国留学から帰国後、幼児・児童英語教師を経て、中学・高校英語、受験英語、時事英語等多岐にわたる指導を行い英語教師経験を積む。また、ホテル勤務での実践英語経験を積んだり、カナダにて現地の子どもたちの英語教育にも携わりながら、CertTEYL(世界での児童英語講師認定コース)の認定を受ける。さらに、青山学院大学でTutoringの研究員としても活動。英語講師養成のeラーニングコースの日本での立ち上げメンバーとなる。「現場での経験を教材に活かしたい!」と、現在は英語教材開発会社にて日々教材開発に勤しむ。高校入試用のリスニングトレーニング教材(塾・学校向け)は累計10万部以上のベストセラーとなる。英語教材開発の傍ら、全国の英語教師への研修なども行う。また、土堂小学校(広島県尾道市)での英語指導や、初の民間校長として一躍時の人となった藤原校長(当時:杉並区立和田中学校)が手掛けた英語コースの指導に2年間携わるなど、英語教育に関する多様な分野で活躍。大の犬好きから、ホリスティックケア・カウンセラーなどペット関連の様々な資格を取得し、ペットライターとしても活動中。