2022年3月、ニューヨークの地下鉄は、コロナ禍パンデミックの影響を受け、犯罪の巣窟としてまた名前を挙げ始めてしまいました。
でも、ニューヨークの地下鉄と言えば、タイムズスクエアや、マジソンスクエアガーデン、グランドセントラル駅など、各要所駅(乗り換え駅)の、連絡通路のちょっと広くなっているところで演奏している、ローカルミュージシャン(ニューヨークに根ざしたミュージシャン)たちが頭をよぎります。
残念ながら、今はパンデミックの影響で、演奏されていないようですが、パンデミック前は、350余りのミュージシャンのグループが、「ミュージック・アンダー・ニューヨーク(地下鉄パフォーマンス)」として、約30ほどの主要駅で、年間7500もの講演を繰り広げていました。
ジャズグループを始めとして、クラシックのストリングスカルテット(弦楽四重奏)や、ブルースバンド、ドゥワップ(日本ではシャネルズかな)、マーチングバンド等、様々な音楽がみられます。
シンガーも、オペラに始まり、ポップ、ロック、ゴスペル、フォークソングなどなど。
尚、チップをもらうストリートパフォーマンスは、「busking(バスキング)」と呼ばれ、今時の若いミュージシャンなどは、
I ‘m going to have a busking in Central Park tomorrow !
(明日セントラクパークでバスキングなんですよ!)
なんて言ったりします。
地下鉄のバスキングは許可が必要
ニューヨークの地下鉄駅構内での演奏は、ちゃんとした公式オーディションがあり、これに合格し、許可が降りていることを示す「ミュージック・アンダー・ニューヨーク」の垂れ幕を貼っての演奏が必須です。
無許可のミュージシャンたちも見られますが、それらは非合法となり、音が大きすぎるなどの理由で逮捕されたりすることもあるそうです。
このオーディションですが、オフィシャルサイトを見る限り、今年は開催されていないようなのですが、例年春に行われます。
※オーディションサイト http://web.mta.info/mta/aft/muny/auditions.html
きっとパンデミックが終われば、再開されることでしょう。
アプリケーション(申込用紙)はオンラインで、期日までに申し込み、書類選考で60ほどのバンドに絞り込まれ、そしてパブリックスペースで一般観覧の中、20人ほどの審査員のもとで、オーディションが行われます。
数年前になりますが、テレビのローカルニュースでその様子を見たことがあります。ダンスあり、サーカスみたいな衣装での演奏、マイケル・ジャクソンのフリ真似あり、動物の着ぐるみを着てジャズを演奏したり、1人バンド演奏とか。何かユニークな個性をオーディションで表現したいという思いが、とてもよく伝わっていました。
ニューヨークでプロとして普段から演奏している人たちですから、超絶技巧を持っているのは当たり前。普通のルックスでは、短時間のオーディションでは個性を表現するのはなかなか難しい、と言うことなのでしょう。
世界中の音楽が集まる
オーディションには、世界各地から、いろいろな民族楽器等の奏者も参加します。
ほんと色々な楽器があるのですが、その中から一部、どんな楽器があるのか、動画とともにお伝えしますね。
◯西アフリカの弦楽器「Kora(コラ)」
(21本の弦が貼ってあり、指で弾いて演奏する、ギターのような感じの弦楽器)
◯「panpipes(パンパイプ)」
(アンデス山脈の人々が演奏する「コンドルは飛んでいく」で有名になったサウンド、別名パンフルート)、
◯「Didgeridoo( ディジリドゥ)」
(オーストラリアの原住民アボリジニによって受け継がれてきた管楽器。循環呼吸法と言う特殊な呼吸法を使って、風のうねりのような音を出す)
◯中国の「Pipa(ピパ)& Dulcimer(ダルシマー)」
(日本の琵琶のような感じの形ですが平らで、胸に抱えて演奏する、4本の弦による弦楽器)やダルシマー(バチで叩いて音を出す弦楽器)
この他にも、スチール・ドラム、ジプシー・バイオリン、フラメンコ・ギター等、さながらニューヨークの地下鉄駅は、音楽で世界旅行が楽しめるかのようです♫
本当に、春はもうすぐ。昨日は雪だったニューヨークですが、春の訪れとともに今年こそは普通の日常が少しずつ戻ってきますように。昔のような、賑やかでエネルギッシュなニューヨークが、早く戻ってきますように。
地下鉄のバスキングが復活した際には、またその様子もお届けしますね。
ではまた来週
Kayo
平木かよ / Kayo Hiraki
ニューヨーク在住 2017年より、世界屈指の米国グラミー賞の投票権を持つ。同じく米国スタインウェイ・ピアノ公認アーティスト。現在、グリニッジ・ビレッジのジャズの老舗「Arturo’s」のハウス・ピアニストとして、週に5日、自己のトリオで演奏活動を続けて26年目。ニューヨーカーに、スイングの楽しさを届けている。ベースの巨匠、ロン・カーターとのトリオで、ブルーノート・NYへも出演。JALの国際線機内誌でも、海外で活躍する日本人として大きく取り上げられた。また、舞台「ヴィラ・グランデ青山」では山田優がジャズシンガーに扮するシーンでの、ミスティーのピアノ伴奏。カナダ・トロント・リールハート国際映画祭でブロンズメダルを受賞した映画「Birth Day」への挿入曲提供と共に、ピアニスト役で出演。フランス・パリ日本文化会館での館長招聘コンサートや、台湾にて、最大規模を誇る、台中ジャズフェスティバルへの出場など、世界を股にかけるスイング感あふれる彼女のピアノとボーカルには、定評がある。定期的に、くにたち音楽大学ジャズ専修で講義を持つ。