世界中で大人気の「Netflix(ネットフリックス)」、その中で最近ある日本作品が話題になっています。それは、この4月1日から始まった、日本の普通の子供たちが主人公の
「Old Enough(オールドイナフ)/はじめてのおつかい」
日本の大人が、子供たちをどういうふうに扱っているかという点で、色々と各国で意見をよんでいます。アメリカ、ニューヨークを代表する、知性的な新聞ニューヨークタイムズ紙にまで、いろいろな議論が載っていました。
「オールド・イナフ」というのは、英語での意味は「お年頃」っていう感じ。この「はじめてのおつかい」、日本では長年に渡って随分と有名なテレビ番組のようですね。
Old Enough / はじめてのおつかい
ご覧になったことがない、という方の為に簡単に説明しますと、
3歳とか4歳くらいの子供が、お母さんに頼まれて、なんと自分1人でお使いに行く!というもの。それが、なかなか一筋縄ではいかなくて、途中で思いもかけないハプニングが起こってしまうんです。
思ったよりも、お店が混んでいたり、いつもの、お母さんの知り合いの、売り場のお姉さんがいなかったり、せっかく言われた通りに買ったのに、帰り道で、買い物バッグの紐が取れて、中身が全部道路に溢れてしまったり・・・。
途中で、知り合いのおばちゃんに話しかけられて、おしゃべりに夢中になってしまったり、ついついかわいい猫に気をとられて、猫の行く方角について行ってしまったり・・・。
と、視聴者の私たちまで、ついドキドキハラハラ、ひやっとさせられてしまいます。
またその一方で、自宅では、お父さんが、我が子を心配で心配でたまりません。お母さんは、普段自分の子供としっかり接しているので、そのくらいの能力は既に自分の子どもにあることを知っています。でも、お父さんにとっては、ついこの間まで産声を上げていた我が子が、そんな「ひとりでおつかい」なんて大それたことができるのかどうか、心配で心配で家の中でウロウロウロウロ、動物園のくまさんのように、歩きまわっています。
そんな中、いろいろ道草を喰いながらも、様々なトラブルを、幼児たちがなんともうまく乗り越えていくところが、涙が出そうなほど、キュンと来ます〜。その辺が、アメリカでも、「ココロが癒される〜!」となり、この番組が世界中で大人気になりつつある所以なのかもしれません。
なのですが、
アメリカで、この番組を通してのcontroversy(コントラバーシー / 論争)が起きているんです。
はじめてのおつかいに大論争
前述したように、アメリカで、かの有名な新聞ニューヨークタイムズ紙にさえ、このNetflixの、「小さな島国、日本」からのリアリティ・ショーに、喧々囂々いろいろな意見が寄せられました。
なぜなら、アメリカでは原則として、
「子供は13歳になるまで、絶対に1人で外出や留守番をさせてはいけない」
という、厳しい法律があるからです。
ですから、どんなに近くても、学校や習い事、サッカーなどのスポーツ、公園、お友達の家に遊びに行く往復などなど、子どもの行動全てに、保護者による、監視の目が必要となります。
逆に考えれば、子どもは往復の雑多な交通機関の事など考えずに済むので、遊びや、塾や、習い事だけに集中できると言う利点もあるかもしれません。
また、「子どもだけでの留守番」も、法律違反となります。ママがひとりでちょっと近所へお買い物、と思っても、家に保護者無しで置いて行けないので、必ず子ども同伴となります。
もし自宅だとしても、子どもだけで行動しているのを、他の大人が見た場合、すぐに通報する義務があり、見て見ぬふりをすると、その大人も罰せられるのだそうです。
もちろんアメリカは、日本とは地形的にも、文化も歴史もまるで違います。アメリカはとにかく土地の面積が広いので、隣りの家まで車で3,40分、などという話も普通にあったり、多くの、言語や習慣の違う民族が、同じエリアに住んでいたり、未だに近所の人たちが銃を持っているような社会だったり、と多くの理由があります。
子供に手を出してはダメ
それと、アメリカでは、子どもに手を出すのも、絶対だめです。
アメリカ在住の日本人のお母さんが、駅などの公共の場で騒ぐ自分の子供を叱って、「静かにしなさい」と頭をポコッとやったら、その場でそれを見ていたアメリカ人に、警察を呼ばれてしまった(幼児虐待の疑い)という話も実際にあります。しつけのためでも、アメリカでは、絶対に手を出してはいけないのだと。
アメリカは甘やかせすぎ?
アメリカにおける、この日本のテレビ番組「Old Enough(オールドイナフ)」に好意的な人々の中には、これらのアメリカの法律に、疑問を抱く人々もいます。
「アメリカ人の子供たちは、甘やかされ放題で、いつまでたっても自立心が成長しないのだ」と言う感じです。なるほど、と思いました。確かに、私が見ていても、アメリカ人の親御さんたちは、どうしてここまで子供たちを甘やかすんだろう?と思うようなことが、何度もありました。
子供が欲しがれば欲しがるだけ、アイスクリームやケーキを与えたりする親も、たくさん見ました。
子供が親を呼ぶ際、パパを”ジョン”、などとファーストネームで呼んだり、大人になっても、人前で”My Mom(マイ・マム)” とか、”My Dad(マイ・ダド )”と、普通に赤ちゃん言葉?で呼んだりもします。
日本だと、ある程度の大人になれば「私の父」や「母」と言う、呼び方に変えるよう習いましたよね。
親子なのに、いつも親友のような接し方のアメリカ人。日本では、親に対して敬語を使うのが普通だと思ってましたが。でも最近の若い方たちはタメ口なのかなぁ・・・。
親子なのに、親友のように接する姿は、羨ましいような気もするけれど、日本で日本人の両親に厳しく育てられた自分は、なかなか相容れない部分もあります。まあそんな思いは、あって当然だと思います。でも、郷に入れば郷に従えで、いろんな状況を許容できる自分を作っていこうと思います。
世界は千差万別
世界中のいろんな話を聞くと、いろんなことを感じます。なるほど、と感心したり、えー、なんで? と思っていろいろ調べ始めることも。同じ人間なのに、千差万別と言う言葉がありますが、国によって、エリアによって、歴史によって、いろいろな状況下によって、複雑な行動形態を生むんだなーっ、て今更ながらに思います。
日本に住んでいる時は、日本人の常識が、世界にも当てはまるものだとばかり思い込んでいましたが。まさかまさか。世の中には、日本人の考え方を、えー、なんでそうなるの? と思う人たちもたくさんいるはず。
人間の幅を、大きくしていきたいものです。そしたら、小さいことで腹も立たなくなるし。ね。人にも優しくできる。寛容な人間に、なりたいです。
「はじめてのおつかい」からなんだか色々考えてしまいましましたが、この番組自体は、ハラハラドキドキ、涙ありで、単純に面白いので、まだの方は、一度ご覧になってはいかがでしょうか?
今回は、アメリカで話題の、日本の番組についてお届けしました☆
ではまた来週♫
Kayo
平木かよ / Kayo Hiraki
ニューヨーク在住 2017年より、世界屈指の米国グラミー賞の投票権を持つ。同じく米国スタインウェイ・ピアノ公認アーティスト。現在、グリニッジ・ビレッジのジャズの老舗「Arturo’s」のハウス・ピアニストとして、週に5日、自己のトリオで演奏活動を続けて26年目。ニューヨーカーに、スイングの楽しさを届けている。ベースの巨匠、ロン・カーターとのトリオで、ブルーノート・NYへも出演。JALの国際線機内誌でも、海外で活躍する日本人として大きく取り上げられた。また、舞台「ヴィラ・グランデ青山」では山田優がジャズシンガーに扮するシーンでの、ミスティーのピアノ伴奏。カナダ・トロント・リールハート国際映画祭でブロンズメダルを受賞した映画「Birth Day」への挿入曲提供と共に、ピアニスト役で出演。フランス・パリ日本文化会館での館長招聘コンサートや、台湾にて、最大規模を誇る、台中ジャズフェスティバルへの出場など、世界を股にかけるスイング感あふれる彼女のピアノとボーカルには、定評がある。定期的に、くにたち音楽大学ジャズ専修で講義を持つ。