あなたは,英語の発音が得意ですか?
英語の発音が上手くないと,英語でコミュニケーションがとれないと思いますか?
今の世の中,英語に関する教材や情報がたくさんありますよね。
その中には発音に関するものも多くあり,
「日本人の発音では通じない」
「発音さえクリアできれば大丈夫」
のように,謳っているものもあります。
もちろん,発音は大切ですし,良いに越したことはありません。
でも,私は基本的に「日本人英語」で良いと思っています。
思っていますが,「基本を押さえておけば」の話です。
だって,私たち,日本語を母語としているんですもの。
いくらネイティブのように発音しようにも,できないことってあります。
でもね,それでも「絶対に身につけておいた方が良い」という発音があるんです。
それは・・・
―英語はいろいろ,人生もいろいろー
私は,とある英語の学会に所属していたことがあります。
ノンネイティブの英語に関する学会なのですが,そこで使われていた言葉に
“Englishes”
という言葉があります。
もちろん,通常, “English”は複数形にはなりませんので完全に「造語」です。
これは,英語を公用語としている国はたくさんあるし,第二言語,第三言語として使われている国もある,また世界の共通語は英語であり,スペイン人が話す英語,日本人が話す英語,中国人が話す英語,というように,英語にはいろいろな英語がある,という意味で複数形になっているのです。
私はこの考え方に共感しており,基本的に
「必要以上に英語の発音や間違いを気にする必要はない」と考えています。
あくまでも「必要以上に」です。
冒頭で,「基本さえおさえておけば」と言いましたが,その基本とは,超簡単!
「カタカナ英語との違い」を区別すること,です。
例えば,「りんご」は英語で “apple”。
カタカナでは「アップル」ですよね。
これをそのまま「アップル」と言っても通じるのは難しい。
なので,「アップルはカタカナ英語だな。英語ではどういうのかな?」
を意識してネイティブの発音,イントネーションを聞き,
「アぽぅ」のようにマネれば良いのです。
一つひとつの発音を厳密に「aは,アとエの中間の音で… Lは舌を上につけて・・・」と
「全ての音を正確に発音しないと通じない」と考える必要はない,と私は思っています。
だって,もし本当に英語ネイティブのような音を出さないと通じないのであれば,
世界中で話されているノンネイティブの人たちの英語は通じない,ということになってしまいます。
私自身,ずっと慣れていたのはアメリカ英語。
中学の英語教科書の音声は基本的にアメリカ英語が中心なので,
現場で指導していた時も,多くはアメリカ英語。
「発音を細かくしっかりと練習する」ことも多々指導しておりました。
でも現在の教材制作の仕事では,世界各国の人と話す機会が多々あります。
オーストリア,台湾やシンガポール,香港など,それぞれの母語に影響された発音やイントネーションで話されるのです。
でも通じるのです。
だって,標準英語だってイギリス,カナダ,アメリカ,オーストラリア・・・といろいろあるんですもの。
英語は世界中で話されているんですもの。
同じ単語でも,いろいろと癖があったりするのは当然です。
日本人の英語も同じ。
だから,ある程度の基本を知り,意識するだけで全然いいと思うのです。
現役教師時代とは違い,私の英語人生もいろいろと変わりました(笑)
―発音が悪いとしても,通じますー
日本人が不得手とする発音の代表として,“L” と “R” があります。
“L”の発音は,日本語の「らりるれろ」に近いので問題ありません。
日本語にないのは, “R”の発音。
“light”(軽い,光) と “right”(正しい,右)
“rice” (米)と “lice”(シラミ)
を代表としてよく挙げられます。
『“I like curry and rice.”(私はカレーライスが好きです。)
と言ったつもりが,
“I like curry and lice”(私はカレーとシラミが好きです。)
と勘違いされてしまいます。』
と書かれている発音の教材などを目にします。
私から言わせると,
「それはねぇよ!」
です。
だって,その文章を使う状況としてはきっと「好きな食べ物」の話をしている時でしょう。
「カレーライス」なんて,世界中,多くの人が知っている食べ物を言って,
「ほほう,この人はカレーとシラミが好きなのか,変な人だな。」
なんて思うわけありません。
しかも, “curry”の単語にも “r”が入っているのに,そこはきちんと「カレー(カリー)」として聞き取ってもらえているのに, “rice”だけ聞き取ってもらえないなんてないナイナイ。
もちろん,「単語のみ」を発音する場合はちゃんと発音しなくては意味が通じません。
でも,通常,なんの脈略もなくいきなり「シラミ」って口にします?
例えば,英語のカルタ遊びをしていて“rice”と “lice”の両方のカードがあったとします。
そのような状況であれば,正確に区別する必要はあると思います。
でもそんな状況って,英会話教室くらいですよね。
発音の違いを知るための勉強くらいしかないような気がします。
英語ネイティブの人と日本人が「ご飯を食べに行こう!」っていう話になって,
ネイティブ:“What do you feel like eating?” (何食べたい気分?)
日本人:“Mmm…maybe curry and lice…?” (カレーライスかな?)
と言ったとして,相手が
「え,カレーとシラミを食べたいの?」
なんて言われたら,その人はただのイジワルな人です,きっと。
―でも,これは気をつけて!―
先にも述べたように,発音があまり上手くなくても大切なことは,
・「日本語のカタカナ英語」と「英語の違い」を知ること
・英語のイントネーション,リズムを真似すること
で,細かい発音を気にしなくても会話の中では十分に通じます。
でも,そんなふうに思っている私でも,
「これは本当に気をつけて!」と思う発音があるのです。
それは,/s/ と /sh/ の発音。
“sea” (海)
“she”(彼女は・が)
“sea” の方は,「スィー」。「す」に小さい「ぃ」が入ったような音。
“she” の方は,「シー」という感じ。
“she”は,日本語の,「し」を伸ばした音に似ているので問題ありませんが,
「スィー」という音は,日本語の五十音にはありません。
だから,これを意識して区別しないと
“She sees the sea.”(彼女は海を見ます。)という英文を呼んだ場合,
「シーシーズざシー」となってしまい,よほど日本人英語に慣れている人でなければ通じない可能性大大大です。
この発音の区別は “L” “R”以上に厄介だと私は思っております。
私が23歳で児童英語の世界に入った頃,毎日,英語指導の研修でした。
他の先生の授業を見学したり,実際に先輩先生たちを生徒役に見立てて模擬授業をしたり。
ある日,日本人の先輩先生の授業を見て「え?」と思ったことがありました。
小学生低学年のクラスを指導していたその先生。
とある,やんちゃな男の子を席に座らせようとしていました。
その時に,
「○○ちゃん,Sit down. SIT!」(座りなさい,座って!)
とその先生は言ったつもりなのでしょう。
でもその発音は,
「○○ちゃん,シットダウン。シット!」
英語で書けば, “shit”です。
お気づきの方もいらっしゃるでしょうが,
この意味は「ク○」(○にはソが入ります(^_^;))
物体そのもの(お食事中の方,ごめんなさい。)も指しますし,
よく悔しい時に言う,「ク○〜!!」にも使います。
「これはダメだろ!」と思ったワタクシ,他の先生にお話しました。
すると,
「あの先生はその発音が苦手でできないから仕方ないです。」ですって。
いや,それマジで練習しましょうよ。
それまで指導しないでよ。っと思ったものです。
昔だから通用したのでしょうかね(^_^;)
この,/s/ と /sh/ の発音は,文章内でも難しいことが多いので気をつけてくださいませ。
もちろん,他の発音も大切ですし,意味が変わるものはたくさんあります。
でも,大体はそのシチュエーションや会話の内容でわかるものですよ。
―苦手でも全然大丈夫―
今回のお話は,「発音を重要視しなくてもいい」ということではありません。
多くの英語学習サイトや教材が,
「“L” “R”など,発音を正しくしないと違う意味に取られてしまうのかも?」
と言っているのは,
日本語との違いを意識させるための「知識・情報」を提供してくれているのです。
だから,できる人はもちろん,きちんと発音するに越したことはないです。
毎回言っているのですが,
「違いを知る」ということは大切なこと。
“potato”を「ぽ・て・と」とカタカナで言っても通じません。
真ん中を強く言って,「ぽ・てぇい・とぉぅ」と言えば通じます。
このようにカタカナと英語の「違い」を知って,ネイティブの音を真似ることが大切なのです。
もし,発音が苦手で前に進めない人がいれば,
「カタカナ英語とは違うということを認識する」
「英語のイントネーション等を真似ること」を意識して発音すれば,
「通じるんだ」ということをご理解いただければと思った次第でございます。
その上で継続して練習すれば,必ず上達はしますからね。
まずは「日本人英語でも大丈夫よ〜」,というお話でした。
どなたかお一人でも安心してくださる方がいらっしゃったら嬉しいです(*^^*)
英語教材開発・制作者
米国留学から帰国後、幼児・児童英語教師を経て、中学・高校英語、受験英語、時事英語等多岐にわたる指導を行い英語教師経験を積む。また、ホテル勤務での実践英語経験を積んだり、カナダにて現地の子どもたちの英語教育にも携わりながら、CertTEYL(世界での児童英語講師認定コース)の認定を受ける。さらに、青山学院大学でTutoringの研究員としても活動。英語講師養成のeラーニングコースの日本での立ち上げメンバーとなる。「現場での経験を教材に活かしたい!」と、現在は英語教材開発会社にて日々教材開発に勤しむ。高校入試用のリスニングトレーニング教材(塾・学校向け)は累計10万部以上のベストセラーとなる。英語教材開発の傍ら、全国の英語教師への研修なども行う。また、土堂小学校(広島県尾道市)での英語指導や、初の民間校長として一躍時の人となった藤原校長(当時:杉並区立和田中学校)が手掛けた英語コースの指導に2年間携わるなど、英語教育に関する多様な分野で活躍。大の犬好きから、ホリスティックケア・カウンセラーなどペット関連の様々な資格を取得し、ペットライターとしても活動中。